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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
立志編
13/184

ネーカ平原の決戦

 ユリアーナとローランが決死の防衛戦を始めた同日、シャマタル独立同盟の命運を決める決戦も始まった。

 シャマタル独立同盟軍はネーカ平原にある丘に布陣していた。

 そのため、イムレッヤ帝国軍は平地へ布陣するしか無かった。

「有利な場所は取られたか。まぁ、いい。全軍に命令せよ。防御に徹する。こちらからは攻めるな、と」

 これはイムニアにしては消極的すぎる選択だった。

 イムニアはシャマタル独立同盟軍の奇策を恐れていた。

 しかし、消極的な選択はすぐに裏目に出る。

「報告します! 敵に動きがありました。一斉に丘を下っております!」

「なんだと?」

 シャマタル独立同盟軍は真っ正面から小細工無しの力攻めを選択した。

「報告! 敵の攻勢は凄まじくすでに第一・二陣が壊走!!」

 その後もシャマタル独立同盟の猛攻は続く。

 イムニアは当初の予定通りの防衛を徹底した。この時、イムニアは防衛に固執し、柔軟性を欠いてしまった。結果的にシャマタル独立同盟の一方的な蹂躙を許してしまう。

 戦争の天才であるイムニアが後手に回ったのには、明確な理由があった。

「閣下、顔色が優れないようですが?」

 イムニアの顔が不健康に青白くなっているのに気付き、参謀の一人が指摘する。

 実際、この時にイムニアは頭痛、吐き気、腹痛などに悩まされていた。

「問題ない」とは答えたが、イムニアの思考は低下していた。

シャマタル独立同盟軍、本陣。

「報告します。敵の第六陣まで壊滅させました」

 ルピンが報告する。

「そうかい。ここまでは順調だね」

「リョウさん、このまま勢いに乗って突破が可能なのではありませんか?」

 クラナが言う。

 リョウは首を横に振った。

「いや、今の状態は意表を突いたに過ぎないよ。それにイムニアはこちらの攻勢に耐えるためにとても厚い防御陣を用意している。第六陣まで突き崩したのに未だに敵の本陣が見えないのがその証拠さ。ある程度、引っかき回したら今日は戦線を収縮するよ」

 リョウはイムニアの体調不良を知るはずが無い。そして、知っていたところでリョウは同じ選択をしていただろう。今日の目的はイムレッヤ帝国軍を掻き回すことであって、決戦を挑むことでは無かったからだ。

