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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
134/184

ガンルレック要塞攻防戦六日目①~クラナ・ネジエニグ対ルルハルト・ラングラム~

 六日目は朝から騒がしかった。

 リテリューン皇国軍の総攻撃の鐘がなる。

 ルルハルトは今日でこの戦いを終わらせるつもりだった

 クラナはシャマタル独立同盟軍を防衛に主戦力を当てた。左翼にはダステイ中隊長と六百の兵士、右翼にはグリラフ中隊長と六百の兵士を配置した。共に元シャマタル独立同盟第十連隊のユーフ連隊長の元で活躍した中隊長である。中央の七百の兵士はクラナが直接指揮をする。

 その他に予備兵力としてアーサーン隊とグリューン隊を配置した。

 シャマタル独立同盟本隊・アーサーン隊・グリューン隊を含めて総兵力三千五百弱。

 対するリテリューン皇国軍は総兵力三万。

 十倍近くの兵力差があった。

 強みがあるとしたら、シュタットの考えた防衛線、地の利だけである。

 市街地戦の為に急造ではあるが、柵を設置した。

 弓隊は高台を抑えているので、有利に戦える。

 クラナは深呼吸をし、なるべく気持ちを落ち着かせる。

 十分に戦えると思った。

「緊急報告! 左翼の守備兵が第二防衛線まで突破されました!!」

 しかし、現実はそうならなかった

「!?」

 クラナはすぐに声が出せなかった。

 リテリューン皇国の侵攻速度が速すぎた。

「馬鹿な防衛の為の柵があったはず!」

 ハウセンが怒鳴る。

「破壊された模様です!」

「なんでそんな速度で…………あっ!」

 クラナは突破された箇所を見る。そこは要塞内で唯一、広い直線の道が敷かれている箇所だった。要塞内での戦い、歩兵同士での戦いを想定した防衛線は機動力に対応できなかった。

「たぶん牛を突進させて、柵を破壊して、その後に騎兵を…………いえ、そんな起きてしまったことを考えている場合じゃありません。相手が騎兵を使っているなら、左翼の守備兵は東第四地点まで後退させます」

 クラナが指定した場所は道が狭くなり、道が複雑に入り組んでいる場所だった。

「そうすれば、敵の騎兵は機能しなくなります。すぐにダステイ中隊長に連絡してください」

「司令官代理、そんなことをすれば、敵が喉元まで来ますよ!」

 クラナの言葉にハウセンは異を唱える。 

 クラナの指示した『東第四地点』とは昨日考えた防衛線の内、左翼の最終防衛地点だった。

「分かっています。しかし、そうしないと今のままでは兵力が分散し、各個撃破をされてしまいます。今は一瞬の決断が命取りです」

 クラナは即答する。ハウセンはそれ以上何も言えなかった。

 自分より若く、女であるクラナに気圧された。

 ハウセンはクラナのことをあまり高く評価していなかった。周りに優秀な人材が多い為、英雄になれたと思っていた。

 しかし、今のクラナは不測の事態に瞬時に反応して見せた。

(これが凡人に出来ることだろうか?)

 ハウセンの内側でクラナの印象が変わり始める。

 シュタットの言っていた『英雄』について考えたくなる。

「分かりました。伝令には私が行きましょう。要塞内の地理には詳しいです」

 しかし、今はそんな時間はない。

 この戦いが終わった時、クラナ・ネジエニグと自分自身が生き残っていたら、『英雄』を見ることができるかもしれない。

 だから、ハウセンは自分に出来ることをやる。

「お願いします」

 ハウセンはクラナ対し、少しだけ『英雄』の素質を予感した。

「今後は知らずとも今はあなたが必要だ」

 ハウセンは左翼に急行する。

 ダステイ中隊長に会うことができ、クラナの言葉を知らせた。

「分かった。我らは防衛の最終地点まで退こう」

 ダステイは疑うことなく、撤退を決めた。

 左翼は最終防衛線に兵を再集結し、リテリューン皇国軍を迎え撃つ。この迎撃は成功し、ガンルレック要塞軍の崩壊は辛うじて防がれた。

 しかし、全体の崩壊の危機が去ったわけではない。

 クラナとルルハルトが総指揮を執る戦いは始まったばかりだった。

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