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太陽のように輝いて

「では、しらばらくは向こうに居ることになるかもしれないが、彼女の事は任せたぞ」


「此方は大丈夫です。存分に話をしてきて下さい」


かくして、侯爵様は旅立ち(?)ました。

どこから転移したのかはわかりませんでしたが、どうせなら転移陣を見せて貰いたかったですね。



「そういえば、アティは元気がないね。昼間はもっとハキハキしていたように見えのだが?」

「そんな事は…」


さて、日頃の運動不足がたったんでしょうか夕方になったあたりから脹らふくらはぎから内股あたりが痛くなってきてます。


草原を歩いてる間も、痛くなったりしてたんですけど、今みたいにズクズクとした鈍痛とは程遠かったでしたね。


待ち時間に、使用人さんのお風呂を借りる事ができたので、汗は流せて身体は汚くはないと思うのですが、マッサージまでは気が回りませんでしたよ。

明日に響くと思いますし、寝る前に、足をよく揉んでおかないとなりません。

学園の自室なら色々と薬草が揃ってたので、調合する事も可能だったんですけど…。


「アティ、本当はどこか傷めてるのでは?」


足を気にしていたらロベルト様が気を使ってくれたようです。それから、呼称はアティで定着したようですね。


「大丈夫です」


「足?痛いのではありませんか?」


視線のせいで、ロベルト様にわかってしまったみたいですが、とても痛いです。

4日間の努力の勲章は、会話中に気にするくらいの痛みです。


「いいえ、肌がツルツルだと思って…すみません、スゴく痛いんです」


もし会話中に自分の足がツルツルだなんて事を気にしていたら、私はとんだ失礼な人物ですよね。



「そう言えば、部屋から出ないような生活をしていたと言っていたし、怪我をしていた訳じゃ無さそうだし気が抜けて疲れが表に出てきたのではないかな?」


ルーベンス様のご明察に感服いたしました。正直、脹ら脛がスゴく痛いです

情けなくて悲しいけど現実にいたいんです。


「…見た目通りに華奢なんですね」


「…もやしっこで申し訳ありません」


ついでに貧相な体をしているので、誰かに体を見たり触られるのは勘弁して欲しいです。

「仕方ないね、今日はこれくらいにして明日また話をしようか」


イスから立ち上がり全員で、一礼しながら“おやすみなさい”してから寝るんだって。


なんかスゴいです。


途中手洗いに寄り、部屋に戻ったら何故かメイドさんが待ち構えていた。


「就寝前にアティア様のマッサージをして差し上げろと仰せつかっております」



「…………………………………………………………………………………ひいっ!!」



「さ、横になって下さいな。筋肉痛になりかけてるみたいですね」


逃げるまもなく、私はベッドに運ばれてしまいました。


メイドさんがどうこうじゃなくて、単純に私の動き方が鈍いだけです。


「服はそのままでいいですから体の力を抜いていて下さい」


「…はい、よろしくお願いします」


服脱がなくていいんですか、無駄な抵抗はやめましょう。


「マッサージしておけば、明日は体が楽ですからね」


そう言って、メイドさんは私の足をグニグニ揉み始めてくれました。


学園に入ってからは、こんな風に人に触れられた覚えがないですね。

でも、女の人に馬乗りにされるのは初めてですが、重くて柔らかいのに挟まれるのって落ち着くのですね。


「アティア様は、山から歩いてきたと聞きましたが、よく御無事でしたね。」


「それがですね、幸いにも遠くの魔物をみただけですんだのですが、普通の生き物とはやはり違うみたいですね」


この4日間、魔物らしき生き物は、二度しか見ませんでしたね。後は、鹿とか猪が群れで居ましたがしたが逆に警戒してどっか跳んでっちゃいました。


魔法を使って狩猟したら良かったかも知れませんが、刃物なんかありませんでしたし、群れの一頭に当てる自信なんかありませんでした。


―食料を抑えながら歩いてきたから戦う余裕もなかったんですけどね。街まで、魔法で強化したりしながら来たので、移動は苦でなかったんですが、人里がないのが一番怖かったです。


