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帝国編 第十二話 帝政に潜む闇

カマルたちは紅く燃えるような色合いの巨大な建物の前に来ていた。

その門を守るように青い甲冑を着用し、赤い兜をかぶった兵士2人が黒塗りの槍を持って立っている。

帝国軍基地だ。

名をーーー帝国軍基地「フレイムマスカレード」と言う。

燃え盛る炎を基調としたイニシャルがあり、帝王直轄の最高位部隊がその基地の第一当地に構えている。

第二、第三となるにつれ位は下がるが第二当地に50人規模の軍人がおり、第三当地に60人の研修生と50人の研修生時代をしのぎ切った軍人が在籍している。

彼ら2人は第三当地の軍人なのだろう。兜のところに3Aという文字が刻まれていた。

カマルはその者たちに話しかける。

「こんにちは……私たちは旅商人です、あの……ちょっとお伺いしたいことがあってご挨拶に来たのですが……上がらせてもらえませんか?」

「どこの地区に行きたいかによるね。第一地区は帝王直轄だから帝王直々の許可がいる。それに第二当地も中に入ろうと思ったらなかなかに手続きがいるね……それに今だと、大体3、4ヶ月は待たないと第二当地にお伺いできないんじゃないかな?」

「そ……そんなにかかるんですか?」

「それこそ、旅商人の護衛や第一線の魔物討伐など多種に及ぶ任務に追われてるんだ。僕らの在籍する第三当地ですら研修生の育成に忙殺されている感じなんだよ」

「だから君らを相手にしてる暇はないかな〜」と面倒くさそうに言われてしまった。

「らちがあかないね」しびれを切らしたサクヤが前に出る。

「あんたらの帝国軍基地で試作していたはずのイグニション・バーン……それが、ならずものに出回ってるそうじゃないか。

私たちは死にかけた。どう落とし前つけてくれるんだ?」

『サクヤやめなよ』と言うコガネを無視してさらにこう言った。

「お前ら魔物を本当に壊滅させようと努力してるのか? 帝王のいいなりじゃないとなにもできないのかよ、笑わせるね!」

「なんだと貴様、俺たち軍人を疑うのか? 国家反逆罪でこの場で処刑しても構わんのだぞ」

「器が小さいね、やってみろよモヤシ野郎。粉微塵にしてやるよ」

サクヤが牙をむいて唸るように兵士を睨みつけた。

左腰につけた短刀に手をかける。

その時、

「双方矛を収めなさい。宗教団体カルデア教主ユーネリア様の面前ですよ」

凛とした声が響いた。

その声の方に顔を向ける。

すると、腰のあたりまで伸ばした銀髪で黒い修道服を着た女性と錫杖(しゃくじょう)のようなものを持った50代くらいの男性が2人並んで立っていた。

声の主は女性の方らしい。

男性の方はルビーとサファイアを太陽の形に模った首飾りをしていた。

その男が教主ユーネリアなのだろう。

何かしら仰々しい。女性が舞台上の挨拶のようにうやうやしくして言う。

「申し遅れました。私はイシュカー・クレイドルと申します。

先ほど言い争れていたイグニション・バーンの正式名称は殲滅型崩壊熱砲(せんめつがたほうかいねつほう)。術者のほんの少しの魔力のみで駆動し、敵を細胞レベルで破壊する……融解が正しいですかね。その熱線で直径30kmまでの対象を殺し尽くす兵器です。それがあれば、魔物『も』恐るるに足りません」

「魔物も?引っかかる言い方ですね」

カマルがそうきくと、心底バカにしたふうにイシュカーは笑いながら言った。

「それは申し訳ございません、たかがならずものに渡ったくらいでそのように取り乱すあなた……サクヤさんでしたっけ?のおもちになっている脳みそがあまりにも愚鈍すぎて」

「な……」絶句するサクヤ。

さっきまで野犬のように牙を剥いて怒っていたのに、今は突然の嘲るような言葉に呆気に取られていた。

それに畳み掛けるようにイシュカーは言う。

「あらあら? 何も言えないのですか

お可哀想に」

『そこまでにし…。』コガネが止めようとする。だが、

「そこまでになさい、はしたない」

低く、それでいて効果的な短い言葉だった。

イシュカーの目が少し怯えを含んだのをカマルは感じた。

少しおかしいな、と。だがサクヤに言った言葉があまりに強烈だったのでカマルはすぐに考えを切り替える。たぶん気のせい。修行が厳しいだけだろう、と。

「申し訳ございません、教主様」

イシュカーが教主に謝罪する。

よいと言って視線を切り上げ、サクヤに目を向ける。

「これは失礼した。見たところ旅商人の方のご様子。我が信徒のご無礼を許していただきたく思うのだがよろしいか?」

「もちろん構わないけど……」

「それはありがとう」

教主がほっとしたような笑顔を向ける。普通にどこにでもいるような男の人に見えた。

ーーー優しそうな人。

カマルはそう思った。サクヤが聞く。

「あんたは、帝国兵器のことを知ってるの?」

「ええ、知ってますよ」

「ちょ……教主様、部外者に話しては……」

「そうですよ……国家機密が……」

「イシュカー、兵士さん、いいです。大丈夫ですので」

「しかし……」

いいからと両手をあげ、

「開門していただき、実際に兵器を見ながら話した方が良いでしょう」

そう言いつつ、兵士に門を開けるよう促した。

兵士たちが頭の後ろをかきながら顔を見合わせ……そして開門した。

重い鉄できた門が開くーーー。


第二当地 地下の実験施設その兵器工場内部の部屋にて彼は言った。

「私の魔法からこの兵器は立案されたのです」と。

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