マイネームイズ、あう。
お姉さんのあとを、追いかける。
大股でさっそうと歩くんだよねえ。
遅れないように私もついていく。
歩いてるんだけど、なんかふしぎな感じがする。やんわり押し返されてる。空気のいっぱい詰まったマットの上を歩いてるみたい。
お、発見♪
体を動かさなくても、そっちへ行こう、と思えばいけるんだ。
こりゃらくちん。
寝そべっててもオーケー。
小指と小指で糸がつながってるんだよね。
お姉さんにひっぱられるまま、風船みたいに漂って、ついていく。
それにしても。廊下、ながっ!
灯がぽつん、ぽつんとともされてずうっと先まで続いてる。
距離を目測するに、二百メートル。言い過ぎ?
石畳に影が伸びている。でも、一つだけ。お姉さんの。
私の影は地面に映ってない。
この状況。
どこをどうして、こうなったのか、考えてもわかんない。
考えて問題が解けるなら、がんばるよ。がんばりますとも。
でも、まあ、心当たりもないんだからさ。
左の小指に巻かれた糸が、くいと引かれた。
「幽霊の娘」
顔をあげると、お姉さんは目を細めて笑った。
「不可思議なことだ。どんな縁なのかな。そなた、名は?」
名前。ですか?
緊張しちゃうな。
名乗るほどのものじゃないんですけどね。
さ・・・・・・さぁ・・・・・・せ・・・・・・せぇ。
私の名前は、さ・・・・・・あれ、なんだっけ?
えっ。
マイネームイズ、あう。
思い出せないようどうしよう。
「そなたが誰であれ」
お姉さんはちいさく笑った。
「わたしは救われたような気がする。なんとも、気が晴れる心地がするのだ、なぜかな?」
あー、ごめんなさい話しかけないで!
いま、思い出してるとこだから。頼みます!