学園では独りきりであっても、誰かしら人がいたんですから、孤独と孤立の違いがよーくわかりました。


「魔物は何か違うので?」


「魔物は人と同じように呼吸して見えても、取り込むのが空気じゃなくて魔素でしたね。

大気中に魔素がある限りは息切れしそうにないから羨ましいです」


だから、魔物は人よりスタミナがあり、魔素が薄い所には魔物が近寄らない訳ですね。


魔物が凶暴化が、大気中から取り込める魔素が足りておらず、それを補うために他の魔物や生き物を襲うようになるんではないかという仮説がある理由ですけど、魔力や魔素は見えませんからね。


極稀に、魔物化する動物がいたりするようですが、直接的に体内に取り込んだ魔力の暴走による発作です。


魔物としての器官がない以上は長じる事はありませんが、変質した身体が元に戻る事もないのでそれらは魔獸として討伐されます。


つまり、魔素や魔法がない世界になれば魔獸の子孫はまだしも魔物だけは自然といなくなるのではないかと論文をだしたら、“あり得ない事を書くな”と怒鳴られましたね


実際、自然にできた環境ならともかく、魔法結界では構築に使用している魔力や魔素が内部を飛び交っている状態ですから、検証は出来ないんですよね。


まぁ、魔物の領域に行きさえしなければ被害は受けないと考えたら、どうして好き好んでダンジョンなどの危険な場所に行かなければならないんですか。


警備隊の話を断ってどこか探して貰った方がいいんではないでかと言う話をマッサージされながらメイドさんに話します。


メイドさんはライラさんと言うそうで、茶色い髪の毛にブルーアイ、しかも、二児の母親だそうです。


「大丈夫ですよ?基本的に警備隊は街の中の仕事が主です。それにルーベンス様がダンジョンに連れて行ってくれるとおっしゃっていたなら、危険な目に合うことはないと思います。」



ルーベンス様はメイドさんにも信頼されている方なのですね。それから、ライラさんは「旦那様も父親としていいところを見せたいのでは?」と、続けました。


いいえ、全くの他人ですし、ここは、戦力として使い物になるかどうかを査定されると見ていいとおもいます。


ほとんど初級しか知らないのでは、無理そうですね。


「着替えはクローゼットにしまってあります。着替えた後はグッスリおやすみ下さい」


え、着替えを手伝われなくていいんですか?


「旦那様が『彼女の着替えは、一人で着替えられる者を支度して上げなさい』と言われましたから、一人で着替えられる物だけ揃えてあります」


どうやら私のような娘の考えは、ルーベンス様にはお見通しのようです。


「では、おやすみなさいませ。お嬢様」


「ありがとうございました。おやすみなさい」


最後にお嬢様なんて冗談を言われてライラさんが部屋から出てゆかれました。


お茶目なお母さんですね。


さてさて、身体はだいぶ楽になりました。


ベッドは部屋の真ん中にあるので、部屋の中をぐるりと見回すとベッドを挟んで、出入り口の反対側にクローゼットらしき両開きの扉があります。


豪華な装飾がされてますけど、他に扉がない以上、あれがクローゼットなんでしょう。



扉を開いて中を見てみると、歩き回ればそうなほど広い空間に、袖の長い白いワンピースが一枚だけ入っていました。


わかりやすくて有り難いです。

後は、着替えて就寝するだけです。


何から何までお世話になってしまい。ルーベンス様には頭が下がる思いです。


就寝前に、感謝を口にしてから寝ると良いことがあると昔から言われています。

学園時代は気にした事もなかったんですが、たまにはそれにならって就寝しましょう。


「グルーデック様ルーベンス様カティア様ロベルト様ロナウド様ライラさん、…後ルイスさん今日は本当にありがとうごさいました」


「ちょっとクサいからやったことなかったんですけど、普通に恥ずかしいですね…」


仰向けに枕に顔をうずめてごまかしましたが、余計に目が覚めてしまいますね。


寝る前にやるのはやめましょう。

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