02天文部始動
天文部が結成されて一週間が過ぎた。
「ぼけー」
「どうしの?溶けてるよ?」
「ん?」
「田村か~」
「なんとも、冴えない返事ね」
「暇だ」
「帰れば?結局、毎日部活にでてるね」
「綾に無理やり……」
「おおっそうか、そうか、かわいい妹の頼みは断れないよな~お兄ちゃん」
「うっせー」
部室の奥では綾と井上が天文について熱く語っている。会話に入ろうとしてついていけてない新田が妙に滑稽に見える。幽霊部員を決め込んで入部したのに綾に引っ張られ気がつけば皆勤賞で部活に参加している。とは言え、興味の無い会話に入れる訳もなく夕方になるまで時間を潰す毎日である。新田は新田で毎日参加して井上と仲良くなる切っ掛けを模索している。
「まあ、あれで満足なのだろうけど。なんか痛いな」
「青春だねー」
「高校生活初っぱなで怪我して陸上部を引退した訳だし、よかったんじゃねえの。もっとも、あれじゃあ完全に会話の外だけどな」
「そう言わない~応援してあげないと」
田村とやり取りをしてると、こちらに気がついた綾がよってくる。
「二人もこっちでお話しよーよ」
「断る。いきなり物理の話とかされてもついていけんわ」
脳みそがショートしたのか、新田が廃人になっている。
無理をするな、おまえに脳みそじゃ、それが限界だ。
「しっかし、綾ちゃんも頭いいねー」
田村が綾に話しかける。
「そんなこと無いよ。まだまだ知らない事いっぱいだよ」
そのまま、田村と綾が話始める。うむ、ついていけないな。田村ってこんなに頭よかったけ?
まあ、いいか。廃人と化した新田を尻目に綾に声をかける。
「そろそろ帰っていいか?」
「かわいい妹を置いて帰るわけ?」
「暇だ。俺はいなくても平気だろ。それに俺にはかわいい妹なんていないぞ」
綾が顔を近づけて睨んでくる。
「へーそういうこと言うわけ?」
まあ、事実なのだが……
「ここで兄妹喧嘩するな。毎日毎日」
新田が止めに入る。おー綾の目が怖い。マジで殺されそうだ。
「暇なんだ。なんで俺が綾と一緒に部活に出なきゃいけないんだ」
「お兄ちゃん約束覚えてる?」
「うっ」
「言うこと聞けないなら、話は無かった事にしてもいいのよ」
げっまじか?
「分かった俺が悪かった」
折れるしか無いか。ここで命を取られてもかなわない。
「ほんと、妹に弱いよなー」
「弱味握られてるにかな?今度、綾ちゃんに聞いてみよう」
「おい!なんか余計な事しようとしてないか?」
「別に~」
「何も」
「ちっムカつく」
結局、夕方まで部活を付き合うことになる、いつものことだが。なんとか現状を変えたいのだが……下手をすれば契約解除で殺されかねない。全く、どうしたものやら。
夕方、部活も終わり、綾と二人で家路につく。
「どういうつもり?」
「なんことだ?」
「私のことバラそうとしてる?
「さあね」
「命を失ってもいいの?」
「お前こそ、観測が中断になってもいいのか?」
「代わりはいくらでもいるよ」
「おっと、それは想定外だ。俺が悪かった。謝る」
「なんか、軽いね。プライドとか無いの?」
「脅しておいて何を言う。俺は命がほしい。」
「まあいいわ。これからもよろしくねお兄ちゃん」
「ああ、まかせろ!って、何か展開がおかしい気が……」
「ふふっ」
「何がおかしい?」
「別に~」
「ちっムカつく」
綾に対して違和感があるのは俺だけで他の連中は全く気がついていない。一学期は帰宅部三人衆だったのに、いつの間には綾も含めて四人衆だったことになっている。それがテスターの力なのかもしれないが、全く意味不明である。どうすればこんなことが可能になるのか。
そんなことを考えながら家路につく。家に着くまでの間、綾との間に気まずい空気が流れていた。