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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
135/184

ガンルレック要塞攻防戦六日目②~後手、そして看破~

今回の連続投稿で『雄飛編』を完結させます。

『雄飛編』完結まで毎日23:00~24:00の間に投稿する予定です。

体調・仕事の関係で投稿が滞ることがあるかもしれませんが、ご了承ください。

今後もよろしくお願い致します。

 ルルハルトの本陣。

「右翼の味方は敵を押しています」

 兵士の声は明るかった。

「押しているか。ということは突破はしていないか」

 対して、ルルハルトの声は冷たかった。

「不満ですかな?」

 ベルリューネが言う。

「右翼の戦闘が始まってからすでに二時間、これで落とせないということは相手が対応したということだろう。少しはやるらしい。だが、所詮はそれまでだ」

 リテリューン皇国軍の猛攻は止まない。

 昼前には中央の五つある防衛線の内、三つまで突破され、シャマタル独立同盟軍の右翼は四つある防衛線の内、二つを突破された。

 シャマタル独立同盟の左翼は最終防衛線で踏み留まっている状態だ。

 今のままでは延命に過ぎない。いずれは各戦線が崩壊するのは明白だった。

「グリューンさんに伝令です」

 昼過ぎ、ここまで防衛に徹していたクラナが事態を好転させる為、攻勢に出る。

 最精鋭のグリューン隊を出撃させた。狙いはリテリューン皇国軍の中央軍だった。

 街の中の裏道を利用してリテリューン皇国軍の左翼側面を強襲し、そのままリテリューン皇国軍の中央まで攻め込む策である。

「ネジエニグ司令官は我らに重大な役割を任せてくれたぞ! 恥を晒すなよ!」

 グリューンはそう言って、先陣を切り、敵陣に飛び込んだ。

「こいつら、西門を守っていた奴らだ!」

 リテリューン皇国の兵士が悲鳴を上げる。

 これまでの戦闘でグリューン隊の強さを理解していた。リテリューン皇国軍左翼は撤退する。

「我々はこのまま敵の中央軍を叩くぞ!」

 勢いに乗るグリューン隊はそのまま中央の戦いに参戦する。

 市街地での乱戦は個人の練度が高いグリューン隊の長所を遺憾なく、発揮した。

 戦局は完全にひっくり返った………………ように見えた。

「どういうことだ?」

 気づくとグリューン隊にはリテリューン皇国軍に囲まれていた。

 突破したはずのリテリューン皇国軍の左翼が後背から攻めかかる。

 そして、中央には…………

「驚きか、グリューン殿」

 ベルリューネが現れる。率いる連隊は弓や投石の遠距離攻撃に特化した部隊だった。

 ルルハルトはクラナがグリューン隊を切り札に使うことを読んでいた。

 それでもグリューンには分からないことがあった。

「なぜ、ここまで迅速に動けた?」

「簡単さ。俺たちも裏道を使わせてもらった」

「…………! なぜ、知っている?」

「うちの大将が化け物ってことだろ」

 ルルハルトは以前からガンルレック要塞へ旅商人に変装させた手下を送り込んでいた。その為、要塞内の構造を理解していた。ガンルレック要塞は本来、敵国と隣接する要塞でない。その為、警護する兵士たちの警戒心を薄かった。要塞内部の道を知ることは容易だった。ルルハルトはシュタットが構想していた防衛線を見抜き、さらにクラナが考えていた起死回生の策を逆に利用して、攻めの切り札であるグリューン隊の殲滅しようとした。

「くっ…………!」

「いいね、やっとあんたの面白い顔が見れた。弓隊構えろ」

「どうした? もう一騎打ちはしないのか!?」

「悪いな、その挑発には乗らない。うちの大将に止められているんだよ。一騎打ちをすれば、勝っても俺の首が飛ぶ。討て」

 弓隊の一斉掃射がグリューン隊に襲い掛かる。

 グリューン隊が孤立したことはすぐにクラナの元にも知らされた。

「分かりました。グリューンさんが簡単に負けるはずがありません。すぐに中央から救援を…………じゃなくて!」

 クラナはバンッ! と机をたたく。自分が冷静でいないことに気付く。

 中央に余剰戦力など残っていない。

「わ、私が出ます!」

 クラナは兜を被り、剣を取った。その軽率な行動に兵士が驚く。

 その瞬間、ルパがクラナを蹴り飛ばした。

「何をするんですか!?」

「何を考えているんですか!?」

 ルパが怒鳴る。

「クラナ・ネジエニグ司令官! あなたがここを離れたら、誰が指揮を執るんですか!」

「でも、今、動かなかったら、グリューンさんの隊が壊滅します」

「そんなことをさせませんよ、あの人が」

「あの人? …………あっ!」

「司令官が狼狽えたら、駄目でしょ。しっかりしてください」

 ルパは打って変わり、優しい声で言う。

「ごめんなさい…………」

「みっともない姿を見せないでください。兵士の皆さんが不安がります」

 ルパに言われて、クラナは少しだけ冷静になった。

「各戦線、防衛に徹してください」

 すでに夕刻、今日の内に負けることはないとクラナは判断する。

 そして、それは正しかった。

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