「丘は守らなくて良いのですか?」

「いいんだよ、クラナ」

「でも、そんなことをすれば、取られてしまいます」

「うん、そうだろうね」

「挟み撃ちになりませんか?」

「実はね、クラナ…………」

 リョウはある仕掛けをクラナに明かした。

 クラナは驚いた。

「これを知っているのはルピンと君だけだ。あまり多くの人に言って、仕掛けがばれたらまずいからね」

「は、はい。私も絶対に言いません」

 クラナの表情が強張る。

「敵の七陣も突破しました」

 兵士から報告が入る。

「このまま引っかき回すよ。グリフィードに連絡をしてくれ。白獅子隊を出すよ」

 この日、シャマタル独立同盟軍は良く戦った。日が落ちる頃までに十三陣まで突き崩した。

「何だ、この様は!」

 イムニアは怒り狂う。その対象は自分自身だった。

「リユベック、私は間違っていた」

「閣下」

「私は常に仕掛ける側だった。受けに回ったことなど無かった。今回、私は防御に徹していれば勝てるなどと思ってしまった! これを怠惰というのだ!!」

「落ち着いてください。戦は心を乱した方が負けます」

 リユベックは水を差し出した。

 イムニアはそれを一気に飲み干す。そして、大きく息を吸った。表情から怒りが消える。

 イムニアは突然、目眩を起こし、倒れそうになる。

「閣下!」

 リユベックが支える。

「大丈夫だ」

「ですが、顔色が悪いです。お疲れなのでは?」

「心配ない。この体は月に一度こうなるのだ」

「あっ…………申し訳ありません」

 リユベックは気まずそうに視線を逸らした。

「気にするな。今更だ。だが、おかげで頭も回らない。リユベック、何か良い策は無いか?」

 イムニアは自身の体の不調を自覚すると決まって、リユベックを頼る。これは今回だけでは無い。士官学校時代に同室になってから現在までの信頼関係がそうさせる。

 リユベックは地図を広げた。

「敵が短期決戦に出ているのは明白です。明日も突進してくるでしょう。しかし、その代償に彼らは有利な丘を手放しました」

 今日の開戦前まで、シャマタル独立同盟軍が布陣していた丘を指差す。

「ここは今がら空きです。夜の間に迂回し、敵の背後に回り、そして丘を奪取する。私の騎兵隊なら可能です」

「挟撃作戦か?」

「そうです。如何でしょう」

 イムニアは即答しなかった。

「止めておきますか?」

「いいや、考えてみれば攻勢を主としてきた私が最初から守りに入るなど愚策だったのだ。お前の策で行こう」


 シャマタル独立同盟軍、本陣。

「ここまでは僕らが圧倒しているね。さて、イムニアがこの状況で我慢できるとは思えない」

「そのことですが、敵陣から出ている煙や篝火の数が多い気がします」

 ルピンが報告する。

「恐らく兵の減少がばれないようにするためだね。僕らの後背へ回り込んで、挟み撃ちにするつもりだ。別働隊の指揮官は恐らくリユベック。あの騎兵隊に後背を突かれたら、僕らに勝ち目は無い」

「なら一度、丘まで撤退しますか?」

 ウィッシャーが提案する。

「僕らにそんな時間はありません。むしろこれを好機と考えるべきだと思っています」

「と言いますと?」

「敵の最精鋭がイムニアの側から離れました。一つの戦術が当たれば、僕らは勝てると思います。フィラックさん、頼みたいことがあるのですが良いですか?」

「私に出来ることなら何でも致しましょう」

 リョウは今日のこれからの各員の行動を説明した。

「なるほど、分かりました」

「明日は朝から仕掛けます。明日で全てを終わらせます。皆さん、抜かりのないように」

 リョウは、イムニアの思惑を理解した上で守るのではなく、攻めることを選択した。

「あなたらしくない攻撃的な戦術ですね」

 軍議が終わっても立ち上がらなかったリョウに、ルピンは紅茶を差し入れする。

「ありがとう…………無茶かな?」

「私には分かりません。この戦争がすでに私の理解の範疇を超えていますから。でもリョウさんがやることなら成功する気がします」

「君らしくもない言い方だね」

「そうですか? 私はあなたのことを心から信頼していますよ」

「過大評価だね」

とリョウは苦笑した。

 ルピンは一度、大きく息を吸った。こんなに言いにくい言葉は無いと思った。

「…………疲れているところ悪いのですが、この後に時間を作って貰えませんか?」

「別に構わないけど、今じゃ駄目なの?」

「ええ、今じゃ駄目です。私じゃ駄目です」

「それはどういうこと?」

 ルピンは回答せずに立ち去った。

 ルピンは探す。

 クラナを探す。



「ネジエニグ嬢、ちょっとよろしいですか?」

「ルピンさん…………一人ですか?」

「ええ、一人です。リョウさんはいませんよ」

「わ、私は別に…………」

「あなたは本当に嘘が下手ですね。まぁ、それはあなたの良いところですけど…………リョウさんから聞きました。あなたは私たちと、リョウさんと一緒に行きたいと言ったそうですね」

「はい。…………駄目ですか?」

「別にいいですよ。それが本心ならですが」

「それはどういう意味ですか?」

「そのままですよ。あなた、本当に大陸を旅したいなんて思っているのですか?」

「私は外の世界を見たくて、屋敷から出ました。ルピンさんはすぐ、それに気付いたじゃありませんか?」

「ええ、あの時のあなたは確かにそれが本心でした。ですが、今は違うように思います」

 ルピンはじっとクラナを見据える。

「リョウさんと別れたくないのでしょう?」

「……………………」

「この戦いが終わったら、リョウさんはあなたから離れてしまう。あなたはリョウさんといる日々を失いたくない。だから、それ以外の全てを投げ捨て、リョウさんについて行こうと思った。そうですね?」

 クラナの顔が赤くなる。

「ルピンさんに嘘を言っても無駄ですよね。笑いますか? 馬鹿にしますか? それとも世間知らずの子供の考えだと諭しますか?」

 クラナは「退きません」と口では言わなかったが、言葉に、瞳に、態度に押さえ切れていない感情が漏れていた。

「なら、もっと簡単な方法があるじゃ無いですか」

 ルピンはクラナの言葉に対し、何も言わなかった。笑う気は無かった。馬鹿にできるわけが無かった。子供の考えなどと大人ぶることも出来なかった。

「ここにいれば、あなたは何不自由なく暮らせます。人一人くらい養えるでしょう?」

「え!?」

 クラナは間抜けな声を出した。

「そ、それはリョウさんを使用人として雇う、と言うことですか?」

「使用人、もしそれでもリョウさんは文句を言わないでしょう。役立つかは別として。しかし、もっと理想的な立場があるんじゃ無いんですか?」

 ルピンはクラナの一番深い所にある願望を掴む。

「え、でも、それは…………」

「男のために全てを投げ捨てようと思っていた女が何を躊躇うんですか?」

「だって、リョウさんの意思だってありますし…………」

「大丈夫です。成功します。私が保証します。それにこれはリョウさんのためでもあるのです。リョウさんは参謀としての才能に恵まれています。ですが、必ずしもその才能を生かしたいと思っているわけでは無いのです。あなたなら分かるでしょう?」

