第4話「誰にも浸食されない場所」
【睡蓮】の悪い心は〈〉で囲っています。
~数日後~
~植道家 蓮翔の部屋~
「...『ONLINE Code』は【梅】、ログインしていない...もうログインしていない日大分長いのに..」
「これはメンバーに連絡だな。こんな状態だと音楽活動がまともに進まないし、それに」
「──アイツに会えなくなるのは嫌だ。」
そう言った蓮翔はサークルのメンバーに『ONLINE Code』でメッセージを送った。
その頃、【桜】は...
「え?何、このメッセージ。【睡蓮】から?」
「まだ【梅】は見つかってない...おかしい...もしかして【梅】はサークルの事...」
「こうなったらもう今日のサークル活動は一旦、中止にしよう。それよりも【梅】を...」
【桜】は『ONLINE Code』に今回はサークル活動を一旦中止にするという内容のメッセージを送った。
一方、【松】は...
「【睡蓮】から...?【梅】を探す為に【梅】の家に行こう?え?今から...?」
「まあ彼奴がずっといないのも違和感だしね。あたしも行くっと。」
こうして三人は【梅】の家に向かう事となった。
そして今、【梅】は何をしていたかと言うと...
~狭い部屋~
「竜馬。いきなりで申し訳無いが俺にもこの作戦が正しいのかは分からない。」
「でも俺にはこれしか思い付かなかった。少なくとも暴力をするよりはマシだ。」
「...お前、本当に変わったな。初対面の時からは想像できないくらいにな。」
竜馬と葉留佳が初対面の時、葉留佳はとてつもなく荒れていた。竜馬が渋谷区道玄坂中学校に転校してきたのは中二の秋くらいなのだがその時の竜馬は今よりももっと機械的だった上、一般常識が少し欠けていたので葉留佳からは嫌われていた。だが竜馬が自分の過去を話した事により、二人は友達になった。
「まあ…そうだな!あ…」
竜馬と葉留佳が話していると、
──(ピンポーン)
「遂に来たか。アイツら…」
礼儀正しくチャイムを押した蓮翔達が家の前にいた。
「礼儀正しくアイツらの前に出てやるか。」
〜梅野家 玄関前〜
「おい。【梅】はいるか?」
「.......何の用だよ。」
「お前に何があったのか俺には分からない。だけど」
「何の連絡もくれないのは流石に心配するだろ。」
【睡蓮】の言葉。それは紛れもない本心だった。だが【梅】は寧ろ、怪訝そうな顔をする。
「あのさあ?お前、あまりにも常識がなさ過ぎるだろ。勝手に人の家に来るなよ。」
「──それはそうだ。残念ながら『此奴』の言う通りだ。」
すると何処からともなく話を聞いていた竜馬が飛び出してきた。
「えっ!?だ、誰!?」
「...友達?」
【桜】と【松】は見た事の無い人に驚く。やはりというべきか、【睡蓮】も驚いていた。
「誰だ?あんたは?」
「...私は『逢坂竜馬』だ。...名前は名乗った。これで満足か?」
「逢坂竜馬?一応、何故か名前だけは聞いたことはあるけど...確か何処かの音楽サイトで。」
実は竜馬は音樂団集とは別の音楽サイト「ミュージカルプロテクト」で活動している人でもある。「ミュージカルプロテクト」での名前は「おうさか達馬」。
「それはどうも。だがもう勝手に家に入ってきたお前達には『此処から出てもらう』。」
竜馬は冷静な口調で言う。すると【梅】が怒った顔で言った。
「...っ。サークル活動している【桜】、【梅】、【松】達お前らに言うけどさ。」
「人の気持ちも分からないのに勝手な行動をするなよ!!はっきり言ってただ単に迷惑だし!」
「俺の『ほんとうの気持ち』なんて知らなくて調子乗っている癖に!」
「特定の時だけまるで心配しているみたいにさあ!それだったらいつも...!」
「『梅野葉留佳』...いや、【梅】。そんな言い方はもう必要ない。」
しかし友達である竜馬が【梅】を止めた。【梅】は驚きながらもなんとか正気を取り戻した。
「...申し訳ない。私の友達の悪い所を見せて。だが。」
「お前達には此処から出てもらう。もう、此処にいても『彼奴』はお前とは話してくれない。それに」
「──【梅】に言われた事だから。」
「....っ!!」
【桜】、【松】、【睡蓮】の三人は竜馬になんの反論も出来なかった。仕方が無く、【梅】の家から去って行った。
「だが、『梅野葉留佳』。もしかしたらお前の『本当の気持ち』が分かるのは彼奴らなのかもしれないな...」
~数十分後~
~各自の家~
『はあ。ほんっとに最悪。』
『彼奴、元から性格が良いとはまあ言いづらかったとはいえ...まさかあれほど言葉が強いなんて。』
『そんな事言っても【梅】にあんな言われようだし...まあ、此処数日間は【梅】の事は忘れるしか無いのかも。』
【桜】と【松】が話し合う。だがそれに疑問視している人がいた。【睡蓮】である。
『(本当にそれが正しいのか?』
『(なあ、【梅】。本当はお前、明らかに辛い過去があったんじゃないのか?)』
しかし、此処で【睡蓮】の悪い心がまた蘇ってきた。
〈おいおいおい。またお前、勝手に人を信じるのか?それで何回、邪魔されたと思ってるんだよ。〉
「(違う!黙れ!だったらあんな辛い表情でそんな言い方しないだろ!)」
〈俺様はそう思わないが。あれはただ騙そうとしているだけだろ。どう考えても。〉
「──黙れ!!!”おまえ”!!いつもいつもやかましいだけの癖に!!」
〈ちっ。仕方ねぇな。今回はこれで去ってやるよ。〉
〈だが、俺様の言っている事は間違っていないからな?〉
「...あ。まずい。これもしかして...」
【睡蓮】は終わったと感じたが幸い、ミュートだったのでメンバーにはその言葉は聞こえなかった。
「良かった。ミュートだったんだ。...音声オンっと。」
『【梅】なんて才能ありそうだから別にアタシ達とやらなくても良さそうだしね。』
『…………そうだね。』
『(違う。何で二人とも【梅】をどうでも良い事のように言うんだよ…!)』
『(大切な仲間じゃないのか…!?【梅】は!じゃあわざわざサークルを組んで音楽活動しているのは何の為だよ!)』
【睡蓮】は心の中でそう思ったがそれを口に出す事はしなかった。
『──あ、ああ。そうだな!今日は取り敢えず音楽活動は中止にするか?』
『そうだね。こんな状態でやっても集中なんて出来ないから。「ONLINE Code」での活動は中止にしよう。』
『分かった。【桜】。それじゃあ切るね。』
『私も切らないと。』
『……俺もだな。』
皆は一斉に『ONLINE Code』をログアウトした。
「………何か彼奴、もしかして…」
「(あたしと似ている人なのかな…)」
「(じゃあどうして苦しんでるの?こんなに才能もあるのに。音楽サイトを作れるレベルなのに。)」
「あたしに分かる訳無いよ。」
真亜菜は複雑な心情だった。それは疑問とも言える上に同情の感情とも言えた──。
皆さんこんにちは。小山シホです。さて今回、初めてメンバーが【梅】の家に行きましたね。まあすぐに竜馬と【梅】自身に出て行けと言われるんですけど…
因みに当たり前ですが許可なしに人の家に勝手に行くのは辞めましょう!
次回予告
翌日の朝、【梅】と竜馬は自分の家の中でただ思い出していた。それはまだ中学生だった時の頃の話。決して軽くない過去を思い出す──。




