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流水沈石、その哀しみに

流水沈石/


こどもたちは

言葉をつかまえる

ひかりのなかに

蝶を追うように


昔話のなかにある無垢は

裸のままで風化していく


あの冷たい雲の煌きに

どうしたら届くのかなんて


こんなに変化ばかりの日々に

何も変わらないことなんて


ある日

目覚めれば

涙が

わたしを満たすこと


この最も微かなひかりは

まるで

最も弱い風の前の風として

最も小さな海の中の海として

そして

最も広い大地を覆う雲の影として

最も青い大空を映す鏡の湖として


最も小さな陽炎より

全ては起こり

やがて還る


数えきれない悲しみと痛みを

数えきれない別れと喪失を

それでも

それでも

何も変わってはいないという

この残酷な

うつろいゆくことと

そのままで空っぽであることとの

対峙


この哀しみに

言葉は帰ってくるだろう

ひたすらに

繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し

尽きることのない言葉の列は

押し寄せるように




その哀しみに/


冬雲は

幻の空に重たげに漂う

氷の棺のように

低く冷たい陽に照らされて

昼日中の夕暮れのように


わたしは待っている

氷のままに落ちてくる

その哀しみを


いつだろう

溶けてしまった無垢が

また還ってくる

絶え間なく

景色へ降り積もり

一面を昔語りに

しろく

染めていく

全ては流れる水のようにうつろいゆく。そして全ては変わらない。陽炎のような不可知より発し、また還ること。そこに無垢がある。純粋な哀しさは全てへの共感。そして生きる喜びとは変化を受け入れること。いつか底の抜けるほどの悲しみに出会うまでは。

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