「はい…………」

「この戦争が終われば、平和が訪れます。それは短時間かもしれませんが、戦争よりはマシです。リョウさんに平和な、戦いから離れた時間を過ごして欲しいのです。お願いです。リョウさんを救って下さい」

 ルピンは頭を下げた。

「ルピンさん、頭を上げて下さい! …………分かりました。これからリョウさんに会ってきます。けどその前に一つ、お願いをしても良いですか?」

「何でしょう?」

「化粧をお願いしても良いですか?」

「化粧ですか?」

「だって、これから大事なことを伝えるのにこのままじゃ…………」

 そのままで十分、とルピンは思ったが、本人の希望を叶えることを優先した。

 ルピンはクラナに最低限の化粧をする。

「あ、あの、もっとした方が…………」

「それ以上はありませんよ。明日は決戦です。あまり夜遅くなると響きますよ。早く行きなさい」

 ルピンはクラナの背中を押す。

 クラナは振り返り、お辞儀をすると走ってリョウの元へ向かった。

「まったく、こういうのをリョウさんの世界の言葉で『敵に塩を送る』って言うんですよね。…………いいえ、私は敵になる度胸も、資格も無いですね」

 ルピンは夜空を見た。星々だけがルピンの表情を確認する。



「リョウさん、話があります!」

 クラナは余裕の無い言葉で切り出す。

「どうしたんだい? ずいぶんと切羽詰まっているみたいだね」

「明日は決戦ですよね」

「そうだね。これ以上長引くとユリアーナたちが持たないよ。僕たちが勝つには明日、仕掛けるしか無い。不安なのは分かるよ。でも、もっと力を抜いて」

 クラナは首を横に振った。

「違うのです。私がここまで気を張っているのは、戦いのことじゃありません。リョウさん、決戦の前日にこんなことを言うのは非常識だと思います。ですが言わないと後悔すると思います。…………言っても後悔するかもしれませんが…………」

「どういうことだい? 言ってみなよ。殺し合い以上に非常識なことなんてそんなに無いから」

「リョウさん、この戦いが終わってもシャマタルへ残ってくれませんか?」

「…………クラナと入れ違いでかい?」

「えっ!?」

「だってクラナは旅がしたんでしょ?」

 しまった、とクラナは思った。

 結論を言うのに必死で踏むべき過程を忘れていた。

「えっと、違います。私も残ります。私は別に旅をしたかった訳じゃ無いのです」

「?」

「この戦いが終わったら、リョウさんはまたどこかへ行ってしまうと思いました。それが嫌でした。だから、私も行くと言いました。私はリョウさんと一緒に居たかっただけなのです」

「え? それってつまり…………大丈夫? 僕、誤解してない? 自惚れてない!?」

 素で焦って、顔を赤くするリョウを見て、クラナはなんだか得した気分になる。

「言い方が下手ですいません。リョウさんは誤解していません。リョウさん、好きです。大好きです。もし叶うなら、私の一生を貰って下さい」

 クラナは真っ赤になった。自分の心臓の音がとても大きいと思った。一瞬の沈黙が永遠に思えた。

 リョウがクラナを抱きしめる。両腕を背中に回し、クラナは自由を奪われた。

「クラナ、窮地で結ばれた男女の関係は長続きしないらしいよ」

 リョウの言葉に、クラナは暗くなる。

「それが本当か。二人で確かめようか」

「えっ!?」

 クラナはリョウの顔を見ようとするが、リョウはクラナを強く抱きしめて離さなかった。

「ごめん、クラナ。もうちょっとこのままで居させて。今のだらしない顔を見られたくないんだ」

「…………はい」

 クラナの体から力が抜ける。リョウに抱きしめられていなければ、地面に伏せてしまうくらい脱力した。

 リョウの体温が、匂いが、鼓動が伝わる。クラナは自分が手に入れたものを実感していた。



「ルピン、少し飲まないか?」

「明日は決戦です。そんな気にはなれませんよ」

 ルピンは、グリフィードと一緒にいた。

「そんなことを言うな。一緒に酒を飲めるのは今日が最後かもしれんぞ」

「縁起でも無い。…………一杯だけ頂きます」

 ルピンは杯を受け取った。

「あの二人はうまくやっているだろうか?」

「大丈夫ですよ。ユリアーナさんとローランさんなら…………」

「そっちの二人じゃ無いさ。それくらい分かっているのだろ?」

 グリフィードは、ルピンの杯に酒を注いだ。

「さぁ、なんのことやら」

 ルピンは、酒を一気に飲み干した。

「分かっているから、そんならしくない飲み方をするのだろ? お前はそれで良かったのか?」

「リョウさんは私たちと一緒に居ても幸せにはなれません。だからこうした方が…………」

「それはリョウのことであってお前のことじゃ無い。お前のことを聞いているんだ」

「私は…………悔しいですよ。今までリョウさんの隣には私がいた。リョウさんは私を頼ってくれた。それを突然現れた小娘なんかに取られたんですから」

 一杯だけ、と言っていたルピンは、二杯目を飲み干す。

「でも、納得もしました。ネジエニグ嬢はまっすぐです。それにリョウさんを好きな気持ちに嘘はありません。ランオ平原の戦いの時、あの子は自分が犠牲になっても良いから、リョウさんを助けたいと言っていました」

