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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
外伝 解明編
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再会

今回で『解明編』は最終話となります。

「すでに終結したですって?」

 ルピンたちがファイーズ街道を越えて、イムレッヤ帝国領へ入った時、ガンルレック要塞での攻防が終わったという情報が入った。

「シャマタル独立同盟とイムレッヤ帝国のカタイン将軍の軍が共闘し、ルルハルトを撃退したか。報告だけ聞くと良いことのように聞こえるな」

 グリフィードは全く笑っていなかった。

「そうですね………」

 勝ったと聞いたのにルピンの気持ちは晴れなかった。話の中でリョウの名前が一切出てこなかった。そして、続く報告でクラナや多くの将兵が負傷し、シャマタル独立同盟に大きな損害が出たことを知る。

「主な指揮官に死傷者は出ていないらしいですが、司令官自身もかなりの深手を負ったそうです」

 その報告に一番衝撃を受けたのはカリンだった。

「ルピンちゃん、お願いがあります。グリフィード君と二人で先行して、ガンルレック要塞というところに行ってもらいませんか?」

 カリンの表情には不安が浮かんでいた。

「私たちでいいのですか?」

「あなたたちの方が娘と面識がありますから。お願いします」

 カリンは頭を下げた。

「分かりました。グリフィード」

「了解した」と言い、グリフィードはルピンと一緒に可能な限りの速度でガンルレック要塞へ向かった。

「グリフィード…………」

「なんだ? しゃべると舌を噛むぞ」

 グリフィードが馬を走らせる。ルピンはその後ろに乗っていた。

「私、二人が死んでも構わないようなこと言いましたけど、本心じゃありませんから…………」

「そんな分かりきっていることを言うな。くだらない」



 二人がガンルレック要塞へ到着すると正門前で顔見知りと出会った。

「なぜここに?」

 アーサーンは驚く。

「私たちも聞きたいですよ。なぜ、あなたがここで警備をやっているんですか?」

「人手不足なもので名乗りを上げました。お二人だけですか?」

「数日すれば、八千の兵が到着しますよ」

「八千!? シャマタルにそんな余力があったのですか?」

 ルピンは逸る気持ちを抑え、八千の兵力の内訳を経緯を説明した。

「なるほど、そういうことでしたか。しかし、カリン様の件は正直、信じがたいですね」

 アーサーンはカリンのことに関しては疑いの目を持っていた。

「私たちのことは話しました。今度はあなたの番です。この要塞で何があったのですか?」

「実はですね…………」

 アーサーンは事実を着色せずに話した。

 リョウが独断で動いたこと。リョウやカタイン不在のガンルレック要塞へルルハルトが来襲したこと。要塞司令官のシュタットが負傷し、クラナが全指揮を執ってルルハルトと戦ったこと。乱戦の中で強敵と対峙し、傷を負ったこと。リョウとカタインが帰還し、ルルハルトをギリギリのところで退けたこと。

 それらのことを話す。

 しかし、アーサーンは一つだけ隠したことがあった。ルパの力のことである。そのことは自分の口から話すべきでないと判断し、伏せた。

「なるほど、分かりました。そんな状況でルルハルトを退けられたことは奇跡に近いですね。いえ、奇跡なんて安い言葉で片づけたら、ネジエニグ嬢が可哀そうです。ネジエニグ嬢の力量があったからそこです」

「本人に言ってあげてください。たぶん喜びますよ」

「どうでしょうかね。私に褒められたら、警戒するんじゃないんですか? で、ネジエニグ嬢はまだベッドですか?」

「いえ、体調は回復したので外出していると思います。多分、屋台が出ている方にいるんじゃないんですか?」

「ありがとうございます。行きますよ、グリフィード」

「おっと、俺は先に兵舎の方へ行くぞ。お前がリョウやネジエニグ嬢を心配するようにユリアーナが心配だ。どうせまた無茶をしたんだろ?」

「えっと、ユリアーナさんならここにはいません」

「どういうことだ? まさか…………!?」

 アーサーンはグリフィードのこんな表情を初めて見た。

「大丈夫です。本当に人間かと思うくらいの回復力ですでに元気です。……が、ちょっと契約がありまして」

「契約?」と首をかしげるグリフィードにアーサーンは、カタインとユリアーナが交わした奴隷契約のことを説明した。

「まったくユリアーナさんはまた考え無しにそんなことを…………」

 ルピンは頭を抱えた。

「まぁ、あいつらしいな」とグリフィードが言う。

「で、どうしますか? それなら一緒に来ますか?」

 ルピンが再度提案する。

「いいや、それでも宿舎の方へ行く。フィラックさんたちに話を聞きたいからな」

 ルピンは「分かりました」言い、グリフィードと分かれる。

 ルピンは出店が多く並ぶ通りに到着し、二人の姿を探した。

 街はボロボロで激しい戦闘が行われたことが伺える。



「リョウさん、頑張って、それが報われるっていいですね!」



 良く通る声がした。

 ルピンが振り向くとリョウとクラナがいた。

 懐かしかった。感傷に浸る。なんと声を掛けようか、とルピンは考える。

 


『久しぶりですね。良く頑張りましたね。ただいま帰りました。』



 最初の一言が決まらない。

「…………あっ、クラナ、口に魚の食べ残しが残っているよ」

「え!? どこですか?」

 ルピンが迷っていると二人が目の前でイチャつき始めた。

 この瞬間、ルピンの中で最初の一言が決まった。



「あーー、久しぶりの再会、初っ端からこんなところを見せつけられるなんて…………えーっと、こういう時、リョウさんの世界の言葉で、なんて言えばいいんでしたっけ? あっ、そうだ。リア充爆発しろ、ですね」



 見た目とは不釣り合いな口調でルピンは言い放った。

 

ここまでお付き合いして頂き、ありがとうございます。

今回で『解明編』は完結となります。

次回は『決戦編』となります。

なるべく早く投稿できるように頑張ります(汗)

少しでも気になりましたら、ブックマーク、評価、感想などを頂けると幸いです。

創作の励みになりますので、よろしくお願いします。

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