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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
145/184

ガンルレック要塞攻防戦八日目②~大攻勢~

今回の連続投稿で『雄飛編』を完結させます。

『雄飛編』完結まで毎日23:00~24:00の間に投稿する予定です。

体調・仕事の関係で投稿が滞ることがあるかもしれませんが、ご了承ください。

今後もよろしくお願い致します。

 ルルハルト本陣。

「いったい何が起きている?」

 ルルハルトが静かに言った。

 しかし、その表情は誰も見たことがないほど怒りに満ちていた。

 周囲の兵士は何も発言できなかった。

 普段は軽口をたたくベルリューネでさえ、押し黙った。

「あいつらを逃がすな! 殺せ!」

 ベルリューネが知る限り初めてルルハルトが怒鳴った。

 兵士たちは慌てて行動を起こす。

 ベルリューネもここにいたら、堪らないと逃げ出すように戦場へ向かった。

 ユリアーナたちは戦闘は意表突き、始めこそ優勢だったが、次第に数の不利が顕著になり、押され始める。

「まったく普通の剣は重いわね…………」

「すまない。いつもユリアーナ殿が使っている剣に似たものはリテリューン皇国軍にはなかったのでな」

「別にフィラックさんを責めているわけじゃありません」

「おい、しゃべっている暇があったら、手を貸せ!」

 ルーゴンが怒鳴った。

「なんで私に命令しているの!? そもそも、あんたが勝手な…………」

「一応、味方同士だ。今は共闘しろ」

 シックルフォールが言う。

「味方って、あんたは敵…………あ~~、もう! 訳わかんない! 絶対生きて、ここを切り抜けて、全部聞いてやる!」

 ユリアーナは必死に剣を振るった。

「まったく老体にこの乱戦は堪える」

 フィラックは肩で大きく息をしていた。

 注意力が下がり、左から迫る敵兵の発見が遅れた。

 しまった、と思った時だった。

 敵兵の頭を矢が貫いた。

「父さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 遥か遠くからルパの声がした。

「ルパがやったのか?」

 フィラックはルパが一つに決断をしたことに気が付いた。

「頼もしい娘に成長したな。一言二言、言いたいことができた」

 フィラックは剣を構え直す。

「隻眼の老人だ。打ち取れ!」

 二人の兵士が同時に襲い掛かった。

「フィラックさん!」

 ユリアーナは叫ぶが、助けにいけない。ユリアーナも敵に囲まれ、手いっぱいだった。

「老人か、確かにな。だがな…………」

 フィラックは二人の敵兵の攻撃を受け流すと二回剣を振る。

 その二回で敵兵二人を切り伏せた。

「これでもアレクビュー様に付き従い、何度も死地を潜ってきた身、簡単にはやられないぞ」

「すごい…………」

 ユリアーナはフィラックが乱戦で戦うところを初めて見たが、無駄のない動きは歴戦の戦士だった。

 ユリアーナたちが奮戦していると辺りが騒がしくなった。

 グリューン隊が到着したのだ。

「敵は混乱している。一気に攻めかかれ!」

 グリューンの声が聞こえた。

「グリューンさん、無事だったのですね!」

「それはこっちの台詞です! さすがに死んだと思いました」

 グリューン隊の到着を皮切りに続々と味方が到着した。

 その中には、

「ユリアーナさん!」

 クラナの姿もあった。

「すいません。一度はあなたを見捨てました」

 クラナは頭を下げる。

「あの状況なら当たり前です。それになぜか生きていますし、気にしないでください」

 ユリアーナはクラナの姿には触れなかった。

 疲労の色が濃くて、顔は青白い。目元には大きなクマが出来ている。

「さぁ、反撃ですよ! リョウたちの救援が来る前に終わらせちゃいましょう!」

「リョウさんたち、無事だったんですね!」

 クラナの表情が明るくなる。

「クラナ様の手紙を見るまでは廃人同然でしたけどね。もう大丈夫です」

「ユリアーナ殿、これの方があなたはいいだろう」

 アーサーンがそう言って、ユリアーナ専用の剣の予備を渡した。

「あなたも無事で何よりだわ」

「大変でしたよ。フィラック様もあなたもいなくなり、仕事が増えた」

 アーサーンは苦笑する。

「まだ働いてもらうわよ!」

 ユリアーナは使い慣れた軽さの剣を抜いた。そして、敵陣に走っていく。

「まったく、先ほどまで処刑されかけられていたのに大した人だ。ユリアーナ殿に後れを取るな! お前たちの隊長ルーゴンも生きていたぞ。隊長の前でお前たちの力を見せてやれ!」

 ガンルレック要塞軍は混乱するリテリューン皇国軍に攻めかかる。

 左翼も右翼も中央も勢いが止まらない。

 特に中央にはクラナ、ユリアーナ、フィラック、アーサーン、グリューン、ルーゴン、シックルフォールら、主戦力が集中していた。

 リテリューン皇国軍の中央を次々に打ち破る。

「あんたたちは…………」

 ユリアーナはある男たちを発見する。

 昨日の晩、服を破かれ、蹴られ、殴られた。

 その当事者たちと戦場で出くわした。

「ほら、敵を討ちたいんでしょ?」

 ユリアーナは剣を構える。

「死にぞこないが!」

 男たちはユリアーナに襲い掛かるが、ユリアーナの動きには無駄がなかった。最小限の動きで男たちの剣をすり抜けると切り伏せる。

「なんだが、体が軽いわね。死の直前から帰ってきたからかしら?」

「何を呑気なことを言っているんですか?」

 アーサーンがユリアーナの隣に来た。

「あなたはそろそろ引いてください」

「なんでよ? まだやれるわよ」

「剣一本でどこまでやるつもりですか? 鎧も付けていないのに」

「あ~~、だから、体が軽いのね。今度から鎧なしで行こうかしらね」

 ユリアーナは笑いながら言う。

 アーサーンは苦笑し、「大した冗談ですね」と言う。

「でも分かったわ。私は退くわね」

 ユリアーナは最前線から撤退する。

 ユリアーナがいなくなっても勢いが弱くなることはなく、ガンルレック要塞軍は次々にリテリューン皇国軍を打ち破った。



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