「ほう、それは初耳だ」

「他言無用でお願いします。ネジエニグ嬢ならリョウさんを任せられる。そう思いました。だから、私は退きます。戦わずして負けます。だから、これ以上私を攻め立てないで下さい」

「攻めたつもりは無かったが、すまなかったな。俺も興味本位で動き過ぎた」

 いつの間にかグリフィードの持ってきた酒瓶は空になっていた。

「ところでこの戦いが終わったら、どうしますか?」

「俺たちの日常へ戻るだけだ」

「ですが、今まで通りには行かないでしょう。私たちはシャマタルへ関わりすぎました。これは一つの提案なのですが、この地に留まるのも良いと思います」

「土地をもらうのか?」

「そうです。荒れ地でも良いから、土地を貰います。土地があれば、こんな生活から抜け出せるでしょう」

「それで傭兵家業はお終いか」

「元々、成り行きで始まったことです。あと、私は暇を貰いますよ。私は自分の本道へ戻るつもりです」

「本道?」

「ヤハランの過去を知る旅に出るつもりです」

「唐突だな」

「前から考えていました。それが私の人生の目的ですから。なぜ、私の一族は皆殺しになったのか。ローエス神国の何を知ったのか。私は歴史家としてそれを知りたいのです」

「当てはあるのか?」

「始まりの洞窟、と言う場所を知っていますか?」

「あまり俺を馬鹿にするな。大陸教徒でなくともそれくらいは知っている。聖地の一つだろ?」

「私の一族はそこに良く足を運んでいたそうです」

「巡礼じゃ無いのか?」

「いいえ、何かそれ以外に目的があったようなのです。あそこにはローエス神国の秘密がある。私はそう結論づけました」

「お前は自分の一族のことが知りたいのか? それともローエス神国の闇を暴きたいのか?」

「その二つは同義ですね。何しろ私の一族はローエス神国でも名のある学者の家系でしたから」

「なるほど。ならそれまでに俺も大陸教について調べておかなくてはな」

「まさか、一緒に行くつもりですか?」

「もちろんだ。お前が一人でできることか?」

「あまり私を馬鹿にしないで下さい」

「馬鹿にはしてないさ。お前は頭が切れる。だが、ローエス神国へ入るんだ。万が一、荒事になった時、切り抜ける戦力が必要だろ?」

「勝手にしてください」

 ルピンは拒絶しなかった。



 その日の夜、イムニアは夢を見ていた。

「君は絶対に私の秘密を皆にばらす! もう私はお終いだ!」

「大丈夫、僕は絶対に君のことを誰にも話さない。安心して」

 金髪と銀髪の少年はキリの無い問答をやっている。

「なら君の秘密を教えろ。私の秘密に釣り合うくらいの秘密を、そうしたら信用してやる!」

 金髪の少年は高圧的だった。

 銀髪の少年は怒らなかった。それどころか、純粋で、無垢な金髪の少年を美しいと思った。

「そこまで言うなら、教えてあげるよ。僕はね…………」

 銀髪の少年は耳打ちした。

「そんなことが…………嘘だ」

「本当だ。今は確かめようがないけど、本当のことだ。もし、僕が君のことを話したら、今のことを言えばいい。そうすれば、僕はお終いだから。それでお互いの一番まずい秘密を知ったことになるかな?」

