エピローグ「溶け合う体温の先へ」
それから数年の歳月が流れた。
特務機関の若きトップとして君臨するヴィオの冷徹な手腕は、王都の裏社会を完全に掌握し、国にかつてない平穏をもたらしていた。しかし、どんなに外で恐れられ、血と謀略に塗れようとも、彼が帰るべき場所はただ一つ、ルカが待つ屋敷の寝室だけだった。
夜更け。仕事を終えてベッドに入ったヴィオの腕の中には、いつもと変わらずルカがすっぽりと収まっている。カピバラ獣人の高い体温が、ヴィオの疲れ切った身体をじんわりと解きほぐしていく。
「ヴィオさん、今日もお疲れ様でした。最近、なんだか寝付きが良くなりましたよね」
ルカはヴィオの胸に頬をすり寄せながら、嬉しそうにつぶやいた。ヴィオはルカの亜麻色の髪を撫でながら、静かに目を閉じた。
「お前が暑苦しいから気絶しているだけだ。……だが、悪くない」
ヴィオの口から悪くないという言葉が出るのは、彼なりの最大級の賛辞だ。かつては氷のように冷たく、誰にも触れられることを拒んでいたヴィオの心は、ルカという太陽によって完全に溶かされ、満たされていた。
ルカもまた、ヴィオの不器用な愛と執着に包まれることで、何者にも代えがたい安心感を得ている。彼らの関係は、もはやどちらが欠けても成立しない、完璧な共依存の形を成していた。
「これからも、ずっと一緒にいてくださいね、ヴィオさん」
「……当たり前だ。お前は一生、俺の抱き枕だからな」
言葉の裏にある深い愛情を互いに理解し合いながら、二人は毛布の中で強く抱きしめ合った。
外の季節がどれほど巡り、世界がどう変化しようとも。この小さな陽だまりのような空間だけは、二人の溶け合う体温とフェロモンによって、永遠に守られ続けていくのだった。




