00プロローグ
「お兄ちゃん、この問題解らないよ。教えてくれない?」
妹の綾が部屋に入ってきた。
見ると分厚い物理の本を抱えて、見たことも無い記号がいっぱいの公式を指さして、教えろとせがんでいいる。
容赦無く、妹の頭にチョップをいれる。
「いた〜っ何すんのお兄ちゃん」
「おまえは宇宙の真理を解読する気か?一回の高校生にそんな問題が解けるか!」
「ちぇ〜」
口を尖らして悔しがる綾。
「人類の英知がどこまでたどり着いているのか確認したかったのに〜」
「そうゆう、お前はどこまで理解してるんだ?」
「ん〜、アプローチの仕方が違うから、比べづらいんだけど。物理法則について銀河系内で起きてることは説明できるよ」
どんだけだ!まったく!
「わかりやく説明すると・・・」
「いや、いい。頭が痛くなるから。お前の話は」
「ちぇ〜」
得意そうに話始めようとした妹の綾を制する。
「もう少し妹を大事にしないとバチが当たるよ〜」
「へ〜1年限定で、天の川銀河の外から来た妹様も神様を信じているんだ」
嫌味を言ってみる。
「宇宙は解らない事だらけだよ。私達のテクノロジーだって『地球よりは進んでいる』程度だよ。神様の話になるとホント理解の範疇外だよね」
真面目な顔をして綾は首を傾げる。
「本当に悟りって開けると思う?」
「知るか!」
もう好きにしてくれ。
俺には妹がいる。ただし人間では無いらしい。宇宙人とも違うようだ。
自分たちの事をテスターと呼んでいる。何かの目的の為に地球にやってきた。
そいつが何故、妹かと言うと、そういう設定にしたらしい。
夏休みも終わろうとしていたある日、俺は死んだ。死んだはずだった。
その日、大型台風が接近してきているのに俺は海にいた。意味は無かった。サーフィンをしているわけでもない。家にかえる途中、荒れている海を見に興味本位で海岸に近づいてしまった。近づきすぎてしまった。一瞬の出来事だった、10mはあるのではと思えるくらいの大波に飲まれ、海に引きずり込まれた。海底で頭をぶつけた気がする。息苦しさと激痛にで意識が遠のいた。もう死んでしまうのかと思った時、空から光が降ってきた。
気がつくと砂浜に打上げられていた。夜が明け台風一過で空は綺麗に晴れ上がっていた。
「いた!お兄ちゃんだ」
妹の綾が俺に気が付き駆け寄って来くる。
その後ろから、両親も心配そうについてくる。
心配した両親と妹が探しに海岸に来てくれたのだろう。
「お兄ちゃん大丈夫?」
妹の綾が心配そうに覗きこむ。本気で心配そうにしている妹の綾に滑稽さを感じてしまう。
「ああ、平気みたいだよ。お陰様でね」
余計な一言を付け加えてみる。
「よかった」
妹の綾が安堵とは違う系統の笑みを浮かべる。ああ、うまくやるさ。
後ろから覗きこんできた両親は安堵の表情に変わる。
「綾の言うとおりだったな。探しにきてよかった」
親父が呟いた。
なるほど、綾って言うのか。
「大丈夫、お兄ちゃん」
「大丈夫だ。綾が守ってくれたんだろう」
それ聞いておふくろが笑みを浮かべる。
兄妹愛なんて感じてるのかな?。
「お兄ちゃんの無事を一晩中祈ってたよ」
妹の綾も調子を合わせる。俺はたしかに生きている。今はそれだけで満足だ。
限られた時間だとしても、後悔は無い。
その後、両親の小言を聞きながら、家路につくことになる。
端的に説明すると俺には妹なんていない。綾なんて奴は知らない。初対面だ。
だが俺には双子の妹がいて名前は綾。それが俺の命と引き替えに受け入れた条件だったようだ。
そう、俺は”命と引き換えに妹ができた!”わけだ。