 銀髪の少年は笑った。

「なぁ、えっと…………」

「同室の僕の名前も知らなかったのかい? リユベック、今はリユベック・ジーラーって言うんだ」

「なら私は君のことをリユベックと呼ぶ。私は…………」

「士官学校の学年主席で、同部屋なら名前くらい知っているよ。イムニア・フォデュースでしょ。孤高の天才なんて呼ばれている」

「そうなのか? だが、これから孤高じゃない。リユベック、君は私が元帥になりたいと言ったら笑うか?」

「イムニア、君は僕が皇帝になりたいと言ったら笑うかい?」

 二人は一瞬無言になり、そして笑い出した。

「笑うさ。皇帝だって!? 馬鹿げている」

「笑うさ。元帥!? フォデュースなんて聞いたこともない家柄だ」

 イムニアは真剣な顔になった。

「馬鹿げた夢はお互い様だ。二人で目指さないか?」

「君となら出来る気がする」

「私もそんな気がしてきた」

 それはイムニアとリユベックが誓ったことだった。二人も今はその旅の途中にいる。

「朝か…………」

 まだ暗かった。

 不調だった体は少しだけマシになっていた。

 なぜ起きたか、疑問に思う。

 嫌な予感がした。

「閣下!?」

「そのままで良い」

 イムニアは物見櫓に上る。シャマタル独立同盟軍の陣の方を睨む。闇で何も見えない。

 太陽の弱い光が戦場を僅かに照らす。日の出はまだだった。

 イムニアは闇の中で動く軍勢を確認した。

「ハハ、ハハハハハハハ!」

 イムニアは狂ったように笑った。

 物見櫓にいた兵士はキョトンとする。意味が分からなかった。

「敵襲だ! 鐘を鳴らせ!!」

「えっ? はい!」

 兵士は言われた通りに鐘を鳴らす。

 決戦の二日目は、慌ただしく始まった。



「気付くのが早すぎますね。読まれていましたか?」

 ルピンが言う。

「たぶん違うよ。読んでいたなら、対応が遅すぎる。たぶんあの金髪の天才は肌で、感覚で理解したんだ」

「報告します! グリフィード殿が交戦状態に入りました!」

「如何します?」

 ウィッシャーが尋ねる。

「戦線を上げましょう。今日のイムニアは挟撃作戦からの包囲殲滅戦を計画していたはずです。なら、軍勢を横に伸ばしている。昨日ほどの深みと厚みはないでしょう」

 戦いはシャマタル独立同盟軍優勢で日の出を迎えた。



「前線の指揮はアンスーバに任せる。あいつは優秀な男だ。前線が維持している間に左右に展開した軍を戻せ。そうすれば、敵を半包囲できる。敵の後方にはリユベックもいる。最後に勝つのは我々だ」

「敵に動きあり! こちらの右翼に攻撃が集中しています!」

「何だと!? 奴らはこちらの本陣に向かってこないのか?」

 イムニアの思考が止まった。思惑が分からなかった。

「右翼を見捨てるわけにもいかない。アンスーバには救援に行くように指示を。左翼には敵の側面を突かせろ」

 すでに戦闘開始から一時間が過ぎていた。

 この時点でやっと異変に気付いた者がいた。丘を占領するために動いていたリユベックである。

「何ですって? それは本当ですか!?」

「間違いないようです。すでに両軍は戦闘状態にあり、お味方は劣勢とのこと!」

「しまった。完全に裏をかかれた。これより急ぎ、シャマタルを急襲する。私に続きなさい!」

 リユベックの決断は早かった。

 自分が挟撃を提案したためにこのような事態を招いてしまった。自責の念がある。

 リユベックの動きを、すぐにシャマタル独立同盟軍も把握する。

「そうか、やっぱりそう来たか。じゃあ、例の作戦で。僕らはイムニアに集中するよ。そして、フィラックさんに連絡を。ここからが最終局面だ」



 リユベック騎兵隊は全速力で進軍していた。

 異変が起きる。

 馬が足を滑らせたのだ。

 落馬した兵士が原因に気付き、青ざめた。

「あ、油だ! 油が撒かれている!」

 シャマタル独立同盟軍から火矢が打ち込まれた。

 乾燥していた大地と油で火は一気に燃え広がった。

 シャマタル独立同盟軍とリユベック騎兵隊の間に巨大な火の壁が完成した。

「駄目です。抜け目はありません。これを避けるためには大きく迂回するしか…………」

「そんな時間はありません」

「え!?」

「続ける者だけ私の後に続きなさい!」

 リユベックは火の中に飛び込んだ。



「報告します! ジーラー将軍は敵の策により来援が困難です」

「やってくれる。なら我々だけでシャマタル独立同盟軍を打倒してくれよう」

 戦況は変化し、イムレッヤ帝国軍の右翼に攻め込んだシャマタル独立同盟軍は、それを打ち破ることが出来ずに戦線は硬直していた。その間にイムレッヤ帝国軍の左翼はシャマタル独立同盟軍の側面を脅かしていた。

