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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
142/184

看病、訪問者、そして衝撃

今回の連続投稿で『雄飛編』を完結させます。

『雄飛編』完結まで毎日23:00~24:00の間に投稿する予定です。

体調・仕事の関係で投稿が滞ることがあるかもしれませんが、ご了承ください。

今後もよろしくお願い致します。

 ルパの自室。

 クラナはルパに支えてもらって何とか自室に戻ると、ベッドに倒れこんだ。

 ルパはクラナの衣服を脱がせ、お湯と布を持ってきた。

「失礼します」。

 布をお湯で濡らせるとクラナの体を拭き始める。

「痛いですか?」

「大丈夫です…………」

 ルパはクラナの体を拭き、傷を消毒し、清潔な布を充てた。

「何か食べ物を持ってきますね。何なら食べられますか?」

「何も食べたくありません」

「駄目です。何かは口に入れてください」

 ルパはいくつかの果物をすり潰して、牛乳と混ぜた飲み物をクラナに渡す。

 クラナは起き上がり、何とかそれを飲み干す。

「こんな状態でも止めないんですね…………驚いています…………」

 クラナは独り言とも取れるような声量で言った。

「止めたいですよ。でもこれはクラナ様が選んだ道です。クラナ様が無理と言わない限り私はもう止めません…………」

「ありがとうございます…………」

「さぁ、薬を飲んで寝てください」

 薬を飲むとクラナは少しだけ穏やかな表情になり、眠りにつく。

 それを確認するとルパは倒れこんだ。

「まったく人の心配をしている場合じゃないですね…………」

 この日、ルパは朝から何も食べていなかった。『神化薬』の副作用で嘔吐することを極力避けるためだった。

 ルパは残った果物を手に取り、齧った。

「何も味がしない…………」

 ルパは果物を食べ切った。戻しそうになり、それを強引に水で流し込んだ。

「私も体を拭きたいです…………」

 ルパはフラフラとドアに向かった。

 コンコン、とドアを叩く音がした。

 敏感になっていたルパの感覚は過剰に反応しビクッとなった。

「一体誰ですか…………?」

 ルパが扉を開けるとそこには同世代くらいの少女が立っていた。

「…………すいません。誰ですか?」

 ルパが見たことのない少女だった。

「あなたの噂を聞きました。どうか、父の力になってください…………」

 少女は深々と頭を下げた。

 ルパは難しい顔になった。

「事情を聞かないと訳が分かりません」

「私は…………」

 それを聞いた時、ルパは少しだけ考えた。

「…………分かりました。協力します。ですが、あなたやあなたのお父様は後悔しませんか?」

「これは父の願いです」

 少女は震える。

「そうですか」

 ルパは強力な鎮痛作用のある薬物を渡す。

「これは薬と呼べるものではありません。一時的に痛みからは解放されますが、使用者の命を全て食い尽くします。使うのが怖くなったら、捨てて構いません」

 ルパが協力を承諾したのは少女や少女の父親の為ではなかった。それがクラナの負担軽減になる可能性があったからである。

 ルパから薬を受け取った少女はもう一度、頭を下げた。少女は泣いていた。

 突然の来訪者は去っていった。

「なんだか、もう動くのが面倒です…………」

 ルパはクラナの体を拭いた余りのお湯で布を濡らした。お湯は完全に冷えて、水になっていた。

 体を拭き終えるとルパはクラナのベッドに入り込む。

「お互いボロボロですね…………もう少し頑張りましょう…………」

 クラナに触れると不安感が少しだけ解消される。少しだけ寝ることができた。



 次の日の朝、クラナが目を覚ますとルパの姿はなかった。体は怠いが、何とか動くことは出来る程度に回復していた。

 コンコン、とドアを叩く音がした。

「入っていいですか?」

 ルパの声がしたのでクラナは「はい」と言った。

「あはようございます。朝は何か食べられますか?」

 ルパは肉やパン、野菜や果物を持って入ってきた。

「はい、少しなら食べられます」

「良かったです」

 クラナはパンを半分と干し肉を一齧りした。

「これも飲んでください」

 ルパは昨日と同じように果物をすり潰して、牛乳と混ぜた飲み物を渡した。

「いただきます」

 クラナは強引にそれを飲み干した。

 食事を終えるとクラナは剣と手にした。それは酷く重かった。

 あと何日持つだろう、とクラナは自分の体の限界を考える。

「大変です!」

 アーサーンの慌てた声がした。

「どうしたのですか?」

「クラナ様、とにかくこちらへ!」

 アーサーンに言われて、クラナは物見矢倉に上った。

 遠くに見える光景を見てクラナは絶句した。

「ユリアーナさん…………!」

 クラナが見たのはリテリューン皇国に囲まれ、生きたまま磔にされているユリアーナだった…………

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