第5話「分からない、出来なかった」
〜翌日〜
〜梅野家〜
〜葉留佳の部屋〜
「……なにも感じない。」
「やはり…か。やっぱり昨日の『あの出来事』が…」
「まあでも今度は私がお前を『助ける番』だな。」
「…『あの時のお前』はかなり荒れていたよな。」
「はは。…そうだな。」
そうして竜馬は自分と葉留佳の過去を葉留佳に話し出した。
〜四年前〜
〜渋谷区道玄坂中学校〜
〜教室〜
此処は渋谷区道玄坂中学校の中二三組の教室。因みに何故、四年前かと言うと実は葉留佳は『参宮橋公立男子高等学校』に入学して、一年留年しているからだ。因みに参宮橋公立高等学校は公立の普通の男子高校だ。ただ渋道よりもイジメは少ない。
「(今日は転校生が来るって担任が言ってたな。)」
「(まあこんな所に転校してくるなんてそうとう変わっていると思うが。)」
「──失礼します。」
葉留佳が様々な事を考えていると、転校生が教室に入って行った。その人の名こそがのちの友達になる逢阪竜馬である。
「えー『自己紹介』?なので簡潔に話します。」
「私は『逢阪竜馬』と言います。」
「前の学校では『良くない事』が起きてまともに学校にいることが出来なくなりました。」
「だから別の場所に行くのが良いと言う『恩師』の導きによって『この学校』に来ました。」
「…約一年間半宜しくお願いします。」
竜馬はまるでロボットのような自己紹介をした。それが葉留佳には気持ち悪いと感じさせた。
「(うわ…なんだコイツ…機械みたいで気持ち悪い…道玄坂中の奴らとは別の意味で。)」
「(しかも此処って転校生には優しくしろって言うルールがあるんだよな…うわ最悪!絶対アイツと仲良くしろとか言われるパターンだ…)」
「逢阪さんありがとうございます。では梅野さんの隣の席に向かって下さい。」
さらに担任の言葉が追い討ちをかける。葉留佳は「終わった…」と感じていた。
「(あ。これ俺、人生終わったな。こんな一般常識が欠けてそうな奴と隣なんて。)」
「──宜しくな。『梅野』?さん。」
「…………どうも。…るせぇな。」
葉留佳は挨拶をするのが面倒だったのでぶっきらぼうな言い方をした。
「ねえ。梅野さんさあ、あまりにもぶっきらぼう過ぎない?こんな常識ある生徒に対してそんな言い方するなんて。」
「いや分かる。逢阪さんは転校生で少しくらいは緊張しているから在校生が何とかしないといけないのに…」
「まあもし困ったら教師達に言ってくれれば一番、良いんだけどね。」
しかし、それは他のクラスメイト達に聞かれていた。葉留佳はその愚痴を聞くと嫌そうな顔をしながら黒板を見た。
「(ちっ。これだから道玄坂中の奴らは。皆は逢阪の言い方を見て気持ち悪いと感じないのか?)」
「(ああ。そうか。道玄坂中の奴らは元々、気持ちの悪い奴らばかりだったな。そりゃあ逢阪を気持ち悪いと感じる訳無いか。同族だし。)」
葉留佳はまるで皆を憎んでいるかのような言い方を心の中でした。だが、その顔は竜馬に見られていた。
「(ん?『梅野』?さんは『おかしい顔』をしているな。何でだ?そんなに私の挨拶がおかしかったのか?)」
「(それに睨んでるのは『クラスのメイト』の方…?あんなに私に『優しかった』のに?)」
「(『梅野』さんは変わってるな。此処の学校、『中学校一年生』はともかく、『それ以外』は良いって聞いたのに、もしかして『それ以外』も悪いのか?)」
「(……私は機械的だからあまり気にしないが。)」
「(『梅野』さん…私に近いと私自身が感じるのは何故?)」
竜馬は答えの無い問いを自問自答する。その時間はあっという間に過ぎていった。
そして放課後──。
〜放課後〜
〜廊下にて〜
「はあ…学校ダルかった…それはいつもの事だけどさ。」
「何より逢阪竜馬って奴が転校して来たのが困る…あんな奴…絶対にめんどくさいだけだろ…」
葉留佳は竜馬の愚痴を言いながら廊下を歩く。すると──
──(ゴンッ!)