 この攻撃が成功すれば、戦局はイムレッヤ帝国軍に傾くはずだった。

「全てはリョウ殿の思惑通りか。恐ろしい青年だ。皆の者、突撃せよ。イムレッヤの左翼を本隊と挟み撃ちにする!」

 号令したのはフィラックだった。

 夜中のうちに兵を動かしたのは、イムレッヤ帝国軍だけでは無かった。

 フィラックは夜のうちに五千の兵士を連れて、イムレッヤ帝国軍の側面に回り込んでいた。

 奇襲は成功する。イムレッヤ帝国軍の左翼は崩壊。フィラックはそのまま、イムレッヤ帝国軍の中央軍へ攻撃を仕掛ける。

「迎撃しろ。ここを突破されれば、勝ち目はないぞ!」

 アンスーバは起きたことをすぐに理解した。迅速な対応で全体の崩壊は防がれる。

「お味方劣勢にございます。ここは一度お引き下さい」

 兵士がイムニアへ進言する。

「私は退かぬ。兵士を見捨て、生きながらえたとて、以後私に付き従う将兵がいるか。私は退かぬ。逆だ。私も前線に出るぞ!」

 イムニアは剣を取った。



「何、それは本当かい?」

 リョウはイムニアの旗が前線に出てきた、という報告を受けた。

「罠か。本物か」

 リョウが結論を出す前に凶報が飛んできた。

「緊急報告! 後方に新たな敵!!」

「何だって!? 火が消えたのかい!」

 リョウは声を上げた。

「違います。敵は火の中を進軍してきたのです」

「全く非常識なことをするなぁ…………こちらの陣の一箇所を開けて敵軍を合流させる。そうすれば、一度は動きが止まるだろうから、改めて、包囲するよ。ルピン、できるかい?」

「できるかではなく、やります。私も一旦、前線に出ます。誰か私を馬に乗せてくれませんか?」

「私が行こう」

 名乗り出たのはカーゼだった。

「このカーゼ、あなたの盾になりましょう」

「お願いします」

 ルピンが前線に出る。

「あの、リョウさん」

「なんだい?」

「ルピンさんは軍を指揮したことがあるのでしょうか?」

「無いと思う。だけど、ルピンになら出来る」

「どうしてですか?」

「ルピンほど戦局を、現在の配置を理解している人はいないよ。ルピンはこの戦場を空から見ている。それだけの視野を持っているんだ」

 ルピンの指揮はまるで盤上の駒を動かすようだった。動きに無理と無駄がなかった。

「名将に名采配なし、とはよく言ったものだね。でも、ルピンがここまで本気になるなんて珍しいよ。いつも最低限の仕事しかしないのに」

「ちょ、ちょっと待って下さい!? 今までのルピンさんの働きが最低限なのですか!!?」

「ルピンは僕以上の怠け者だからね」

 クラナは怠け者の定義が分からなくなる。

 ルピンの用兵もだが、それに合わせたグリフィード、フィラックの連携も見事だった。

 ルピンがリユベック騎兵隊に中央を突破させ、グリフィードとフィラックが左右の側面に回った。ルピンは乱れた中央を再編するために動く。

「凄い………………」

 クラナは呆気にとられていた。

「連携・連絡・兵の運用でルピンは一流だね。さぁ、今度こそ、追い詰めたよ」

 シャマタル独立同盟軍は包囲陣の狭くしていく。

 勝敗は決した。



「リユベック、来てくれたのか!」

 リユベックの鎧は所々焦げていた。

「到着が遅れました。申し訳ありません」

「いや、いい。お前に会えただけで私はうれしい」

「イムニア様、お逃げ下さい。そして、ミュラハール・カタイン両将軍の兵力を糾合し、もう一戦なさいませ。時間は私が稼ぎます」

 イムニアは首を横に振った。

「私は今まで退かなかった。それが私に生き方だ。変えることは出来ない。リユベック、最後にお前に会えて良かった」

 イムニアはリユベックを抱き締めた。

「イムニア様、それはどういう…………!」

 リユベックの意識はそこで切れた。

 イムニアが剣の柄で後頭部を叩いたのだ。

 辺りを見渡し、一番若い兵士を見つけると近くに来るように指示した。

「君は何歳だ?」

「一六歳にもうすぐなります」

「そうか、私が初陣した時より若いな。死ぬには若すぎる。リユベックを頼む、戦場を離脱しろ。これは極めて重要な任務である。失敗は断じて揺るさん」

 青年は大きく頷いた。

 イムニアは剣を高く掲げた。

「これより我々はリユベックが開けた穴に突っ込み、敵本陣を目指す」

 イムニアにはそれが無茶であることは分かっていた。

 しかし、イムニアは生き方を曲げられない。最期まで「らしく」生きることを選択した。

 イムレッヤ帝国最後の大攻勢が始まった。



「リョウさん、敵の攻勢が激しさを増しましたよ」

 クラナは指摘する。

「ああ、最後の抵抗って奴かな。心配ないよ。ここまでは届かない」

「でも、ルピンさんまでは届くかもしれない」

「………………」

「否定しないと言うことはやっぱりそうなんですね」

「ルピンなら大丈夫だよ。絶対に死なない。ルピンがそんな無謀なことをするはずが無い」

「リョウさんが強い言葉を使う時は自信が無い時ですよね? リョウさん、こちらも動きましょう。私も前に出ます」

「クラナ、君は大将だ。戦は総大将が討たれたら負けなんだよ。ここまでの時間と犠牲が全て無駄になるんだ」

「分かっています。でも、私には責任があります。この戦争で多くの人が死にました。苦しみました。それなのに私だけ安全なところにいることなんて出来ません。この最終局面、私が前に出ることで全体の士気も上がる。違いますか?」

