表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
159/184

ガンルレック要塞攻防戦最終日③~二度目の邂逅~

今回の連続投稿で『雄飛編』を完結させます。

『雄飛編』完結まで毎日23:00~24:00の間に投稿する予定です。

体調・仕事の関係で投稿が滞ることがあるかもしれませんが、ご了承ください。

今後もよろしくお願い致します。

 リテリューン皇国軍後方。

「ユリアーナさん、ルーゴンさんは左に展開! アーサーン、グリューンさんは右に展開してください! フィラック、ハウセンさん、中央の指揮は任せます。ここでルルハルトさんを打倒します!」

 クラナは叫ぶと自分の声の振動で意識を失いかけた。

「しっかりしてください。私まで落馬します」

 ルパはクラナの馬の後ろに乗っていた。クラナの腰に回していた腕をギュッと絞めて、失いかけたクラナの意識を戻す。

「ルパちゃん、噛み付いてでも私を起こさせてください」

「分かっています…………」

 ルパはクラナの異常に高い体温を、以上に早い鼓動を感じていた。


「ルルハルトはどこよ!?」

「ルルハルトはどこだ!?」


 ルーゴンとユリアーナは吠えた。

 両隊は次々にリテリューン皇国軍を敗走させていく。


「さて、乱戦なら任せてもらおうか」

 グリューン隊はその強さを遺憾なく発揮し、リテリューン皇国軍を撃破していく。そして、リテリューン皇国軍がグリューン隊によって乱れたところにアーサーンが攻め込み、多大な戦果を挙げた。



「ラングラム様、要塞の奴らが攻めてきました! 我らが完全に包囲されています」

 ルルハルトは「なるほど」と呟き、しばらく沈黙した。

「これが敗北か…………」

 敗北、ルルハルトがその言葉を口にした時、それを聞いた兵士たちは驚く。

 ルルハルトは初めての感情に襲われた。

「この戦、最も予想外だったのはリョウでも、カタインでもない」

 ルルハルトの脳裏に浮かんだのは、

「クラナ・ネジエニグ…………その名前、覚えておこう。認めるしかないだろう。私はリョウを意識する余り大きな見落としをしていた。だが、次はこうはいかない。それにこの戦争は我らが勝つ」

 ルルハルトは人生で初めて敗走の為に自軍を再編成した。


 カタインはリテリューン皇国軍が逃げる動きをしていることを確認する。

「これだけのことをやって逃がすと思っているのかしら?」

 カタインは敢えて、包囲陣に薄い部分を作った。リテリューン皇国軍がそこに殺到する。

 しかし、これはカタインの罠だった。

 包囲陣の出口には弓隊が待ち受けていた。

 矢の雨がリテリューン皇国軍を襲う。

「ラングラムは生け捕りにしなさい。私が直接遊んであげるわ」

 カタインも最前線に出る。次々にリテリューン皇国軍の兵士を切り伏せるが、一向にルルハルトらしき人物は確認できなかった。

「再後衛で味方を逃がす為に踏みとどまっている、って性格の奴じゃないわよね?」

 カタインは乱戦の中にいた。

「カタイン様!」

「あら、生きていたのね、グリューン」

 乱戦の中、カタインはグリューンと合流することになった。

「前に出すぎです。あなたは一軍の将なんですよ!」

「後ろで指揮するだけなんて退屈だわ。それにこうやっている方が私らしいでしょ?」

「まったく…………」

 カタインとグリューンは背中を合わせる。

「後ろは任せるわよ」

「まったくこの小娘はいつになったら、成長するのやら…………」

「あら、あなたに小娘って言われるのは久しぶりね。戦奴の王様」

「ふん、そう言われるのも何年ぶりだろうな!」

 グリューンは被っていた仮面を脱ぎ捨て、一人の戦士になった。

 カタインとグリューンは次々にリテリューン皇国軍の兵士を斬り捨てる。

「しかし、ラングラムはどこにもいないわね。どこに行ったのかしら?」

 ルルハルトはカタインの誘いにはならなかった。ルルハルトは敢えて、クラナの本陣の横を掠めることを選択した。

「あいつ…………!」

 ルルハルトの接近に対して、ユリアーナが反応する。

「ゼピュノーラ、行って、ルルハルトの討ってこい! ここは俺に任せろ!」

 ルーゴンが叫んだ。

「分かったわ!」

 ユリアーナ隊がルルハルト本隊を強襲するために動き始める。


 ルルハルト本隊はクラナの本陣に接近する。

「ネジエニグ司令官にラングラムを近づけるな!」

 ハウセンが声を張った。

 クラナとルルハルトは互いの声が聞こえる距離まで接近していた。

 両軍の間に緊張が走る。兵士たちは動きを止めた。

「クラナ・ネジエニグ、今回はお前の勝ちだ」

 ルルハルトがクラナに話しかける。

「その名前、リョウと共に覚えておこう。次に会う時はリョウ諸共、屈服させてやる」

「私は負けません。何度でもあなたを止めます」

「お前ごときが私に何度も勝てるなど思いあがるなよ」

 クラナは首を横に振った。

「私一人じゃ無理です。今回だって、私一人じゃ勝てませんでした。みんなが居たから、私は勝てたのです。みんなに支えられて、私は立っています。ルルハルトさん、あなたがどんなに恐ろしい策を使っても、あなたは一人です。私たちには勝てません」

「………………大言を吐く小娘だ」

 二度目の邂逅は一度目と違った。

 ルルハルトはクラナに対して、敵意を向けていた。明確な敵としてクラナを認識した。

「ルルハルト! 次なんてないわ! ここで終わりよ」

 ユリアーナが駆けつける。

「うるさい奴が来る前に私は退こう」

 ルルハルトは完全な包囲が完成する前に戦場を突破する。

 ユリアーナ隊が追撃する。

 しかし、ルルハルトは巧みな反転攻撃でユリアーナ隊の追撃の勢いを削いでいった。

 疲労の極地にあった兵士たちはついに足を止める。

「ここまでね。またあいつを逃がしたわ…………」

 ユリアーナは追撃を断念した。

 ルルハルトが撤退したことでリテリューン皇国軍は完全に崩壊する。

 戦場に残ったイムレッヤ帝国・シャマタル独立同盟軍もすでに戦意はなかった。

 ガンルレック要塞軍は限界を超えて戦った。

 カタイン軍も昼夜を問わずに移動を強行し満身創痍だった。

 興奮状態が疲労を忘れさせていたが、戦いが終わった。

 それを理解した時、歓声はなく、皆がその場に倒れこんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