誰かとぶつかってしまった。
「痛っ!」
「…ああ、すいません。俺、ボッーとしてしました…って、は?」
何とぶつかったのは逢阪竜馬とだった。
「は?何でお前なんかぶつかって…」
「…それは申し訳ない。私だって周りを見ていなかった。」
「──ふざけんじゃねぇ。」
竜馬が謝ったのにも関わらず、葉留佳は竜馬の胸ぐらを掴んだ。
「…ん?」
「大体さぁ、お前何で、ずっとスマホいじってんの?そのせいで俺にぶつかったんだろうが!」
「そもそもなんで歩きスマホしてんだよ!そんなの常識ないなどの話じゃねぇぞ!」
「もし帰り道に歩きスマホしていて他校の生徒とぶつかったらどうすんだよ!そんな舐め腐った態度で他校の生徒は『あー全然いいよ!』なんて言う筈無いだろ!」
ボロクソにだが事実を言う葉留佳。だが、その強い言い方は竜馬を刺激する。
「…だったら『すいません』は何だ?『すみません』とは違うって聞いた事がある。」
「公の場で『すいません』を使うのは良くないって『恩師』は言ってたがそれは違うのか?」
「もし『恩師』の言ってる事が本当なら『梅野』さんが言っていた『すいません』という言葉こそ舐め腐った態度であると言えないか?」
「その『舐め腐った』という言葉を使った『梅野』さんは自分は『本当に舐め腐ってなんかいない』って言えるのか?もしくは『自分はとても正直だ。』と言えるのか?」
長い長い話を続ける竜馬。しかし、長い話が嫌いな葉留佳にはそれがさらに腹を立てた。
「うるせえんだよ!」
「大体なんだよ!そんな機械的な反論!お前はただ単に誰かにだけ指示されて動くそんな意志の無い奴かよ!?」
「…お前の恩師と言われている人物が何なのかは知らないけどさぁ!」
「お前は自分の気持ちなんか持ってないのかよ!?」
「自分の気持ちはどうでもいい物だって考えているのかよ!?」
「自分はただ人に指示されるだけの為に生まれてきたのかよ!?」
「自分の意見なんかどうでも良いなんて思ってんのかよ!?…思ってるよなぁ!?」
大きい声で怒る葉留佳。だが、竜馬はその言葉一句を逃さなかった。
「(…『自分』の意見。)」
「(…つまりは『私の意見』、『私の考え』。)」
「(私は…『私自身の意見』を言ったり、考えたりした事があったのか?)」
「(私の中で『微かにあった物』が『梅野』さんの言葉でハッキリと濃くなっていっている…)」
葉留佳に反論していた竜馬は声を発さなくなった。
葉留佳はそれに疑問を持っていたが、その疑問はすぐに解決した。
「(やっぱり予想通りだ。)」
「(コイツは自分の意見がなんなのかのか分かっていない上に、それを考えた事も無い。)」
「(...何だか親近感を覚えるな。コイツと俺は真逆の性格を持っているのに。)」
「あのさ、逢坂竜馬だったけ?もしもだけどさあ?」
「──俺と友達というモノになってみないか?」
葉留佳は無意識にその言葉が出ていた。そして言い方は何故か上から目線である。
「.............『友達』。」
「それは、良い物だ。」
「分かった。私は『梅野』さんの友達になる。」
竜馬は自分の意思で葉留佳と友達になる事にした。
「へえ。お前、見る目あるな。」
「まあ、それはともかく、今日から逢坂は友達だ!...あ、あのさ。」
「竜馬って呼んで良いか?」
「ああ。私はどんな名前で呼ばれようとも嫌な気持ちにはならない。」
「じゃあ宜しく。竜馬。」
「宜しくお願いします。『梅野葉留佳』。」
竜馬は葉留佳の事をフルネームで呼んだ。それには葉留佳も笑った。
「お前、何だその呼び名~フルネーム?面白くて笑いが...」
こうして葉留佳は数少ない友達を作る事に成功し、竜馬も転校先での初めての友達が出来たのだった──。
皆さんこんにちは。小山シホです。さて今回は葉留佳と竜馬の過去編ですね。今よりずっと言葉がキツい葉留佳と今より少し機械的な竜馬は果たしてこれからどうなっていくのか。そして地味に明かされた葉留佳が留年していた事と葉留佳の高校。物語は複雑になります。
あ、次回は解説編しますのでお楽しみに!!




