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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
外伝 解明編
174/184

潜入

今回の連続投稿で『解明編』を完結させます。

『解明編』完結まで毎日22:00~24:00の間に投稿する予定です。

体調・仕事の関係で投稿が滞ることがあるかもしれませんが、ご了承ください。

今後もよろしくお願い致します。

 次の日、ルピンたちは三人で地下に潜った。

「どうする、脱出経路まで輝光石を撒くのか」

 グリフィードが聞く。

「いいえ、神都の外まで届くほど輝光石を持っていません。それに追われていることを想定すれば、それは私たちの進行方向を伝える愚行です。逃走経路は私が頭に記憶します」

「こんな地下でか? 方向感覚も狂うぞ」

「私を甘く見ないでください。とはいっても、少し時間は欲しいです」

「分かったよ。お前を信じる」

 ルピンはそれから二日間、地下を歩き、空間を把握する。

 そしていくつかの逃走経路を頭の中に記憶する。

「決行は明日ですね」

 宿屋に戻ったルピンが言った。

「分かりました」とローザが返す。

「それにしてもローエス神国はすごいな。地下にあれだけの空間を作るなんて、技術力は五大大国の中でも群を抜いている」

 グリフィードが言った。

「大陸の中心にあることが理由でしょうね。元々、教会は大陸乱世の以前に存在していた『大陸帝国』の一組織だったのに大陸帝国が『イムレッヤ帝国』『ベルガン大王国』『リテリューン皇国』に分裂した時に全ての組織に味方しないと宣言した教会が領土を主張したのが始まりです。三強国時代に各国と交渉を武器に独立を保ちました。三国も宗教を敵に回したくなかったんでしょうね。ローエス神国の要求を受け入れ、ローエス神国は勢力を増した」

「考えてみる不気味な国だ。大陸の中央に属していながら、大陸乱世で揺るがない勢力を保っている」

 ルピンは深く頷く。ローエス神国の黒い部分には『始まりの洞窟』で触れた。まだ、どれだけの闇があるか分からない。ルピンは歴史家としての性格からもそれを知りたくなった。


 


 次の日の夜。

 日中、ルピンたちは明かりの類やいざという時に必要な物資を調達した。その途中でローザは一度、別行動を起こす。夕刻、待ち合わせの場所にローザはまだ来ていなかった。

「もしローザさんが神兵を引き連れて帰ってきたら、どうする?」

「最悪ですね。でも、そんなことはないでしょう。あの人が裏切るつもりなら、今じゃなくてもいくらでも時間はあったはずです」

 二人がしばらく待つとローザは現れた。

「すいません、遅くなりました」

 現れたローザは布に包まれた何かを担いでいた。それは細長く、重そうだった。

「ここでは説明できません。宿屋に戻りましょう」

 宿屋に戻るとローザは布の中身を取り出した。

 それは二本のロングソードだった。

「護身用です。こっちはグリフィード君の分です」

「ありがたいが、どこで手に入れた?」

「安心してください。足が着くようなところでは買っていません」

「分かった。正直、丸腰で不安だったんだ。出来れば使いたくないがな」

 三人は宿屋の一階の酒場で簡単の食事を済ませる。

 そして、夜の闇が深くなった頃、宿屋を出て、地下に潜った。

 地下は決して良い環境ではない。悪臭は酷く、辺りからはネズミの鳴き声がする。

「噛まれないように気を付けてください。どんな伝染病を持っているか分かりませんから」

 ルピンたちはそれぞれランプを持って進んだ。

 そして、向こうから風が来ている壁の前にたどり着く。

 ルピンは周囲を探索する。

 そして、足元の何か気が付いた。

「なるほどそういうことですね」

「おっ、謎が解けたか。どんな仕掛けでこの壁は開くんだ?」

「そんな大掛かりな仕掛けはありませんよ。もっと単純な仕掛けです」

 ルピンはしゃがんで『地面を掴んだ』のだ。その瞬間、埃が舞う。

「完璧に一体化してますけど、これは絨毯ですね。この風はただの目印だったのですよ」

 剥がした絨毯の下には鉄の扉があった。

「グリフィード、これ開きますか?」

「やってみよう」

 グリフィードが鉄扉の取手を掴んで力任せに持ち上げる。

 鉄扉は嫌な音を立てながら。解放された。

 中から風が吹いてくる。

「さて、行きます」

 三人は現れた通路に侵入する。

 そこからは一本道だった。暗く狭い通路をゆっくり進んでいく。

 しばらく進むと目の前に壁が現れた。

 ルピンは試しに壁へ触れてみる。壁は簡単に動いた。

「これ、行けますね」

 ルピンは壁を押して、外に出る。振り返るとルピンが壁だと思ったのは大きな絵だった。

「潜入成功だな。これが大陸一の図書館か」

 ランプで照らすと部屋に家具や何か分からないガラクタがあるだけだった。

「ここを見て、それを言わないでください。上は本当にすごい数の本があるんですよ」

「それはぜひ、そのうち行きたいものだな。だが、今はやることがあるだろう」

「そうですね。進みますよ」

 ルピンはここまでくれば、すんなりと行くと思っていた。

 しかし、地下室は意外と広く探索に時間がかかる。その中で本棚をいくつか発見したが、ルピンは数冊の本を読むとそれらの部屋からすぐに出ていく。

「いいのか、全部見なくて?」

「本というのは種類別に置かれているものです。だから何冊か見れば、分かります。んっ? この部屋は鍵がかかってますね」

 ルピンは怪しいと思った。

 用意していた小道具の中から細い金属を取り出す。

 それを鍵穴に突っ込み、カチャカチャと動かすと鍵は簡単に開いてしまった。

「手際が良いな」

「これくらい簡単ですよ。さてと…………」

 ルピンは中に入る。明らかに他の部屋と空気が違っていた。書物を手に取り、読み始める。

 そして、ここに自分の目的のものがあると確信した。

「ここにあるのはローエス神国が関わった事件のようです…………えっ!?」

「どうした? お前の家のことが書いてあったのか?」

「いえ、今から半世紀前のフーリッヒ二世の弟の暗殺にローエス神国が関与していたと書かれた記事がありまして…………」

「フーリッヒ二世? ああ、途中からおかしくなったイムレッヤ帝国の皇帝か」

「これが本当だとするとローエス神国はイムレッヤ帝国の弱体化に関与していたことになります。いいえ、それだけではありません。ベルガン大王国やリテリューン皇国、フェーザ連邦の内情にも関与しているようです」

「おいおい、リテリューン皇国もか!? 俺がいた頃にはそんな様子無かったぞ」

「あなたは宗教になど嵌らないからローエス神国も近づかなかったのでしょう。本音を言えば、ここの本全てを持っていきたいです」

「勘弁してくれ。何往復するつもりだ。夜が明ける」

「分かってますよ」

 ルピンは気になる背表紙の本を何冊か手に取り、持ってきた袋の中に詰めていく。

 そして、ついに目的の本を見つけた。

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