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覚えてろよ、あとで蹴ってやるから

「遅いな」

 たしかに。ずいぶん待たされてる。

 やっぱりワナなんじゃないの?

 じっとしてていいんですか、お姉さん。


 お姉さんって、なんかヨユウあるよなあ。

 せっぱ詰まるときってあるのかな。

 怒りも悲しみも、焦りもなんもかんも、胸の内にぐっと飲み込んで、ためこんでるような感じがする。

 私の弐拾参巻とクム・セナお姉さん。

 どっちも気になる。同じくらい。

 お姉さんは、誰か好きな人いないのかな。

 王様とか。

 お后にするお姫様を連れてこようってくらいだから、それはない?

 副隊長さん。

 きょうだいみたいな感じかな。

 お姉さんを、いつもさりげなく見守ってるんだよね。

 はっきりしてる、恋心。

 でも、残念。お姉さんたぶんっていうか絶対、気づいてない。


 白い糸が私とつながってるんなら、お姉さんの赤い糸は、誰に結ばれてるんだろう。


 とんとんとん。ぐつぐつぐつ。

 さっきから聞こえてる、これってなんの音?

 奥のほうで、料理してる? 

 そういえば、さっきの白い服の使者さんは。


 ぐう。

 これは、お姉さんの腹の虫。

 王宮をでてから、ずいぶんたちましたから。

 先を急いで、丸一日。

 干した肉とか干したナントカいうぱっさぱさの豆しか食べてませんね。

 おみそしる食べたい。

 あさりの入ったやつ。

 お母さん、泣いてるかな。

 お父さんも泣いてるだろうな。

 ショウタロウとは、ケンカしっぱなしだったな。

 あやまっとけばよかった。

 とげみたいに後悔が残るってわかってたら、どっちが悪かったかなんてどうでもいいから、すぐに謝ったのにな。

 もう色々と遅いんだろうなあ。


 


 うん?

 なんだか、煙たくないですか。


 副隊長さんが窓を開けようとする。

 でも、開かない。

 部屋の扉も。

 外からかんぬきがかかってるみたい。

 お姉さんはすこうし、笑った。

「閉じこめられたな」

 扉の下の方から、煙が入ってきた。

 窓からも。

 息苦しくなってくる。


 これ、いきなりのピンチじゃないですか?

 他の人たちは?

 見張りの方々ですよ。

「やられたかな」

 うそでしょ。お姉さん、ここ笑うとこじゃないと思います。

「人選を誤りましたね」

 副隊長さん、あわてもしない。

 この人たちどうなってんの?

「おまえに一任したんだ、わたしのせいにするのか」

「おれに任せたあなたの責任です」

「手練れは王様の近衛に残したから。まあ仕方ないか」

「あなたは、ご自分の身を守ることをいつもおろそかになさる。ようするに、けちなんです」

「けち」

 お姉さんショック受けるとこ、そこですか。

「覚えてろよ、あとで蹴ってやるから」

「腹が減りました。あなたに蹴られる元気もありません」

「元気を出せよ。おまえがいるから、ずいぶんわたしは楽ができてるんだ」

 副隊長さん、ちょっとだけ頬をゆるめた。

「あなたがほんの少しでいいから、守られるのをよしとしてくださればいいんですがね」

「守ってくれ。わたしはいいから、王様を」

 お姉さん、ざっくり男心をたたっきる。

 副隊長報われない。


 怖いとか、不安とか、ないのかな。

 ただ、お姉さんはこんな状況にわくわくしてる。

 信じられない。

 焼き殺されるかもしれないんですよ、こーいうときに。

 息が苦しくなって、死にそうになるもんじゃないの?

 

 外が騒がしい。

 剣の打ち合う音がする。

 お姉さんは副隊長さんに合図をした。

 力をあわせて扉を蹴り開けるつもりらしい。

 体当たりすると、肩を痛めるって。そうなんだ。

 

 数歩さがって、呼吸を合わせて、走り出す。

 怖いとか考えちゃダメ。

 思い切って、つっこまないと。

 目をつぶってます。

 やっちゃってください。

 お姉さん!

 

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