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降霊  作者: 藤乃 夜舞
3/4

【カメリハも終わって】

やがて本番が始まった。


まだ健在の俺のバァちゃんは無事に降りてきて、そして無事に帰っていったようだ。

つまり、このイタコは降霊など出来やしなかったのだ。

口の端にいやらしい笑みを浮かべるスタッフも見えだした。

そして、少しの滞りもなくロケは順調に進んでいく。


俺は頭の中の台本通りに「もう一人の口寄せ」を依頼し、それは快諾された。

少し休憩を挟もうかといったスタッフの言葉に、イタコは「日に三十人を降ろした事がある」と豪語した。

一人や二人の口寄せは屁でもないとアピールしているようだ。

それでも三十分の休憩を挟むこととなりロケ班長が俺に囁く。

「外国の事件の方が面白いかもな。どうせ日本語しか喋れないだろ?あの婆さん」


三十分の休憩の間に件のリストから二十三分の一の確立で俺に選ばれた名誉ある犯罪者は『Jack The Ripper』だった。

『切り裂きジャック』のあだ名を持つ犯人がしでかした事件は洋の内外を問わず広く知れ渡っている。


十九世紀末のロンドンを震撼させた連続殺人鬼は五人の娼婦をメスのような鋭利な刃物で次々と殺害した。

そして割いた腹から取り出した子宮や膀胱などの臓器を戦利品の如く持ち帰っている。

ロンドン市警に投書された彼(彼女?)からの手紙には被害者の腎臓の一部が同封されていた。

最後に殺害された被害者にいたっては目鼻の位置もわからないぐらいにまでバラバラに解体されていた。

ロンドン市警のみならずスコットランドヤードも血眼になって犯人を追い、四人の容疑者が浮かび挙がったが結局は迷宮入りとなったという、

あの事件だ。


有名な事件なのだからイタコも知っているかもしれない。

オンエア後のイタコの生活を少し不憫に思い、贖罪の意味も込めてイタコにかけた俺なりの情けだった

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