06図書館
「何で俺は図書館にいるんだ?」
「宇宙について調べるのよ」
日曜日の午後、綾と二人で市の図書館に来ていた。それなりに人口の多いこの市には立派な図書館が存在した。そうは言っても来るのは初めてだが……
「だからなんで俺が付き合わないといけないんだ。一人で来ればいいだろ」
「つれないなー」
「日曜日くらい一人にさせてくれよ。なんで毎日、綾に付き合わないといけないんだ」
「観察」
「自分のしたい事しているだけじゃないか。本当に観察なんかしてるのか?」
「してるよ。今の反応も含めてね」
「うっ」
「かわいい妹と休みの日も一緒にいられて幸せでしょ」
「自分で言うか?」
「おっかしいなー。お兄ちゃんの好みに合わせているに」
「なんのこっちゃ」
「被験者のストレスにならないようにテスターは被験者の好みに外見を補正してるのよ」
「そういえば海で会った時と外見が微妙に違う?」
「冗談よ」
「嘘かよ!」
「ふふっどうでしょう?」
「ムカツク」
結局、夕方の閉館時間まで図書館であーでもないこーでもないと綾に付き合うことになる。俺の貸出枠も含めてカバンいっぱいに本を詰めて家路につく。
「しかし、地球外にも図書館があるのか」
「無いよ」
「無いのかよ!なんで図書館を知っているんだ?」
「井上さんに聞いた」
「井上の入れ知恵か」
「ねえ、お兄ちゃん。なんで、お兄ちゃんは井上さんとお話しないの?」」
「ん?そうだっけか?」
「そうよ。井上さん、お兄ちゃん達がいつも三人だけでお話をしてるって言ってた」
「たいした誤解だ。たまたまだろ。お前らだって新田を無視しているじゃないか」
「新田くん頭悪いから」
「お前、本人が聞いたら自殺しそうなことをさらっと言ったな」
「彼には越えられない壁があるわ」
「ははは……事実だけに本人には絶対言えないな」
「でも、新田くんは井上さんのことが好きなんでしょ」
「まあ、そうなるな」
「現実って残酷ね」
「だから、さらっとひどいこと言うな。少なくとも奴が努力してるうちは協力してやろう」
「優しんだね。お兄ちゃんは」
「今は明るく振舞っているが、怪我して走れないと分かった時の新田の落ち込みようは酷かった。やっと興味を陸上以外に持っていけるようになったんだ。協力もしたくなる」
「お兄ちゃんも残酷だね」
「なんでだよ」
「さあね。教えてあげない」