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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
158/184

ガンルレック要塞攻防戦最終日②~来援~

今回の連続投稿で『雄飛編』を完結させます。

『雄飛編』完結まで毎日23:00~24:00の間に投稿する予定です。

体調・仕事の関係で投稿が滞ることがあるかもしれませんが、ご了承ください。

今後もよろしくお願い致します。

 ガンルレック要塞近郊、レダリャン平原。

「敵に捕捉されていたようです。この先で展開しております。恐らく、いえ、間違いなくリテリューン皇国軍と思われます」

 兵士がカタインに報告する。

「さて、これで奇襲は出来なくなったわね」

 カタインは不敵に笑う。

 クラナの予想は当たっていた。

 カタイン軍は強行し、四割が脱落した。戦場にたどり着いたのは二万足らずの兵士になっていた。

 それでもユリアーナたちの予想以上の速度でここまで駆けつけた。これには自国内の利点があった。

「面白いことを考えるわね。鎧も武器も全て捨てるって言い出した時は斬ろうかと思ったもの」

「勘弁してください。僕には謝らなければいけない人がたくさんいます。まだ死ねません」

 リョウは移動速度を落とす鎧や武器をすべて捨てさせた。

 そして、新しく補充するためにソモワ川の上流にある要塞や城砦に伝令を送った。リョウは川を使って、新たな武器や防具をかき集めた。

「坊やが必死に地図を見ていたのが無駄にならなかったわね」

 カタインは皮肉の混じった言い方をする。

「けれど、私たちはラングラムより数で劣るわ。あっちも疲れているでしょうけど、私たちも疲れている。それにこっちの騎馬は使い物にならないわ」

 馬のほとんどは強行のせいで泡を吐いて倒れてしまった。

「僕はクラナを信じます」

「あれだけ無下にしたのに都合がいいわね。まぁ、いいわ。総員、戦闘の準備をしなさい!」

 両軍はレダリャン平原で対峙した。


 ルルハルト陣営。

 ルルハルトはカタイン軍を捕捉するとすぐにガンルレック要塞の包囲を解いた。

 カタイン軍の数が少ないこと。

 ガンルレック要塞軍に余力がないこと。

 以上を踏まえて、各個撃破戦術をルルハルトは選択した。

「なぜ、ここまで思い通りにいかない? リョウ、あいつさえどうにかすれば、他の奴など取るに足らないはずだ」

 ルルハルトは苛立っていた。

 ここまで苦戦したことはなかった。 

「敵は数で劣る。正面から叩き潰せ」

 最初に仕掛けたのはルルハルトだった。

 凸陣形を形成し、中央突破を選択した。

「あら、知将にしては単純な戦術ね。相当焦っているのかしら? なら、こっちは…………」

 対して、カタインは両翼を広げて、凹陣形に全体を変える。敵の攻撃を受けながら、迅速かつ柔軟な陣形の変化だった。敵に合わせて戦うことに関して、カタインはイムレッヤ帝国軍屈指の能力を有していた。これほど柔軟な用兵を行えるのは帝国内にイムニアとエルメックの二人だけだろう。

「カタインさん、中央を薄くして大丈夫ですか?」

「心配無用よ。中央に配置したのは私の近衛隊に次ぐ精鋭。弱兵のリテリューン皇国軍に負けないわ。それに坊やの言う通りに戦況が展開されるなら、このまま包囲陣を保つべきでしょ?」

 カタイン軍の中央は奮戦する。

 リテリューン皇国軍は中々中央突破をすることが出来ずにいた。


「騎兵に側面を襲わせろ」

 ルルハルトの次の指示が飛んだ。

 カタインはそれを敏感に察知する。

「単純な戦術だこと」

 カタインは自軍の側面に多数の弓兵を配置していた。

 弓兵の矢の雨がリテリューン皇国軍騎兵隊を襲う。

 しかし、騎兵の勢いは弱まるが殲滅とまではいかなかった。

「両翼の被害が増しています!」

 兵士の報告に対して、カタインは、

「余剰兵力なんてないわよ。現有戦力だけでどうにかしなさい」

 涼しい顔でそう答えた。

 両翼は確実に削られていく。

 戦局が徐々にリテリューン皇国軍有利に傾く。

「あと半刻待って要塞から来援がなかったら、私は手勢を率いてラングラムの本陣に突撃をかけるわよ。いいわね?」

 カタインは劣勢に陥っても不敵に笑う。

 リョウはここまで戦いを楽しんでいる人間を見たことがなかった。

 なぜカタインがここまで戦いを渇望しているのか、気にはなったが、それを聞ける状況ではない。

「分かりました。でも…………」

 リョウは笑った。微かに泣いていた。

「そうはなりませんでしたね」

 リテリューン皇国軍を後方から怒声が聞こえた。リテリューン皇国軍の攻勢が止まった。

「クラナ、君はそこにいるのかい?」

 リョウは呟く。無事であってほしい、その願いが言葉に込められていた。


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