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命と引き換えに妹ができた!  作者: 飛村 勇
妹ができた!
2/22

01天文部結成

 夏休みも終わり高校一年の二学期が始まった。

 俺の生活は通常に戻った……と思う。

 もっとも夏休み前と今では事情が違う違う。1学期は一人で歩いた通学路を二人で歩いている。黒髪のストレートで腰までのロング、控えめな胸に小柄な背丈、平均的な日本人女子高生と言えばそうかもしれないが、何となくわざとらしい気がする。いかにもウケ狙った設定である。いずれにしても俺には双子の妹がて、妹の綾は同じ高校で同じクラスにいる。

 そして、その設定は前からそうだった事になっている。

 何でそんなことが出来るのかは俺には全く理解できない。

 綾に聞いたら、「デジャヴと同じだよ」と言っていた。ますます分からん。綾が言うには人の認知回路は現実と創造の区別がつかないらしい。

 それを利用すれば作り物の設定をいままでそうだったように思わす事は簡単なんだそうだ。

 しかし、それを集団で行うには無理があると思うのだが……それも宇宙人のテクノロジーなのだろうか。

 ああ、そうか綾は宇宙人では無いらしい。テスターと言っていた。何から何まで意味不明だが、俺は命と引き換えにすべてを受け入れることにした。そう、俺には他の選択肢なんて最初から無かったのだ。


「天文部を作ろうと思っている」 

 二学期が始まり二週間くらい過ぎたある日。クラスメイトの新田が唐突に言い出した。

「なんで?」

 即答で返す。

「宇宙にロマンを感じないか?大宇宙を前にすれば目の前の悩みも小さく感じてくる」

 なにを言ってやがる。こっちは大宇宙からダイレクトに干渉を受けてロマンどころの話では無い。

 もっとも、新田のやつに言えるわけないし、言っても綾が記憶操作しちゃうから意味ないけど。

「で、そのロマンとやらがどこから生まれたのかが疑問だ」

 新田は元陸上部員の脳みそ筋肉な男である。短距離選手で中学の時は県の代表にもなったことがある。だが、一学期の練習中に右足の腱を切りあえなく選手生命を終わらせた、なんとも不幸な男である。一学期はずっと松葉杖だったが、この夏休みでリハビリも終わったようである。

「新田くんの純情を直接聞くのは野暮だよ」

 いつの間には横に立っていた。田村明日香が声をかけてきた。田村と新田と俺は共に同じ中学の出身だった。もっとも、中学時代はほとんど面識は無かったのだが、クラスで同じ中学出身が三人しかいなかったので、自然と三人でつるむようになったと言うわけだ。当初、新田は部活に燃えていたが、あえなく脱落し帰宅部三人衆と化していた。

「おお。暇人の田村か」

 適当に応える。

「何か誤解がありそうだから今是正してもいい」

「いって!」

 おもいっきり人の腕をツネッて来やがった。

「俺が悪かった、言い直そう。井戸端会議好きなおばさんの田村か」

 今度はぐーが頬に直撃した。うがっ

「テメー。本気で殴っただろ!」

「言っていいことと、悪いことがある!」

「認めてはいるのか」

「はいはい、そこまで〜」

 綾の奴が仲裁に入って来た。

「お兄ちゃん、明日香ちゃんに失礼だよ」

「事実だし」

「そういう問題じゃないでしょ。ちゃんと明日香ちゃんに謝って」

「嫌だね」

「怒るよ、お兄ちゃん」

「あの〜」

 新田が口を挟んできた。

「俺の要件に戻していいか?」

「ダメなんじゃね」

「それひどくないか」

「所詮、新田の要件なんだからどうでもいい」

「お願いが……」

「要は天文部を立ち上げるのに頭数が足りないから、名前貸しをすればいいのだろ?」

「まあ、そうなんだけど」

「さっき、圭一郎から聞いたよ。名前貸しなら好きにしていいよ。部活に入る気は無かったからな。当然、 活動には参加しないからな。幽霊部員で頼むよ」

「ねえねえ、天文部ってなにするの?」

 綾が興味津々な顔で質問をしている。

 面倒な奴が喰いついて閉まった感が・・・

「そうだなあ。天体観測したり。宇宙の事を研究したりかな」

「そこまで本格的なのか?」

「私も天文部に入る」

 綾の目がキラキラに輝いている。しまった、こいつの前で宇宙の話をしてしまった。

「よし、これで人数が揃いそうだ」

 新田がうれしそうにしている。高校生にもなってそんなに天体観測がしたいものなのかね〜。

 正直、ちょっと呆れる。田村がしたり顔をしている。

「事情があるのよ」

「事情?」

「1組の井上和美っているでしょ」

「えっと、学年トップの井上?」

「そそ、その井上さんが天文部を作りたいって言い出した訳ですよ」

「なんで?唐突に?」

「元々、そっち系が好きだったみたい。うちの高校は天文部が無かったから諦めてたみたいなんだけど。なぜか最近、急に部活を始めたくなったらしいの」

「それでなんで新田が?」

「あんたそこまで鈍いの?」

「いや鈍くは無いけど、あえて言わせて貰えれば。無謀だ。井上にお近づきになったとして、バカの新田では相手にされないだろうに」

「そうなのよね〜。ちょっと痛い感じだよね」

「おまえら、本人が目の前にいるんだけど」

「ああ、すまん『痛い』新田くん。なんか用か?

「ひどい2つ名をつけるな!」


 部活を立ち上げるには部員6名、顧問1名が必要だそうだ。結局、俺、新田、圭一郎、井上、綾、田村の6名と現国の教師の平先生が顧問になることになった。

「平先生は天文詳しいのですか」

 新副部長の井上が平先生に聞いていた。

「そう聞かれると返答に困るな〜。僕は文系だからね」

 なんともフランクな教師である。10年目くらいの教師で去年結婚したばかりの新婚教師である。

 それもあり、業務が増える部活の顧問を避けていたようだ。もっとも文化部でこれからの部活なら負荷も少ないと考えた様で2つ返事でOKをもらったようだ。まあ、学年トップの井上の頼みとなれば邪険にもできないだろうけど。

 ああ、それで誰が部長かって?言わずとしれた新田のバカが部長を名乗りでた。井上もあっさり新田の意見を受け入れた。

 これで晴れて天文部の活動スタートってところだけど、実際に天文に興味があるのは井上とワクテカしている妹の綾だけな気がするのは気のせいだろうか。

 新田は冬休み前に天体観測を行なうと意気込んでいるけど、寒いし怠い。

 結局、体制も固まり形だけの天文部の活動が始まったのである。

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