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2 タイムマシン探し

 翌日は、土曜日にもかかわらず、真司は朝早く目を覚ました。いつもは遅刻するくらいギリギリまで眠っているのに……。


 「あら、真ちゃん、早いのね」

 真司の母親が目玉焼きを焼いていた。


 「うん、今日はタ……」

 といいかけて、真司は考え直した。タイムマシンっていったって、きっと、笑われるだけだ。


 「どうしたの、真ちゃん?」

 「ああ、宝探しに行くんだ」


 母親はニヤリとした。

 「トム・ソーヤーみたいにお友達と冒険ごっこするのね。近ごろの子供は外で遊ばないから良いことだわ」

 母親は勝手に解釈した。


 本当は1人で行くのだけど……

 真司は否定するのも面倒だったので、これ以上何もいわなかった。


 母親が食卓に真司の朝食を用意した。トーストと目玉焼きとポテトサラダ、そして、デザートに柿だった。


 真司はトーストをかじると、


 「畑の三つぐわとスコップを借りて行くよ」

 と、もごもごいい、そのまま表に出た。


 「あら、全部食べていないじゃないの!」

 玄関から母親の声がしたが、真司は前日からタイムマシンのことで頭がいっぱいで、食事どころではなかった。


 紙切れを見つけたのは数日前だが、その時から麻子のことを知りたいと思った途端に、この思いは消えなくなった。

 真司はガレージから自転車を出し、三つぐわとスコップをサイドにうまくくくりつけると、桜広場へ急いだ。



 10月の桜広場は、ピンク色や白色やワイン色のコスモスが色とりどりに咲き乱れ、風にゆれている。


 あの紙切れによると、マシンT-56は、コスモスが生えていない桜の木の根元にあるらしい。

 桜の木といっても12本もあり、みんな樹齢100年を越えているものばかりだ。広場の真南の桜の木を時計の12時のところに見立てると、真北にある6時のところの桜の木の下に、タイムマシンは埋められているようだ。


 この桜広場は、ロンドンのビッグベンに見立てられているのだろうか?


 真司はこんなことを考えながら、6時の桜の木が生えている地面を見た。短い草がきれいに生えている。誰かに掘り起こされた形跡はなさそうだ。


 真司は、三つぐわをおもいっきり地面に振り下ろした。地面は固かったが、何度もくわを振り下ろしていると、だんだん掘りやすくなってきた。通行人が怪訝そうな顔で真司を見ていくが、話しかけられなかったので、無視して堀り続けた。


 30分くらいして、ガチッという三つぐわが何かに当たる音がした。真司は三つぐわを置き、素手で慎重に土をかき分けると、ティッシュペーパーの箱がすっぽり入るくらいの大きさの錆びた鉄の箱が出てきた。


 真司は周囲を見渡し、誰も見ていないと分かると、慌てて自転車のかごの中に入れ、帰路についた。

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