「………………」

 リョウは考える。考え抜いた末に最善では無く、希望の一手を確信した。

「君は死んじゃ駄目だ。ルピンも死なせたくない」

「私は死にませんし、ルピンさんも死なせません」

 クラナは初めて戦場の最前線に身を投じる。



「敵の猛攻をこれ以上、押さえつけられません!」

 ルピンは兵士の報告を冷静に聞いていた。

 勝利を確信していた。両翼からはグリフィードとフィラックが駆けつける。そうすれば、敵の最後の攻勢を圧倒的多数で押しつぶせる。

「ただそれまで持ちそうにありませんね」

 イムレッヤ帝国軍の行動は早かった。

 ルピンが中央に空いた穴を塞ぎきる前に攻め込まれてしまった。それでもルピンは己の全てを使って、足止めした。もう、敵がこちらの本陣に届くことは無い。

 しかし、ルピンまでは届いてしまう。

「ヤハラン殿!」

 カーゼがルピンの前に立ち、矢を受けた。矢はカーゼの右頬に刺さった。

「カーゼさん!」

 ルピンの問いかけにカーゼは「大丈夫だ」という仕草をして、立ち上がった。頬に矢が刺さり、しゃべれない。

「見事な武人だ」

 言ったのはイムニアだった。

 イムニアは乱戦の最前線にいた。

「驚きましたね。敵の大将がこんなところにいるなんて」

 ルピンは将軍章からすぐにイムニアだと特定した。

「ここが一番指揮しやすいからな。駆け出しの頃に戻った気分だ。中々に心が躍る」

「なるほど後世はあなたを戦闘狂と記録するでしょうね。降伏しては如何ですか? もう勝ち目はありませんよ」

「そうでも無いさ。あなたを討てば、まだ戦場を引っかき回せそうだ」

 イムニアは直感でこの戦場を支配しているのが、ルピンであることに気付く。

「なるほど戦争の天才。それは認めましょう」

 イムニアがルピンを討ち取るには障害がある。

 頬に矢を受けても倒れないカーゼがいる。

「その男を倒し、あなたも討ち取ろう!」

 カーゼは立ち塞がる。

 カーゼはイムニアの乗る騎馬を一閃し、あっという間に地上戦に持ち込んだ。

 そして、間髪入れずにイムニアの右肩に剣を突き刺した。

 イムニアは怯まずに前のめりになる。

 そして、カーゼの頬に刺さった矢を思いっきり引き抜いた。

 カーゼは激痛に怯んだ。その隙にイムニアは、カーゼの脇を抜けてルピンに迫る。

「あなたは武術を使えないのか?」

 イムニアはルピンの喉元に剣を突き立てた。

「使えるように見えますか?」

「おしい。もし違う出会い方をすれば、私はあなたを部下にしたかった」

「そうですか? 私は断るでしょうけどね」

 ルピンは助かるとは思っていなかった。

 未来の構想もあった。

 見たいものもあった。

 知りたいこともあった。

 しかし、ここで死ぬならそれでもいいと思った。

「待ってください!」

 聞き覚えのある声が戦場に響いた。

 辺りの乱戦が止まった。

「その人を離してください」

 ルピンは驚きの表情をしていた。

「名前を聞こうか?」

「クラナ。クラナ・ネジエニグです」

 戦闘は完全に停止し、全員の視線が二人の総大将に集中する。

「この馬鹿お嬢様! 何であなたがここに居るのですか!?」

 静まりかえった戦場にルピンの怒声が響いた。

「戦いは私たちが完全に有利なんですよ!? もっと全体を見てください! あなたはランオと同じことを言っているのですよ!」

「それは違います。今回は勝ち目だってあります! フォデュース候、このままルピンさんを殺しても、戦局は変わりません。あなたたちの負けです。だから、一つの提案をします」

「提案?」

「ルピンさんを離して頂ければ、私があなたと一騎打ちをします」

「どこまでも甘いお嬢様ですね! そんな提案をすれば、足下を見られます。私に剣を向けているそこの戦争の天才が、あなたと私の人質交換を提案したら、どうするつもりですか!?」

