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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
164/184

決戦の地はアンデンゴード!

本日、23:00~0:00にもう一話、投稿予定です。

時間に余裕のある方は読んで頂けると幸いです。

 シュタットの密葬後。

 カタインはハウセンとルーゴンを呼び出した。

「さて、戦いには勝ったことだし、全てを不問にしたいところだけれど、そうもいかないわね。ルーゴン将軍、あなたの軽率な行動で状況は悪化したわ。何か弁明はあるかしら?」

「ありません。どのような処分も受けます」

「あら、潔いがいいのね。それに顔付きが変わったわ。もっと早くそうなれば、良かったわね」

「………………」

 ルーゴンはカタインの言い方でこれからの沙汰が厳しいものになると予感する。

 カタインはハウセンに視線を移した。

「あなたは守るべき司令官を守れなかった」

「はい…………」

「よって、二人には同じ処分を下すことにしたわ」

 それを聞いて驚いたのはルーゴンだった。

「ちょっと待ってください。俺は分かります。しかし、ハウセンには落ち度がありません!」

 ルーゴンが詰め寄った。

「落ち着いてください。ルーゴン将軍」

 グリューンが割って入った。

「二人に処分を言い渡すわ。追放よ。イムレッヤ帝国軍から除籍するわ」

「は?」とルーゴン。

「…………」

 ハウセンは無言だった。

 それはルーゴンにとっては軽く、ハウセンにとっては重い処分だった。

 しかし、話はここで終わらない。

「けど、私も鬼じゃないわ。クラナ・ネジエニグ司令官にあなたたちの紹介状を送っておいたわよ」

「「えっ?」」

 ルーゴンとハウセンが声を揃えた。

「イムレッヤ帝国を追放された人間を使うかは分からないけどね」

 二人はカタインの思惑、温情を悟った。

「感謝します」

「ありがとうございます」

 二人はカタインに頭を下げ、そして、去っていく。

「よろしかったのですか? あの二人、成長すれば、カタイン様の力になったでしょうに」

「別に構わないわ」とカタインは答える。

「仕えたい人がいる、ってことは素晴らしいことだわ。私はその意思を尊重したいのよ。…………それにあの子を貰うのだから、これぐらいしないとね」

 カタインはいつものように不敵に笑う。



 ガンルレック要塞で攻防戦が終結した頃、大陸大戦の戦局は大きく変わろうとしていた。

 イムニアの構想は敵を集めて撃滅することだった。

 決戦の地に想定していたのは「シュセキ平原」である。

 この平原は右側の大河、左側に湿地帯が存在する為、軍の展開に制限がある。三十万の大陸連合軍がこの地に入れば、その動きは制限される。数の有利を発揮するのは難しい。

「ラングラムを退けたか」

 イムニアはカタインからの報告書に目を通した。

「あいつの報告書はいい。自身の功績を誇張せず、正確に伝えるからな」

 イムニアは予定通りリテリューン皇国軍をシュセキ平原に誘導していた。各戦線もイムニアの構想を半ば達成しそうだった。

 イムニアはシュセキ平原での戦いに思いを馳せる。

 先鋒はフェルター、敵の戦線に穴が開いたら、ガリッターを動かす。

 守りの要はミュラハール。

 エルメック、カタイン、アンスーバは状況に応じて、攻守どちらもできるだろう。

 それにシャマタル独立同盟軍がどんな戦いを見せてくれるかも興味深い。

 そして、戦いを決めるのはイムニア自身とリユベック。

 イムニアは決戦を考えると気持ちが昂った。

「まったく救い難い性分だな」

 イムニアは苦笑する。

「閣下、よろしいですか?」

 そんなイムニアの気持ちを下げさせる声がした。

 ウルベルだった。

「何かあったか?」

 イムニアは不機嫌に言う。

 ウルベルの報告を聞いた時、イムニアは耳を疑った。

「ビリエ要塞が陥落しただと!?」

 イムニアの驚きは当然だった。

 ビリエ要塞はどの戦線から見ても遥か内地にある要塞で、戦場になっていない要塞である。

「何が起こった!?」

 詳細はすぐに届いた。

 ビリエ要塞を落としたのはローエス神国だった。厳密にいえば、ビリエ要塞の司令官グスービーが熱心な大陸教徒であることが判明した。さらにビリエ要塞には相当数の大陸教徒が潜伏していた為、簡単に制圧されてしまった。大陸教徒のなった者は命を救われ、拒絶された者は殺された。

「大陸教…………!」

 イムニアは机を思いっきり叩いた。

 ビリエ要塞が陥落したことでイムニアの戦略構想は破綻する。

 ビリエ要塞は現在、イムニアが駐留している戦場とエルメックが駐留している戦場の中間に位置していた。そして、両軍がシュセキ平原を目指す時、無視できない場所に存在する。

 イムニアは構想の再構成を余儀なくされた。

 地理に詳しい者と参謀・指揮官を呼び、決戦の地の再検討に入る。

 しかし、それは容易ではなかった。大軍を相手にする適した土地など幾つもあるけではない。

「ここしかないのか…………」

 イムニアが考え出したのは場所は『アンデンゴード平原』だった。

 東西に大きな街道が二つ伸びていて、その街道を守るためにシャーデン要塞とミラルス要塞の二つの強固な要塞が存在する。過去、この二つの要塞は一度も陥落したことがない。

 …………そして、一度も攻められたことがなかった。

 何しろ、この場所から帝都までは時間にして一日の距離である。

 イムレッヤ帝国にとって、最後の防衛拠点なのだ。

「この防衛案を急いでリユベ…………皇帝陛下とエルメック将軍に届けよ。意見が聞きたい。承認があり次第、我らは移動する」

 馬では遅いと判断したイムニアは伝書鳥を使った。

 リユベックとエルメックも独自の情報網からビリエ要塞陥落を把握していた。

 そして、イムニアが果断即決することも分かっていた。

「イムニア様…………私はイムニア様の戦略に賛同します。そして、これをこの戦争最大の決戦と判断し、我らも動きます。各地の将軍にも私、そして、イムニア元帥の名前で触れを出してください」

 リユベックはイムニアに賛同し、自らも動いた。

 エルメックもまた…………

「イムニアがワシの意見を求めるなど何時ぶりじゃ。それだけ意表を突かれたということじゃろうな…………」

 エルメックは地図を見て、考え込む。

「何度見ても、イムニアと同意見じゃな…………まさか、アンデンゴードで決戦になるとはの。ここまで追い込まれたことなど恐らく、イムレッヤ帝国の歴史にないぞ。連合軍の恐ろしさかの」

 常に大陸内で強国として君臨してきたイムレッヤ帝国。

 初めて帝国興廃を賭けた決戦に臨む。


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