表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
141/184

ガンルレック要塞攻防戦七日目③~限界~

今回の連続投稿で『雄飛編』を完結させます。

『雄飛編』完結まで毎日23:00~24:00の間に投稿する予定です。

体調・仕事の関係で投稿が滞ることがあるかもしれませんが、ご了承ください。

今後もよろしくお願い致します。

 ルパの支援が無くなり、代わりにクラナが前線に出た。

 クラナの登場に味方は歓喜する。

 しかし、同時にリテリューン皇国軍に攻撃の的を与えてしまった。

 クラナに対して、リテリューン皇国の兵士が殺到する。

「殺すな! ラングラム様から生け捕りにするようにと、指示があった」

 部隊長らしき男が叫んだ。

「生け捕りにされるつもりはありません!」

 クラナは自分自身でも剣を振った。司令官の立場を逸脱していたことは間違いない。

 そんなクラナを守るためにシャマタル独立同盟の兵士は必死になって戦った。結果として、数の不利を覆し、リテリューン皇国軍を押していた。

 クランが最前線の戦い始めてから一時間、劣勢のリテリューン皇国軍に決定的な一撃が襲い掛かる。

「放て!」

 その声と共にリテリューン皇国軍の左右の建物から無数の矢が撃ち込まれた。

 弩と弓の部隊がリテリューン皇国軍の左右に布陣していた。

「クラナ様、前に出すぎです。一旦引いてください」

 いつの間にか戦場のど真ん中にルパがいた。

「なんでこんなところに?」

「医者として、止めに来ました。顔が真っ赤です。それなのに汗が止まっています。クラナ様、倒れる寸前ですよ」

 二人の会話の途中で

「クラナ・ネジエニグを捕まえろ!」

 一人の兵士が襲い掛かる。

「ちょっと黙ってもらえますか?」

 ルパは冷たい声と共に弩の引き金を引いた。

 矢は兵士の喉に突き刺さり、吐血し、絶命した。

 クラナは辺りを冷静に見渡し、兵士を一人、呼び止めた。

「ハウセンさんに連絡をしてください。中央軍が退く援護をお願いするようにと」

 クラナはハウセンが手勢を率いて、戦場に到着すると戦線を縮小する。時刻はすでに夕刻だった。

「各戦線、味方が優勢です! 左翼ではグリューン隊はリテリューン皇国軍を散々に打ち負かし、敗走させました! 右翼ではアーサーン様が奮戦!」

「分かりました。報告、感謝します」

 クラナは兵士を下がらせる。

 クラナは兵士の報告する声がとても遠くに聞こえた。近くで叫んでいるはずなのに聞こえづらかった。

「もう少しだけ耐えてください…………」

この日の戦闘はガンルレック要塞軍の勝利だった。疲れているはずの兵士は歓喜し、明るかった。

 しかし、指揮官たちは深刻な表情を浮かべる。

「これは底力というやつですね。もう余力はない。我々だけでは次の劣勢をひっくり返せないでしょう」

 夜、軍議でアーサーンが言う。

 今日の戦闘、民衆の内、若い男はほとんどが前線に出た。女は怪我人の手当てや炊事、最前線に食料を運んだ者もいた。老人は子供の面倒を見ていた。文字通りの総力戦で一日を戦い抜いた。

「その通り、加えて…………」

 全員の視線がクラナに向いた。

 クラナは軍議の最中、フラフラとしていた。

「ルパ、正直なところを聞きたい。クラナ様の体調はどうなのだ?」

 アーサーンはクラナ自身ではなく、ルパに聞く。

 クラナに聞いても「大丈夫です」と答えられるのは分かりきっていたからである。

 クラナが口を開こうとしたのはルパは遮り、

「個人的感情で言わせてもらうなら、止めるべきでしょう。ですが、それが出来ますか?」

 その言葉に全員が沈黙した。



「クラナ様」

「…………………」

「クラナ様!」

「………………! ルパちゃん?」

 クラナの白い肌は真っ赤になっていた。

「軍議、とっくに終わってますよ」

「えっ? あっ…………」

 クラナは軍議の最中、自分が何を言ったか、覚えていなかった。いつ軍議が終わったかもうろ覚えだった。

「立てますか? 肩を貸します」

「…………ありがとうございます」

 実のところ、軍議はまだ終わっていなかった。

 アーサーンらは別の部屋に移り、軍議を続けていた。これ以上、クラナに負担をかけさせない配慮だった。

「クラナ様」

「はい?」

「リョウさんにまた会うんですよね?」

「はい」

「ならもう少し頑張りましょう」

「はい、頑張ります」

 ルパはクラナを半分引きずるような形で自室に向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