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大陸戦乱末の英雄伝説  作者: 楊泰隆Jr.
雄飛編
122/184

ユリアーナの逃走劇

一つ話数を飛ばしていました(汗)

申し訳ありません。

 時は遡り、ファイーズ要塞攻防戦三日目、日中。

 たった一人の孤独な戦いを始めた者がいる。ユリアーナだ。

 リテリューン皇国軍の注目がシャマタル独立同盟軍に集まっている間に、馬に乗って要塞を脱出した。

 しかし、この脱出は上手くいかなかった。動きはリテリューン皇国に読まれていた。

 ユリアーナはすぐに捕捉されて、騎兵一個中隊に追われることになる。ユリアーナは歴戦の戦士であるが、多勢無勢が過ぎた。戦うことをせずに逃げの一手だった。

 ユリアーナは逃げながら、リテリューン皇国軍の迅速な動きを痛感した。そして、カタインの元へは一切の伝令が到達していないと確信する。全力で逃げるが、どうしてもリテリューン皇国軍の追跡を振り切れない。

 ルルハルトが準備していた騎兵は優秀だった。ついにソモワという河の川際へ追い込まれてしまった。

「この川は…………渡れそうにないわね」

 ユリアーナは悔しそうに呟く。

 河は前日の雨で増水し、濁流と化していた。

「もう逃げ場所はないぞ!」

 中隊長らしい男が前に出る。

「投降したら、助けてくれるのかしら?」

「…………」

「まぁ、当然よね」

 ユリアーナは馬から降りる。

 続いて、兜を脱いだ。

 おー、という声がリテリューン皇国の兵士たちから上がり、下衆な笑みを浮かべた。

「隊長、この女、どうせ殺すならその前に遊びませんか?」

 一人の兵士が言う。

「やめておけ。司令官にバレたら、私たちは殺されるぞ」

 そう言われると兵士は悔しそうに黙り込んだ。

「申し訳ないが、生かしておくわけにはいかない。そういう命令だ。抵抗しなければ、苦しまずに死なせてやることは約束する」

「そう、分かったわ」

 ユリアーナは剣を捨て、続いて防具を脱いだ。

「良い女なのに勿体ない」

 兵士の一人が呟く。中隊長はその兵士を一瞥して、ユリアーナへ近づいた。

「ねぇ、死ぬ運命と死ぬかもしれない運命のどちらかを選べって言われたら、どっちを選ぶかしら?」

 ユリアーナは防具の下の衣服まで脱いだ。そして、それを腰に巻き付ける。

「はっ?」

「私は死ぬかもしれない道を選ぶわ」

 ユリアーナは後退する。背中には増水して、濁流と化した川がある。

「よせ、馬鹿な真似は止めろ!」

「無抵抗に殺される方がよっぽど馬鹿だわ!」

 ユリアーナは濁流に身を投げた。

 抗えない力がユリアーナを襲う。どっちが上か下かもわからない。息が出来ない。

(焦っちゃ駄目…………!)

 ユリアーナはなるべく体の力を抜いて、流れに身を任せた。酸素の消費を最小限に抑える。

 しばらくすると流れが僅かに緩やかになった。

 ユリアーナは、これなら流れに逆らえる、と確信して、陸地を目指した。

「…………はぁ…………はぁ…………生きているわね…………我ながら、頑丈で助かるわ。でも手紙は駄目よね」

 ユリアーナは腰に巻き付けていた衣服を解き、手紙を入れた袋を取り出した。

「これは…………あの子ったら、私が無茶をするってお見通しなのかしら」

 ユリアーナはクスッと笑った。

 防水性の袋のおかげで、手紙は無事だった。

 ユリアーナは衣服を絞ってある程度の水を抜き、着用する。

「さて、ここはどこかしらね?」

 ユリアーナは生き残るためだけにソモワ河へ飛び込んだわけではない。カタイン軍がこの河沿いに進軍していることを知っていた。

 ユリアーナはしばらく川沿いに歩いて行軍の痕跡を見つけた。

「さて、馬もいなくなったし、剣と防具もないわ。身軽ならやることは一つよね」

 ユリアーナはリョウとカタインに全てを知らせるために走り出す。

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