【筋書きはこうだ】
最初は俺のバァちゃんを降霊してもらう。
もちろんバァちゃんが向こう十年ぐらいはピンピンしてると思えるぐらい元気なことは語らずにだ。
他のお客と同様に「亡くなったバァちゃん」の情報を提供するが、もしもイタコの能力が本物ならば失敗するだろう。
そして口寄せが旨くいっても旨くいかなくても俺は婆さんの手をきつく握り締めて涙ながらに、こう言うのだ。
「本当に、ありがとうございました!」
そして、もう一人会いたい人がいると再び口寄せを依頼する。
会いたい人というのはプロデューサーより渡されたリストから俺が気分で選ぶのだが、このリストがまたなんとも悪趣味だ。
いずれも未解決事件の犯人ばかりが列挙されている。
つまり、この企画は未解決事件の犯人を降霊して霊界からの自白で事件を解決してしまおうって企画なのだ。
たとえ解決できなくても『口寄せなんて嘘っぱち!決定的証拠を撮った!』とブラウン管に踊るタイトルが目に浮かぶ。
しかし犯人が誰だか判らないから未解決事件なのではないのか?
確かにそうなのだが、こういった事件じゃ人相書きなどから例えば『キツネ目の男』などといった犯人を示す呼び名やあだ名があったりもする。
しかもリストは直近の事件でも百年は前の、つまり犯人はもう死んでいるであろう事件ばかりが並んでいる。
イタコは、犯人が生きているから降りてこないといった言い訳ができない。
まことに念入りなことだが、だからこそプロデューサー氏は今の地位を築き上げることが出来たのかもしれない。




