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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
91/184

ルルハルト、動く

1話分、飛ばして投稿していました。申し訳ありません。

『ルルハルト、動く』が第91部、『予期せぬ来訪者』が第92部になります。

同じミスがないように気を付けますので、今後もよろしくお願い致します。

 イムレッヤ帝国国内。所在不明の場所。ルルハルト軍本陣。

「カタイン将軍が三万の兵を率いて帝都方面へ進発致しました」

 兵士が報告する。

「そうか。では、計画通りに行動する」

「ルルハルト様」

 参謀の一人が声を上げる。

「私にはルルハルト様の行っている軍事行動の意味が分かりません」

「分からなくていい。私の言うとおりにしていれば勝てる。いままでも、そして、これからも」

 ルルハルトは人の意見を聞いたことがなかった。それは彼より優れた策を考える者が、同じ陣営にいなかったからである。

「誰一人、今回の戦争でもっとも危険な人物を分かっていない」

 一人になると、ルルハルトは呟いた。

「新皇帝リユベック・ジーラー? イムレッヤ帝国軍総司令官イムニア・フォデュース? 宿将シュナイ・エルメック? 女傑アンシェ・カタイン? 英雄クラナ・ネジエニグ? そんな奴らは二の次だ。一番危険なのはあの男だ。いったい何者だか知らないが、唯一、私の策を看破した男。まずは奴を、リョウを初めに攻略する」

 リョウは優れた戦術家であり、戦略家である。

 しかし、個人から敵意を向けられたことがなかった。遠くが見えていても、足元が見えていなかった。

 この戦いでリョウは、彼が予期せない形で、そして最悪の形で、ルルハルトの後手に回ってしまった。



 カタイン軍がガンルレック要塞を進発して五日が経った。迅速に兵を進めた。一方、ルルハルト軍は進軍が遅かった。

「予想より早く接敵しそうね。それともこれもラングラムの罠かしら?」

 カタインは楽しげに言う。

 リョウにそんな余裕はなかった。カタインと目を合わせない。

「このままいけば、ヴァンラーエ平原で接敵しそうです」

「妙ね。あそこは別に変わった地形でもなければ、有利を取れる丘すらないわ。本当にただの平原よ。しかもこの時期は私たちにとって、追い風。火計もできないでしょうし、矢だってこちらの方が遠くに飛ぶわ」

「しかし、ルルハルトが勝算ない戦いを挑むとは思えません。兵力では三万対一万、何か仕掛けてくるはずです。もしかしたら、夜中の内にこちらに向かって奇襲を仕掛けるかもしれません。今日は特に用心をするべきだと思います」

「戦場で気を抜いたことなんてないわよ」

 しかし、夜襲はなく、朝を迎える。そして進軍し、ついにルルハルト軍に追いついた。

 カタインやリョウの驚いたのは、この直後だった。

 ルルハルト軍は無秩序にカタイン軍へ迫ったのだ。

「これはどういう言うことかしら?」

 その光景にカタインは困惑した。

 ルルハルト軍は剣など持っていなかった。右手には皆同じく、白旗を掲げている。

「勝ち目無しと思って、降伏するつもりかしら? それにしても不気味ね。いっそ、矢を射かけようかしら?」

 カタインが半分本気、半分冗談でそんなことを言う。

「待ってくれ。討たないでくれ!」

 ここまではただの命乞いに聞こえた。しかし、次の言葉は…………

「俺たちはイムレッヤの民だ!」

 その言葉にリョウやカタイン、そして多くの兵士が困惑した。

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