第七話
とりあえず索敵からか。なんとなくだが、使い方はわかるな。これが補正の効果か?
感覚的にスイッチを入れるような感じだ。スキルを念じればいい。集中すると周りの気配を感じることが出来る。
LV5でおよそ半径100mくらいか?周りに危険な生き物の気配はないようだ。
まるで、レーダーみたいだ。円をえがくように、上空も地下も探れるようだ。
姿は見えないが、鳥のさえずりが聞こえてくる方向に、気配がある。これが鳥の気配か?小さいな。危険はないようだ。
すっと気配を捉える感覚が抜けていく。一回の発動時間は短いのか?あっ、危険は無いって思ったから終わったのか?敵がいる場合は継続するのか?これも要検証だな。発動はできても、どう使いこなすかが課題か・・・。
魔力が消費されたか確認しなくては。
そのままにしていた画面を見る。
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<能力把握>
名前:笠木 優希
種族:人間
性別:男
年齢:十八歳
体力 :25/25
魔力 :24/25
攻撃力:18
防御力:15
賢さ :18
素早さ:15
器用さ:18
魔力が24になっている。前の数字が今使える残量で、後ろがMAXの数値か・・・
考えて使わなければ、必要なときに使えない事態になるな。0になった場合どうなるんだ?使えなくなるだけか?体力が0になった時はどうなるんだ?死ぬのか?試すわけにはいかないが・・・検証しなくてはならないことが多すぎる・・・メモ帳が欲しい。
とりあえず、この場所で一晩過ごせるようにしないと。
周りを見渡すと、最初に目に入った木が無ければ、女の子の荷物も動かさずに、半径4mぐらいの場所が確保できそうだ。
この木をどうにかするには・・・錬金を使ってみるか。いや、その前に鑑定で木を確認しよう。
木の幹を見ながら、鑑定を念じた。脳裏に言葉が浮かぶ。
ポヤの木:ツォーレの森の固有の木。幹の中心はやわらかい繊維状で、外へ向かうほど硬くなる。外側は硬いので、幹は曲がることなく、まっすぐ伸びる。葉は、油分を多く含み、生葉のままでもよく燃える。
魔力を確認する。
魔力 :23/25ということは、鑑定も1回で1魔力か。ここはツォーレの森の中ということか。
名前がカタカナで認識できるってことは、名前を変えたほうが良さそうだ。日本名で悪目立ちしたら、最悪だ。後で、名前を考えよう。
錬金を意識してみる。
物質変形、分離、抽出、溶解、合成、の単語が脳裏に浮かぶ。
5つあるということは、レベルが上がるごとにできることが増えるのかも?
又は五つが固定で、できる範囲とか量が増えるのか?レベルがあがればわかるか・・・
もう一度、木を見てみる。高さは15mはありそうだな。幹に近づき、手を回してみる。幹周りは、両腕で囲めるな。木の表面は硬い。
そうだな・・・まずは、地面から70cmぐらいのところで切り離して、上は枝と幹に分けて、幹は1mごとに分けてみるか。
木に手をつき、分かれた状態をイメージしながら、錬金の分離を念じた。
一瞬のまばゆい光に、目を瞑る。
目を開けると、イメージしたとおりに分かれている。幹が積みあがっているけど、許容範囲だろう。
錬金は使えるな。職人にはもってこいのスキルだ。浮かれていると悲鳴が聞こえた。慌てて振り向く。
「ひぃ・・・な、何が・・うっ・・・」
半泣きになっている女の子がいた!!しまった!!
「ごめん。ごめん。説明してから、したらよかった。野営場所を作ろうと思って、邪魔な木を錬金術で分けたんだ。ここは、安全だから、もうちょっと待っててくれる?」
「うっ、はぃ・・・」
「アイテムの確認はできた?」
「もうちょっと・・・です」
「終わったら、能力把握で、スキルとかも確認してくれるかな?こっちは、もうちょっと時間が要るから。それと、その樽は、水じゃないかな?飲んで待っててくれる?落ち着いてね。大丈夫だから。」
「わ・わかりました。」
ヤバイ。初めての経験に女の子の存在忘れてた。そりゃ、いきなり光って、木が無くなったらびっくりするか。
ともかく、野営の準備をしてしまおう。
魔力を確認する。
魔力 :21/25ということは、錬金は1回で2魔力か。このスキルは使える!
細かい作業は後にして、結界を張ってしまおう。
結界も、使い方はわかるな。どこからどこまで囲むかを指定して発動か。
LV5だと攻撃を受けなければ、数日は結界が維持できるようだな。一度張れば、ずっとあるというものではないのか・・・
確認のためにも今できる最大でとイメージして。
よし、結界!
上手くいったみたいだ・・・ドーム状に結界があるのがわかる。
魔力を確認する。
魔力 :19/25ということは、結界も1回で2魔力か。結界の有効時間や実際の強度がどれくらいかは要検証だな。
使いこなせるかどうかが、生存率に影響するな・・・使い方も考えなくては。
あとは・・・、結界ごと隠蔽できるか試してみるか・・・
隠蔽も、使い方はわかるな。では、隠蔽!
上手くいったみたいだ・・・なるほど、これが隠蔽による認識阻害の効果か。隠蔽の効果を超える派手なことをしなければ、通常は、そうそう見つからないだろう。
見つかるとしたら、看破のスキル持ちがどのくらいかにもよるか・・・
魔力を確認する。
魔力 :18/25ということは、隠蔽は1回で1魔力か。
これで、今夜の安全確保のために、やれることは全部終わった。
あとは、分離した木の有効活用か。
まず、切り株になったほうを物質変形で丸テーブルにして、幹の一つを椅子に変える。二つできるだろう。残りの幹は木の皮を分離してから、中心の柔らかい部分を糸にして、残りは木材に変えておくか?いや、用途が決まってからだな。二度手間になる。
最後の枝は、葉っぱと枝に分けてから、葉の油分を抽出してみるか・・・葉の色素も取り出せたら、油と色素を溶解してインクにできないかな?
メモ帳が欲しい。枝の部分を焚き火用と、紙用にわける。焚き火用からは水分を抽出すればいいか。
とすると、必要な魔力は、10回×2=20か?安全のために、魔力は常に半分は残しておきたい。
時間経過で回復するかも検証しなくては。
なら、今するのは、テーブルと椅子か。これ以上待たせるのは不味いな。さっさとしてしまおう。
切り株に歩み寄り、手を着く。幹を細くして天板を大きくするようにイメージする。
物質変形!
まばゆい光が収まると、丸いテーブルが出来ていた。よし、出来た!
幹の一つを引き寄せ、椅子二つになるようにイメージする。
物質変形!
まばゆい光が収まると、椅子二つが出来ていた。座面に手を触れてみる。
座るところは中心部の繊維が纏まり、柔らかくクッションのようになっている。座面の裏側も触ってみる。こちらは、ちゃんと硬くなっている。
成功だ!
魔力を確認する。
魔力 :14/25 二回分減っていた。
よし、材料が足りていれば、一度に同じものを複数つくれる!
用意はできた。さぁ、話し合いだ。