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ユン大妃

 幽霊も、寝るのかな?

 なんだか、すっごく眠たい。

 なんにもしてないんだけどね。ただ漂ってるだけ。

 お姉さんなんか、貫徹する勢いだよねえ、これ。

 近衛、神殿、大臣方々へ。

 いろんなところに使いをだして、それから会議。

 王様をお守りする、っていうことで目的は一致してるみたい。

 よかった。王様にも味方がいるんだ。

 本の部屋(集・宝・斎ってカンバン? がかけてあった)で一人でさびしく本を読んでた王様は、さびしそうだったけど。

 

 夜も明けようという頃ですよ。

 あくびしながらうとうとしていると、お姉さんが、咳払いをして立ち上がった。円卓に集まった人たちは、ぴたりと口をつぐんでお姉さんをみつめた。

「わたしは、皆に伝えておくことがある」



「隊長」

 副隊長さんが声を上げた。

 なに?

 なんだか騒がしい。ガチャガチャ音がする。

 障子紙を張った窓に、影が映ってる。時代劇みたい。殺陣ってやつ?

 今飛んだの、血しぶき!

 これも本物なのっ、ひぃ。

 

「こそこそと、このような夜更けにいかなる相談か?」

 きれいな女の人だ。髪をきれいに結い上げているけど、右頬を隠すように長い髪が垂れている。

 みなさん、すっごく気まずそう。

 呼んでない人が来ちゃった! マズ! っていう雰囲気。

 

「ユン大妃様」

 お姉さんは、ていねいに礼をした。

「こちらまでお出ましになられるとは」

「眠れずにいてな。なにやら、床下のネズミが騒ぎよる」

 一歩。大妃が歩み寄ると、お姉さんはすばやく目配せをした。

 副隊長さんが心得たみたいに部屋を出ていく。

「クム・セナ。明日の出陣をまえに、そなたをねぎろうておこうと思ってな。神殿におるはずのそなたは、いったいここで、なにをしておるのか?」

「手間が省けます。お運びいただきまして、ようございました」

 お姉さんは冷たい目をして言った。

「明日は、勤政殿にお越しください、大妃様」

「なに?」

「わたしは、王様のご命令で出陣いたします」

 大妃さんの目がつり上がった。

「そなた」

「神殿の巫女であるまえに、わたしは近衛です」

「笑わせてくれる。愉快なことを申す」

 大妃さん高笑いの巻。

 穏やかじゃないよ、これどうなるの?

「そなたは、愛らしい子じゃった。見習いのときは、たいそう目をかけてやったろう」

「ご恩は身に刻んでおります」

 お姉さんは目の前にごちそうをおかれ、だけど噛みつきたいのを一生懸命がまんする犬みたいに一瞬だけ歯をむき出しにした。ほんのちょっとだけ。

「なにか、誤解をしておられるようです、大妃様。わたしが王様をお守りするのは、先王のご遺志によるもの。わたしがゆかんとする道は、この国の繁栄につながる道です。幼い大君テグン様をお守りする道でもあります。王様は、いつも大君様を案じておいでです。三つにおなりになった幼い方が、いずれ王座につかれるとき、この国ははたして平和な良い国であるだろうかと。吹きつける風雨よりも恐ろしいのは、柱を食い倒そうとするネズミのたぐいだと」

 あっ、大妃さん、顔をひきつらせた。

 なーんか物をはっきり言わないんだよね。

 はっきり言ったらオシマイか。

 外の敵より、国内の足の引っ張りあいのほうが怖いって、そういうことだね。

「王になってもちいとも気概をお見せにならぬ、そんなお方が、明日」

 悪びれもせずに笑うと、きつそうな一重の目が、にっこりと笑みの形になった。すると、急に華やいだ雰囲気になる。

「勤政殿においでになる勇気をお持ちとも思えぬがな。まあよい」

 大妃さん、不思議な人だ。

「クム・セナ。明日に備えよ」

 にっこり笑って、帰って行く。

 悪い人なんだよねえ。

 お姉さんの敵なんだよね?

 よっくわかんないけど。

 でも、きれいな人だったなあ。

 おっかないけどさ。

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