表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雌伏編
28/184

ユリアーナの来訪

「突然、戸を開けたことは謝ります。それにクラナ様も、リョウもまだ十代、色々と盛んな年頃だというのは分かりますよ」

「「………………………………………………………………」」

 三人は居間に移動していた。

 ユリアーナは呆れ顔。

 リョウとクラナは顔を上げられなかった。

「ですけど、さっきみたいなのは止めた方が良いですよ。来たのが私だから良かったですけど、別の誰かで『英雄が男と淫行に耽っている』なんて噂を広められたくはないでしょう?」

「そ、そんな、リョウさんにあそこまで迫ったのは初め……………………二回目です!」

「二回も入り口であんなことをしていたのですか?」

「いいや、もう一回はフィラックさんの家の、ルパさんのベッドの上でだよ」

 リョウが答える。

「そっちの方が大問題じゃない!」

「いや~~、ユリアーナは変わらなくってホッとするな」

「私はこの短い間で不安しか感じないんだけど!?」

「ユリアーナさん、いくら払えばさっきのことを忘れてくれますか? 何をすれば、忘れてくれますか!? 何でもしますから!!」

「クラナ様も変わらないですね。後先考えないところとか! ………………別に誰かに言ったりはしません。でも、もっとちゃんとしてくださいね。流れに任せて、やって良いことと悪いことがありますから」

「君だって、ネーカ街道の戦いの最中にローランさんとよろしくやっていたみたいじゃないか?」

「ど、どうしてそれを!?」

「ローランさんが自慢してた」

「あいつ、帰ったら殺す」

 ユリアーナから本気の殺意が滲み出る。

「あ、あれは仕方ないのよ。人間って死ぬ直前になると生存本能から性欲が増すらしいって言うじゃない? あの時は決死の覚悟だったのよ。だから、ああいうことになっても仕方ない!」

「自己弁護ご苦労様。その後は順調?」

「毎日喧嘩をしているくらいには順調よ」

「それは良かった。じゃあ喧嘩して、僕たちのところまで家出してきたわけじゃないだろ?」

「ええ、ここには仕事できたわ。近々、シャマタルは、イムレッヤ帝国のイムニアと同盟を結ぶそうよ。イムニアの方から書状が届いたらしいわ。で、あっち側から使者が来て、ここ、ファイーズ要塞で調印式が行われるわ。恐らく、ファイーズ要塞にも連絡が来ているはずだけど?」

「ちょっと、クラナが体調不良で休んでいたから、周りの状況の変化についていけてないかな」

「体調不良?」

「もうすっかり元気です!」

「元気すぎて若気の至りに走ったんですね」

「そのことはもう忘れて下さい!」

「で、その調印式があるのは分かったけど、なんで君がここに来たの?」

「イムレッヤ帝国側の使者からの直々の指名なのよ。私が」

「何でまた? 君の縁がある人が使者のなのかい?」

 その質問に対して、ユリアーナは複雑そうな顔をする。

「縁があるっていえば、あるわね。因縁とも言うけれど………………相手の使者はカタイン将軍よ」

「なるほど、君を助けた大将軍か」

「私は意識が無かったけど、ローランの話だと私のことを気に入っていたらしいわ」

「良いことじゃないか。交渉が簡単に進むかも知らない」

「そう思わせておいて、何かあるかもしれない。結構難しいのよ。こっちは命を救ってもらっているから、強くは出れないし、けど、シャマタルに不利な同盟にはしたくないから」

「その辺は頑張ってくれとしか言えないね。ルピンならともかく、僕じゃ、交渉で助言は出来ないから」

「そういえば、グリフィードとルピンに会ってきたわ。二人はフェーザ連邦へ向かうそうよ。そこが最終目的地ではないでしょうけど。あと、ルピンからリョウへ伝言があるわ。西と南に注意せよ、だって」

「西と南か………………」

「それはシャマタルの西(フェーザ連邦)と南(イムレッヤ帝国)ということでしょうか?」

 クラナが尋ねる。

「いいや、この場合の西と南は、大陸の西と南、ベルガン大王国とリテリューン皇国のことだね。この二つの大国は、近年大規模な戦争ばっかやっていたのに、イムレッヤ帝国が内乱に入ってから動きがおかしいんだ」

「ルピンも同じことを言っていたわ。もしこの二つの国が停戦や講和すれば、大陸は大きく動くんじゃないかしら?」

「ただ、もしかしたらベルガン大王国やリテリューン皇国がイムレッヤ帝国に対して、軍事行動を起こそうとする時、すでにイムレッヤ帝国はイムニアが掌握しているかもしれないよ。そうすれば、迂闊には手を出せないだろうね。まぁ、僕らだけで話しても仕方ないだろうから、政略・戦略の話はこの辺にして、食事でもしようか。といっても、うちは今何もないから、どっかの酒場に行ってみよう」

「良いところ紹介しなさい」

 ユリアーナは笑った。

「どうかな。外食なんてしないから。まぁ、できる限り表通りの店に行こうか」

 三人は揃って、家を出た。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