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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
149/184

フィラックとルパ②

 ユリアーナが部屋から出ていくとフィラックは椅子に腰かけた。

 クラナもルパもボロボロだった。

「アレクビュー様、申し訳ございません。クラナ様に過酷で、危険な戦いをさせてしまいました。…………ルパ、お前にも無理をさせたな…………」

 フィラックはルパの頬に手を当てる。

「んっ…………!」

 するとルパは眼を開いた。

「すまない。起こしたか」

「いえ、実はユリアーナさんとハウセンさんに服を脱がされている途中から意識はありました。でも体は動きませんし、裸を見られて、気まずかったので寝ていることにしました」

「そうか…………娘がこうなるまで何もできなかった私を許して欲しい」

「父さんが謝ることは一つもありません。それに私は生きています。さすがに当分は戦えませんが、体は元に戻ると思います」

「元に戻ったら、また戦うのか?」

 フィラックは心配そうな表情で言う。

「どうでしょうか? 私の力は命を削って戦います。長生きしたいので寿命を縮めることはもうしたくありません。私は兵士ではなく、医者ですから」

「そうならないように努力しよう。お前はゆっくり休め。後は私たちが頑張ろう」

 フィラックはルパの頭を撫でた。

「父さん…………」

 ルパの中で抑えていた感情が溢れだす。

「父さんが帰って来なかった時、私がどんな思いをしたか分かりますか…………」

 ルパは泣き出す。

「すまない…………」

「母さんになんて言えばいいか、考えただけで胸が締め付けられました…………」

 涙が止まらなくなる。

「すまない…………」

 ルパは両親の前でだけ時々、年相応の姿になる。

 フィラックにもそれは分かっていた。そして、そうなるのは精神的に不安定になった時だ。

「父さん、お願いがあるんですが…………」

「なんだ? 食事か?」

「違います。私を隣の部屋に連れて行ってくれますか? ここで、その、泣くとクラナ様が起きるかもしれないので…………」

 ルパは恥ずかしそうに言う。

 フィラックは「分かった」と言い、ルパを抱き抱えた。

「この前、お前を背負った時も思ったが、随分と重くなったな」

「父さん、女の子に『重くなった』は禁句ですよ」

「子供に『重くなった』は言っても良いだろう。立派に成長してくれた…………ところでルパ?」

「なんですか?」

「お前の裸を見たハウセン殿に私は何か言うべきだろうか?」

 ルパがフィラックの表情を見ると少しだけ怒っているようだった。

「ハウセンさんは真面目な方のようです。クラナ様の服を脱がす時、初めは気を使って出ていくと言っていました。クラナ様の裸を見ても欲情していませんでしたし、それなら私の裸などでは何とも思わないのではないでしょうか?」

「そうとは限らない。お前の方が若いのだし、男とは若い女性に魅力を感じるものなのだ」

「自分より三十三歳も年下の奥さんを持つ父さんが言うと説得力がありますね」

 ルパの切り返しに驚き、フィラックは少しの段差に躓きそうになった。

「父さん、しっかり歩いてください。今は受け身もとれるか怪しいんですから」

「な、なら、変なことを言うな」

 普段は寡黙なフィラックも家族の前では隙を見せる。

「話は戻しますけど、ユリアーナさんだってハウセンさんに下心がないと判断したから手伝わせたのだと思います。父さんからしたら、嫁入り前の娘が裸を見られて穏やかではないと思いますけど、私は別に文句はありません。さっきも言いましたが、気まずさはありますけどね」

 隣の部屋に移ったルパは少しの間、フィラックの胸の中で泣いた。

 それが落ち着くと

「ありがとうございます。私はもう少ししたら、自力で部屋に戻りますから、父さんは自分のやるべきことをやってください」

 ルパは目の腫れた笑顔で言った。

「大丈夫か?」

「大丈夫です」

「………………行ってくる」

 フィラックは自分の行くべき場所へ向かった。

本日(8/5)はもう一話、掲載予定です。

時間は23時前後になると思います。

よろしくお願いします。

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