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第九話 闘王リア

ーーーそれが仮に真実だとしよう。

なら、何故政府は動かない?魔導警察は動かない?

何故、闇市のオークションの居所などを精査しない。

情報が全く足りていない。

ルークが問おうとした時。

「さて、お前らだけじゃないだろ?まとめて殺してやるから、ありがたく思え!」

『このクズ野郎!……ルーク、今はそんなことを考えている場合じゃない。早く、あの技

を!』

砲口は、まっすぐにルークたちに向けられている。

つまり、サクヤたちも射程圏内ということ。

コガネが焦るのも無理はない。

ルークは憎々しげに奥歯を噛みしめ、

―――――くそっ! こうなったらやけだ! あいつをぶっ飛ばした後に、兵器のことは考える!

決意した。

コガネを横目に、叫ぶようにして指示する。

「コガネ、砲口の位置をずらせるか!?」

コガネは、びっくりしたような表情を浮かべたものの、

『当たり前だよ。僕は、他のどの犬よりも頭がいいんだから!』

ニヤリと笑い、一つ頷いた。

そして、

『もう一度あの技―――――、行けるね?』

「ああ――――、迷わない。行くぞ!」

ルークの瞳に、決断の色が閃いた。

うなずき、高らかに叫ぶ。

「―――――silverslight!――comeon!」

彼の左手に銀の光が再発現する。

その光が断続的に輝き、コガネの全身もそれに共鳴するかのように大きな煌めきを放った。

刹那。

「死ねっ!!」

『銀狼哮波ッ!!』

二つの光が交錯する。

それから数秒もしないうちに、甲高い金属音が響いた。

しかし、砲口の位置は変えられなかった。

重いだけじゃない。何かしらの魔力的なものの障壁が貼られていた。

焦るルーク。銀狼こうはをもう一度放とうとするが、間に合わないと悟り

ーーーここまでなのか?僕らの旅路は

まだ帝国にたどり着けてすらいないのに!

唇が切れるほど歯噛みする。


執行人の口元が歪む。


大地が焼ける。

空気が裂ける。


その破滅の奔流は、ルークたちを、村を、すべて呑み込んで一直線にぶち抜いて殺し尽くすだろう。


「くそっ……!」


ルークが歯を食いしばる。その最悪が迫ろうとし、もう一度コガネが前に出ようとした、その刹那。


――――キィィン。


甲高い金属音が、戦場に響いた。

熱線が止まっていた。


「……は?」


執行人が呆然と声を漏らす。

朱い奔流の中心に、

一本の剣が突き立っていた。

またもう一本はイグニション・バーンの口を裂いて右50度ほど位置をずらしていた。

剣は大地に深く刺さり、

その刀身がイグニッション・バーンの熱線を真っ二つに裂いており、熱線は左右へと分かれ、空を焼きながら流れていく。

ルークの瞳が見開かれる。


「……なんだ、この魔力、この2本の剣は……」


次の瞬間。

ドン、と重い音がして、

一人の人物が砲台の上に降り立った。

黒い外套が、風に揺れる。

赤い装飾の着いた鞘に手を置き、静かに言い放った。


「帝国兵器を、こんな場所で使うとはな」


男は右手を振り上げる。その動作だけで空気が張り詰めた。

執行人の顔から笑みが消える。


「お、お前は……」


男は振り返ることなく答えた。


「――――闘王リアだ」


「闘王リアだと……!なぜ貴様がこんなところにっ!」


何も言わずにイグニション・バーンに突き刺さった剣を抜いて剣身を見る。

綺麗な剣身だったはずだが黒く焼けこげており、使い物になりそうもなかった。

闘王リアは舌打ちする。そして、膝で黒く焼けこげた剣身を折った上でこう言った。

「お前のような無粋な輩なせいで、師匠からもらった剣が台無しだ」

「そんなこと知るわけ……つか、もう一本あったはず……ぐっ……」

首根を掴む。ギリギリと締め上げる。

ルークには砲台から瞬時に移動したように見えていた。流れるような無駄のない動きだった。

ハッハッと断続的で苦しむ声がその村を支配していた男から聞こえた。

それは支配が完全に途絶えた合図だった。

コガネとルークの体から力が抜ける。

座りかけた体に鞭打ってルークは闘王と名乗った男に近づいて言う。

「あの……助けてくれてありがとう。もう僕らは大丈夫だし、村は……ほぼ壊滅してしまったけれども、帝国にこれから行くので商会に報告もしなきゃだし……そいつを捕らえたら魔道警察に届けないか?」

