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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
130/184

ガンルレック要塞攻防戦五日目①~ルルハルトの総攻撃~

連載を再開致します。

今回の連続投稿で『雄飛編』を完結させます。

『雄飛編』完結まで毎日23:00~24:00の間に投稿する予定です。

体調・仕事の関係で投稿が滞ることがあるかもしれませんが、ご了承ください。

今後もよろしくお願い致します。

 四日目の夜、ルルハルト陣営。

「明日、ガンルレック要塞を攻略する」

 軍議でルルハルトは宣言する。

 ルルハルトは少しだけ工夫を凝らした力攻めを考えていた。

「作戦を教えて頂いてもよろしいですか?」

 部隊長の男が聞く。

「まずは普通に攻めかかれ。お前たちはそれでいい」

 ルルハルトが作戦を誰かに言うことはない。誰も信用していなかった。

「シックルフォール将軍を戻した方が良いんじゃないんですかい?」

 ベルリューネが言う。

 ルルハルトはシックルフォールを索敵に回していた。

 その為、軍全体の指揮能力は低下していた。

「あの男、どこか引っかかるところがある」

「あんたは誰にでも引っかかるところがあるでしょう」

「それに逃げた娘、それは恐らくゼピュノーラだ」

 ルルハルトはベルリューネの言葉に反応しなかった。

「生きているなら、必ず帰ってくるだろう。援軍が来ると知らされては面倒だ。帰ってきたところをシックルフォールが捕えたら、奴を信頼するとしよう」

 

 

 五日目、リテリューン皇国軍が動く。

 東西南北、全ての方向で総攻撃を告げる笛が鳴り響いた。

 南門ではシュタットが迎え撃つ為に兵士を障壁の上に登らせた。

「さて、何を仕掛けてくる。ラングラム」

 シュタットは高台から遠くに見えるルルハルトの本陣に視線を送った。

 西門ではすでに交戦状態に入った。

「グリューン様」

「分かっている。敵の雰囲気が変わった。今日は死線の上に立つことになるだろう。カタイン近衛隊として醜態を晒すなよ」

「我らは僅か三百。しかし、一人一人、一騎当千の強者だと自負しています。ならば、この西門を守るのは三十万の大軍となりましょう。リテリューン皇国の弱兵ごとき全て返り討ちにして見せましょう」

「頼もしい言葉だ。さぁ、戦くぞ!」

 グリューン隊は言葉通りの強さで押し寄せるリテリューン皇国軍を次々に倒していく。

 東門も迎撃の準備を急いでいた。

「まったく体調が戻らないうちにこうなるとはな」

 アーサーンは苦笑する。

「我らが突破されれば、他の三方面も崩壊する。これ以上、醜態を晒すな。全員、死力を尽くせ!」

 アーサーンの言葉にシャマタル兵もルーゴン兵も『おう!』と答えた。

 そして、北門でも…………

「さて、昨日までとは違うみたいですね」

 ルパが言う。

「総攻撃の威力は知っているつもりです」

 ファイーズ要塞攻防戦の時、イムレッヤ帝国軍の総攻撃はファイーズ要塞の一部を破壊して、一時的だが要塞内に帝国軍の侵入を許してしまった。ファイーズ要塞のような難攻不落の要塞でも力攻めをされれば、多少は揺らぐ。

 ファイーズ要塞に比べれば、ガンルレック要塞の防衛能力は格段に落ちる。

 クラナは深呼吸をした。

「リテリューン皇国軍は今日、勝負に出ます。それは焦っているからです。私たちが持ち堪えれば、必ずカタイン将軍が来援します。そうすれば、私たちの勝利です!」

 クラナの言葉に兵士たちは声を上げる。

「ルパちゃん、私はこんなところで死ぬわけにはいかないんです。まだやりたいことがたくさんあります。毎日を虚無に過ごしていた私にやりたいことが出来たんですよ。凄くないですか?」

「気にいらないのはクラナ様をそこまで動かしたのがリョウさんだということです。この際だから聞いておきますけど、クラナ様は私に遠慮していたんですか? 距離を取っていたんですか?」

「そんなことはありません。たぶんルパちゃんには隙が無かったから、私の心が動かなかったのだと思います」

「隙が無い、ですか?」

「はい。たぶん、ルパちゃんのことを凄いと思っていました。で、私には同じことが出来ないと思ってしまいました。でも、リョウさんには隙があったんです。リョウさんの隙を見た時にこの人を支えたい、という気持ちになりました。私はリョウさんの弱さに惹かれたんだと思います」

「駄目な男に惚れた世間知らずのお嬢様ですね」

「ルパちゃん、私、結構いい感じのこと言っていたと思うんですけど!? そんな返しは酷くなんですか!?」

「気にしないでください。ただの嫉妬ですよ」

 ルパは少しムスッと答えた。

「さぁ、敵が来ますよ」

 ルパは弩を握る。

 すぐに北門も戦闘状態に入った。



 ルルハルト陣営。

「敵も中々やりますな」

 ベルリューネが言う。

「しかもゼピュノーラの小娘を取り逃がした。直にカタインが反転してくる」

「その前に要塞は落ちる」

 ルルハルトは平坦な口調で言う。

「大した自信ですな。私に策を教えて頂けませんか?」

「いいだろう。ベルリューネ、お前の力が必要だ。南門から侵入し、敵の司令官を討ち取れ」

 ルルハルトはごく自然に言うが、ベルリューネは難しい表情をした。

「南門? そこは一番、強固なところでしょう? 無茶を言わないでください」

「無理ではない。私の言うとおりにしろ。そうすれば、この戦いの一番手柄をお前にくれてやる」

 ベルリューネは尚も不審そうにルルハルトを見る。

 この男は多くの味方を駒として使い捨てにしてきた。ついに自分も使い捨てられるのか、考えてしまう。 

 それなら逃げるぞ、とベルリューネが内心で呟く。

「心配するな。お前はまだ使える。使い捨てにしたりはしない」

 ルルハルトはベルリューネの心情を的確に読み、告げた。ベルリューネはルルハルトと長い付き合いになるが、全てを見透かす言葉には今でもゾッとする。

「なら、詳しい作戦を聞かせてください」

「良いだろう…………」

 ルルハルトがベルリューネに作戦を伝えると、彼は驚き、次に笑った。

「そいつは面白い」

 ルルハルトは動き出す。

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