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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
139/184

ガンルレック要塞攻防戦七日目①~狂乱~

今回の連続投稿で『雄飛編』を完結させます。

『雄飛編』完結まで毎日23:00~24:00の間に投稿する予定です。

体調・仕事の関係で投稿が滞ることがあるかもしれませんが、ご了承ください。

今後もよろしくお願い致します。

 七日目、クラナはシュタット隊の一部と志願した民衆を前線に配置した。

 ルルハルトはそんなガンルレック要塞軍の動きをすぐに感じ取る。

「この短時間でどうやって民衆を従えた?」

 しかし、民衆が動いた原動力まで理解することは出来なかった。

 クラナのやけくそが民衆たちを動かした、などと考えられるはずがなかった。

「しかし、民兵などただの数合わせではないですか?」

 ベルリューネは鼻で笑う。

「守るべき者を背にして戦う人間の強さを甘く見るな」

 ルルハルトの予感は的中する。

 この日の開幕はガンルレック要塞軍左翼の攻勢からだった。

 しかし、これは意図したものではない。

 敵を見た民兵が暴発する形で突撃を行った。それに釣られて、ガンルレック要塞軍の左翼が動いた。

 理由はどうであれ、ガンルレック要塞軍左翼は破竹の勢いでリテリューン皇国軍を撃破していく。

「左翼の勢いは止まりません。昨日の第二防衛線まで敵を押し返しました!」

 兵士の報告にクラナのいる本陣は歓喜した。

 左翼の勢いは止まらず、リテリューン皇国軍の部隊長の一人を討ち取り、リテリューン皇国軍の右翼の一部を敗走させた。

「驚きましたね。計算されない狂乱が天才の戦術の上を行くなんて」

 ルパが言う。

「…………そろそろ、私も配置につきますね」

「ルパちゃん!」

 クラナは次の言葉を躊躇う。何を言おうか、考え直し、

「お願いします」と言った。

「もちろんです」とルパは返した。首からは薬の入った鞄をぶら下げ、手には弩を握っていた。

 ルパは数名の男たちと共に高台に上った。

 鞄から改良版『神化薬』の巻かれた紙の筒を取り出し、火を付けて吸引する。

「ふぅ…………それじゃ、始めますか」

 ルパの眼は怪しく光り、声は低くなる。

 感覚は鋭利になる。

 遥か遠くにいるはずのリテリューン皇国軍の兵士が随分と近くに感じた。

 ルパは弩を構え、躊躇わずに引き金を引いた。

 矢は真っ直ぐに飛んでいき、リテリューン皇国軍の兵士の頭を打ち抜く。

「次、お願いします」

「お、おう!」

 矢を放った弩を男に渡し、別の男から矢が装填されている弩を受け取った。

 ルパと共に高台に上がった男たちの役割はルパの支援だった。ルパの筋力では弩を放つことが出来ても、装填は出来なかった。

 装填手を得たルパは無慈悲にリテリューン皇国軍を討ち取る。特にルパは部隊長と思われる兵士を次々に討ち取った。その為、リテリューン皇国軍の指揮系統はボロボロになった。

 ルパの奮戦で中央の戦いはガンルレック要塞軍が有利になっていった。

 ガンルレック要塞軍右翼ではすでにアーサーンが戦闘に参加し、倍以上のリテリューン皇国軍を押し返していた。

「まったくフィラック様もゼピュノーラ殿も私に全て押し付けて…………帰ってきたら、文句の一つでも言ってやろう」

 この日の序盤、ガンルレック要塞軍はリテリューン皇国軍を圧倒した。

「このまま押し切れるのではないでしょうか?」

 ハウセンが熱のこもった口調で言った。

 クラナは冷静に首を横に振った。

「それは無理でしょう。今の優勢は意表を突いたにすぎません。ルルハルトさんが対応できないとは思いません。これ以上、戦線を拡大してしまうとこちらが兵力分散の状態になってしまいます。特に左翼は無秩序に戦いを展開し過ぎました。一度、全体の足並みを揃える必要があります」

 クラナの言葉でハウセンは自分が浮かれていたことに気が付いた。

 冷水を浴びたような気分になり、冷静になった。

「ダステイ中隊長に連絡してください。無秩序な攻勢を止めて、部隊の再編成を行うようにと」

 クラナの指示に対して、ハウセンが「ですが、敵がそれを許してくれるでしょうか?」と指摘する。

「大丈夫です。今日は出し惜しみなしで行きますから」

 クラナは「ある部隊」に出撃命令を下した。

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