プロローグ 冴木貫太郎
冴木貫太郎は、ごく普通のありふれた男子高校生である。
秀でた才能がある訳でも、優れた能力を持っている訳でもなく、ごく普通の一般家庭に生まれ、何の弊害もなくすくすくと育ち、どこにでもあるような郊外のマンションの一室で暮らす、高校2年生である。
そして特段、部活動に励むでもなく、放課後に青春を謳歌する訳でもなく、勉学に力を注ぐ訳でもない。
かと言って、学校に友達がいない訳でもなく、昼食を共にする友人も、夜中までゲームをし合う友人も、休日に遊びに行くような友人もいる。至極真っ当で、大いに充実した男子高校生である。
さらに彼女がいたら、そんなに贅沢なことはないだろうが、残念ながら冴木貫太郎に彼女はいない。
少なくとも、彼女と呼べるポジションの女の子は、の話だ。
冴木貫太郎には、幼馴染みがいる。
彼の住む部屋の、隣に暮らす三姉妹。
長女 蓬莱杏菜
次女 蓬莱透花
三女 蓬莱蕗愛
互いに親同士の仲が良かったため、自然と子供たちも接する機会が増えて……なんて、テンプレートのような馴れ初め。
そして、三姉妹は皆とても美人であった。
それこそ幼き頃の貫太郎の心を奪うくらいには、見目麗しき少女たちであった。
だが、三姉妹はひどくポンコツであった。
放っておくと、知らぬ間にゴミは散乱し、料理と言いっていいのか分からない代物を作り、気が付いたら虫が平気で歩いてる。
冴木貫太郎は、目を覚ました。
現実は、漫画やラノベのように甘くない。
そして、冴木貫太郎は立ち上がった。
冴木貫太郎は、幸いにも世話焼きな性格であった。故に、蓬莱三姉妹との相性はすこぶる良いのである。
さて、ごく普通の男子高校生、冴木貫太郎は今日も今日とて、世話を焼きにポンコツ三姉妹の元へ向かう。