「だめだ」

ルークの提案は即刻却下された。

「なぜか、聞いても?」

「こいつは俺の力の象徴である剣を一本を台無しにした。それにこの村の惨状を見てみろ? こんな状況下でなぜこいつを生かさにゃならん。お前とてこいつを生かしてはおけないと思ったのだろうに」

「でも、村のこの惨状を的確に伝えたり、帝国の兵器を持ち出した理由について追求しなきゃ……」

「無駄だな」

ルークがその短い言葉の真意を探ろうとした時、すでに遅く、闘王リアはその男の首を折り切っていた。

バキッという乾いた音とともに。

「ふん」嘲笑するように鼻息を少し漏らし、闘王リアはその男を投げ捨てる。

男は力なく地面に転がった。折れ曲がった首が痛ましい。

吐き気を催しそうになるのを必死に堪えて、ルークは闘王リアの胸ぐらを掴んで叫ぶようにして言った。

「なんで殺した!」

『ルーク、だめだよ! そいつは最強の人物だ。食ってかかったら何されるか!』

「犬の方が分かっているようだが? 手をどけろ。煩わしい」

「黙れ! 僕は村人を無造作に殺しまくったこいつの命はどうでもいい、真実を明らかにしたいって言ってんだよ!」

「たかが旅商人風情が笑えるな」

闘王リアが手を払う。バチという音とともに手が離れた。

ルークの手が少し腫れる。

だが痛みなど無視してルークは言った。

「お前……僕たち旅商人を舐めたら承知しないぞ」

「どう承知しないんだ? 言ってみろよ」

挑発するようにいう闘王にルークは物怖じせずに言い放った。

「次のコロシアムに僕らも出る。そこでその鼻っ柱をへし折ってやるよ」

「ほお」心底面白いと言ったように闘志の焔が闘王リアの目に現れ、敵意剥き出しの笑みを浮かべた。

「やってみろよ。面白いじゃないか……名はなんだ? 答えろ」

「僕は……ルーク」

「ルークね、OK。次会う時はコロシアムだ。

じゃあな」

背を向く闘王。

その際に必ず潰すと小さく聞こえた気がするがルークはお構いなしに、遠ざかっていくその背中を睨み続けた。


しばらくして。

コガネは『色々あったけど僕たちの、勝ちだよ』

笑った。

「ああ……強敵ができたけどもね」

ルークは苦笑する。

『それはルークがあんな啖呵を切るからだよ〜。ほんとバカなんだから』

「うっさいよ」

『とりあえず』

「ああ……おつかれ」

1人と1匹は、

パンッ

と勝利のハイタッチを交わした。

生き残っていた村人たちわずか数人に笑顔が戻る。

だが、押さえつけていた感情が溢れたのだろう、泣き出す者もいた。

何故早く来なかったんだと怒鳴るものもいた。

ルークたちはそんな中でも、彼らを救えたことが誇りに思えた。

しかし、ルークの内心、その奥深くに引っ掛かりがあった。

それは、細く細く糸のようなもの。また、それでいて、つかめない雲のようなものでもあっ

た。

―――――イグニション・バーンの入手経路。帝政、魔導警察の闇世界への無関心

何かが、おかしい。ただ、疑問が渦を巻く。

村を離れ、荷馬車にコガネとともに帰還して乗り込むも、ルーク胸中に残る得体のしれない

気持ち悪さに顔をしかめていた。

―――――僕たちは、何かとんでもないことに巻き込まれているのではなかろうか

そう、思えて仕方なかった。


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