「そ、それは…………」

 クラナは黙り込んだ。

「心配しなくて良い」

 イムニアが言う。

「私には好きな勝ち方がある。ルピン、と言ったかな? あなたの命を盾にするなど、卑怯な勝ち方をすれば、私が今後生きていたとして、誰が付いてこようか?」

 イムニアは剣を下ろして、ルピンを解放した。

「何をやっているのですか! 矢を射かければ、敵の総大将を討ち取れるのですよ!」

 今のイムニアを守る者はいない。

 しかし、誰一人としてイムニアを打倒しようとしなかった。

 その姿は堂々としていた。その姿は一つの芸術だった。

「私は約束を守ります」

 クラナが前に進んだ。

「待ちなさい、ネジエニグ嬢! さっきのは策なのでよね!? 総大将のあなたが危険を侵す必要がどこにありますか!」

「フォデュース候は私を信頼して、ルピンさんを離してくれました。私はそれに報いる義務があります」

「こんな時に馬鹿真面目でどうするのですか!? あなたはリョウさんとのこれからあるのですよ!!」

「ええ、だから勝ってこの戦いを終わらせます」

 クラナは剣を抜いた。

「ルピン、最後はクラナに任せてみないかい?」

「リョウさん、あなたまで…………」

「それにイムニアは片腕を怪我している。ガリッターみたいな武の化身だって情報も無い」

「試合なら、フォデュース候が万全でも勝てるかもしれない、と思っています。ですが、ここは戦場です。命のやり取りをする場所です」

「クラナが臆すると思っているのかい?」

「いいえ、あの子は開き直るととんでもなく思いっきりが良くなります。剣を抜いた時点でそれは無いでしょう。ですが…………」

 ルピンは極めて深刻な顔だった。

「人を殺したことがありません」

 ルピンの言葉にリョウの心はざわついた。



「ルピンさんを離して頂いてありがとうございます」

「礼を言われる筋合いは無い。大将の首が取れるなら、つりが来る」

「降伏…………はして頂けませんか?」

「私は引かないことを信念に生きてきた。今更、それをかえることは出来ない。いざ!」

 先に仕掛けたのはイムニアだった。

 クラナは冷静に受ける。

 そもそも、片腕が使えないイムニアとクラナではまともな勝負にはならなかった。

 誰の目からも勝敗は明らかだった。

 イムニアが思い切った賭けに出るまでは。

「えっ?」

 イムニアは、クラナの振った剣を避けなかった。

 クラナは反射的に剣を止めてしまった。

「やはりな。あなたの剣には殺意が無かった。それは戦場において、命取りだ!」

 体勢を崩したクラナに対し、イムニアが踏み込んだ。

「それはあなたもですよね?」

 クラナも引かなかった。

 二人は互いの首筋に剣を突きつけて、止まった。

「私に殺意が無い? 試してみるか? この剣を引けば、あなたは死ぬぞ」

「あなたにやれますか?」

「………………………………………………………………」

「………………………………………………………………」

 沈黙した二人を、両軍は見守った。

「なるほど、只の飾りでは無かったようだな。恐らく、あなたを討ったところで大勢は変わらないだろう。私の願いは一つだ。撤退するイムレッヤ帝国軍を追撃しないで欲しい。それが叶うなら、この身を好きにするが良い」

 イムニアには自分の命より大切な人がいた。

「分かりました。敗走する帝国軍を追撃はしません」

「感謝する」と口にしたイムニアは剣を下ろした。

 兵士たちは目の前の光景が何を意味するか、理解するのに少しの時間を有した。

 そして、少しの間の後にシャマタル独立同盟軍の兵士は歓喜した。

 その声は大地を揺らした。

 反対にイムレッヤ帝国軍の兵士は膝を突いた。

「これが負けか。一昨年も負けたが、あの時とは比べるまでも無い大敗だな。なるほど、これが完敗というやつか」

 負けたイムニアは立ち尽くす。

 勝ったクラナは力が抜けて、膝を突いてしまった。

「何だ? さっきまでとは別人のようだな」

 イムニアは苦笑する。

 クラナは何かを言おうとするが、自分の体の異変に気付き、顔を赤くした。

「クラナ、大丈夫かい!?」

 リョウが走ってくる。

「待ってください!」

 クラナは、リョウを制止した。

「どうして?」

「えっと、それは…………」

 クラナが理由を言えずにいる間に、ルピンがリョウの脇を抜けた。

 そして、ルピンは持っていた水筒の中身をクラナの頭からかけた。

「えっ…………? これは紅茶ですか?」

「すいません。渡そうと思ったのですが、手が滑りました」

などと、わざとらしく言う。

「今、あなたは紅茶の匂いしかしませんし、頭から紅茶を被ったせいで上から下までびしょ濡れです。お漏らししたことはばれないと思いますよ」

 ルピンはクラナの耳元でからかうように言った。

「このことは内緒にしてください…………」

「リョウさんにですか?」

「全員にです!」

 春から始まったシャマタル独立同盟とイムレッヤ帝国の戦争のほぼ全てが終結する。

 後に『シャマタルの奇跡』と呼ばれる戦争は一人の英雄を生んだ。

 若き司令官代理、クラナ・ネジエニグの名前は大陸全土へ知れ渡る。

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