1 過去からの案内状 5
真司は帰宅して自分の部屋に入ると、あの紙切れを学生服の右ポケットから取り出して、机の上に広げた。そこにはこんなことが書かれていた。
来たれ、未来からの依頼人、
過去への扉は開かれた。
ベーカー街221Bで待つ。 S・H
と、大きな文字で書かれ、その下に、少し小さめの文字で次のように書かれていた。
マシンT-56は、日の出処る国の最東端より西方へ650㎞。
マシンT-56は、時空を自由に行き来できるワンダフルマシン。
とあり、その裏に、マシンT-56のありかを誰かが、詳細に解析したものが細かい文字で記されていた。
そのメモによると、どうやら、真司が住んでいるこの桜ヶ丘町の12本の桜の木に囲まれた桜広場に、マシンT-56が隠されていることになる。
この紙切れを見つけた時、真司は自分の目を疑った。
ホームズはイギリス人なのに、どうして、日本語で書かれてあるんだろう?
でも、だんだん喜びに変わっていった。
きっと日本人の誰かが訳したものにちがいない! この紙切れに書かれていたことが本当なら、あのシャーロック・ホームズに会えるかも知れない!
このことを早く誰かに知らせたかった。どうせなら、ホームズのことをよく知っている人がいい。
真司の友だちはマンガは読むが小説は読まない。真司もマンガと推理小説以外はほとんど読まないので、似たようなものだったが……。
そこで、思い浮かんだのが二宮麻子だった。でも、あの調子では話しかけられない。
二宮に何があったんだろう?
麻子の顔が一瞬よぎる。真司は胸がドキッとした。それが何なのかよく分からなかったが。真司は急に麻子のことをよく知りたくなった。
麻子と言葉を交わしたのはほんの数回だったが、うわさは耳にしたことがある。でも、そんなに気に留めていなかったので、よく覚えていなかった。
確か、二宮は、小学5年生の時にこの町にやってきたとか、公平がいっていたっけ。
何があったんだろう?
まずは、マシンT-56を探して、2年前、二宮がこの町にやって来た時にタイムスリップだ。
真司は、本気でこんなことを考え込んだ。
出発は明日だ!