帝国編 十四話 怪盗オーガルの予告状
カマル達が帝国軍基地に行っていたころ、レイドは魔導警察本部、ケルトはその警察本部の右にある魔導探偵事務所組合の中に来ていた。
必要な書類の提出が終わり、2人は携帯端末を持って同じ場所に向かう。
並んで歩くのはずいぶん久しぶりのことに感じる。
レイドが自分の頭の後ろに両手を回す。
「とりあえずこれで、魔導探偵事務所の起業はできるわけだよな? お前の階級が深度Aで良かったよ。成績優秀で嫌味だなと思ったけども!まあ、Dならまだ見習いだしな〜。 俺は警察所属だから警察学校横の寮暮らしでも良かったけども……」
嫌味って君ね……というケルトの苦笑をよそに笑うレイドにケルトはため息をついて言った。
「これもカマルのためだよ。僕らにも寮があるけどそれだとカマルの住まう場所がないでしょ?」
「そうだな〜 あとは……気に入らねえが、あいつらもか?」
「まだそんなこと言ってんの? いい加減に認めてあげなよ」
「それはコロシアムであいつらのリーダーが俺に勝てたらの話だよ」
絶句するケルト。「……え」思ったよりも声が出た。そんなケルトを見て笑いながらレイドは言う。
「なに絶句してんの、お前」
「いやいやいや! 警察の君がでちゃダメでしょ? コロシアムだよ? 規定で禁止されてるでしょ!?」
「そんなん知るか〜 警察の収入だけでカマルやお前を養えるかってんだ。バカも休み休みいいなよ」
「ほんと聞かん坊なんだから……とりあえず、事務所になる部屋の登録は終わってるからあとで紹介するね」
「おう、よろしくな。 っておい、俺は聞かん坊じゃねえよ!」
そうこうしているうちに着いた。警察本部3階大会議室だ。
のべ200人を収容できる部屋で、重大事件及び任務の詳細を伝える時はここで行うのである。
そして2人は室内の様子に圧倒された。
150人はゆうに超えている。
人、人、人……。ここまでの人員を投入する事件内容を説明するというのか?
ケルト、レイドは顔を合わせて頷きあった。
係のものから資料用のタブレット端末を受け取り、促された自分らの席に着く。
しばらくして。
魔導警察本部長ジーニアス、魔導探偵事務所組合長イルトの2人が現れた。
室内の様子はさらにひりつく。
ジーニアスはマイクを持って言う。
「君たちは怪盗オーガルを知ってるかな?
巷では義賊に近い存在で、薔薇とともに手紙をよこしたり花びらをばら撒くなどと言ったパフォーマンスをしたり、ならずものを1人で半壊させて盗まれたものを盗み返して元の場所に返すなどをしてるらしいとのことだ。……世間を舐めた気取った奴だよ」
ジーニアスは指をパチン鳴らした。
背後に巨大で空中に浮かぶ青い枠のようなものが浮かび上がる。
それになにやら写真が映し出された。
手紙だ。
『帝王歴1050年1月20日深夜2時ごろ、帝国美術館及び博物館からそれぞれ1番大事なものをいただく。名を確か『マフティフの殺戮』と言った絵画だったかな、それがあれば帝国の黒い歴史を暴けるだろう。あとは……ブルーローズライトと呼ばれる世界最高技師が星見回廊研究所の助力のもとダウジングで見つけ、そしてその鉱石を何年もかけて削ることで綺麗に整えた帝国を落とすには十分な価値のものをいただくよ。
首をせいぜい洗って待っているがいい。
怪盗オーガル
ああそれと、イルカルダム架け橋事件は知っているかな?』
この期日はちょうど一週間後だ。
「1週間後の美術館及び博物館の展示物盗難予告に向けて……この予告状を差し向けてきた怪盗オーガルに対抗するため明朝5時から包囲網を張る」
ジーニアスが忌々しげに言う。
「帝政に傷をつけてはならない。貧困問題もまだ解消できてないのに、ここで怪盗を名乗るものに帝国の闇を暴くものを色々盗まれてみろ。大打撃だ。そう言うことはあってはならない」
机をガンッと叩きつける。金属質な音が間延びして響いた。
「諸君らに命令する。必ず、怪盗オーガルを捕まえろ。帝国軍に頼らず、我ら公安と探偵諸君の力だけで必ず犯人を見つけ出せ。
大捕物だ。みな、心してかかれ!」
その警察本部長ジーニアスの声が雷鳴の如く響いた。
レイドとケルトも全員に倣い、大きい声で
「了解!!」と敬礼した。
しばらくして。出ていく皆に続き資料をまとめ始めるレイドにケルトは言った。
「とりあえず僕たちは博物館に行こう。あとは星見回廊研究所も聞き取りに行った方がいいかもね」
ケルトのその方針にレイドは頷いた。




