冒険者ギルド
「ふわぁ~」
差し込んでくる朝日で私は目を覚ました。
「私……あぁそっか」
昨夜のことを思いだす。
そっか、昨日は宿に着くなりすぐにベッドで寝ちゃったんだっけ……。
ふと隣を見ると、そこには誰もいなかった。
「どこ行ったんだろう」
ガチャ
そう考えていると、部屋の扉が開いた。
「あ、もう起きた?おはよ~。ちょっと日課のトレーニングに行ってたの」
「お、おはようございます、テルミドールさん」
「固いって~。敬語は要らないよ~。ミドって呼んでよ、私もアリスって呼ぶし。それに、歳も一つしか変わらないからね」
「ミ、ミド……さん」
「さんも要らない~」
「ミ、ミ……ミド」
「そうそう」
家だと知っている人しかいなかったから、外の人と話すのめちゃくちゃ緊張するし恥ずかしい……。いきなり呼び捨てとか無理だって!!めちゃくちゃきれいだし可愛いし、カッコいいし、優しいし、この人反則でしょ……!
「あ、恥ずかしがってるー。かわいい~」
「か、かわっ……!?」
真っ赤になった顔を下に向ける。うぅ……。
「まあ、からかうのはほどほどにして、っと」
「そもそもからかわないで……」
「あはは、ごめんごめん」
ミドは私のベッドに向かい合うようにして座る。ミドの目は、優しそうではあったが、その奥は真剣であった。
「まあ、とりあえず昨日のこと、聞かせてもらえるかしら?」
「うん……」
私は、貴族であることがバレるといろいろ面倒なので、バレない程度でミドに家出の経緯や教育方針について話した。
「なるほどねえ。ずっと閉じ込められてたのかぁ……。私でもそれは逃げ出そうとするなぁ」
「ほぼ監禁と一緒……」
「だねー。んで、見事に今脱出に成功して外の世界にいるわけだけど、アリスは今後どうしたいの?」
「私は、……冒険者になってみたい。いろいろなところに行って、魔物と戦って。冒険者になるのが、私の小さい頃からの夢……」
「ほうほう。でも、今のアリスにはなれるかな?」
「ギルドに登録すれば、誰でもなれるはずでしょ?」
「そういうことじゃないの。私が言いたいことはね、そんなに人見知りでなれるのかってこと。朝もそうだったけど、アリスは人見知りが激しいよね。私と最初話す時ですらあんな感じじゃねぇ。さっきの話を聞いた感じ、妹ちゃんには姉として接してられたみたいだけど、お母さんと妹ちゃんと、家に出入りする一部の人以外とは会話したことないっぽいし。多分、男性なんて絶対無理でしょ」
「ぐっ……」
痛いところを突かれた。確かに私は知らない人と話すのが苦手なのだろう。さっきの会話も、すぐにあがってしまったし。
「まずはそこを治すところからだねー」
「う、うん」
「それじゃあ、一つ提案。」
「え、何?」
「ついてくる?なんだかんだ、一人の旅ってもんは寂しいものなのよー」
「えっ、ミドと……?」
「そ。私、一応冒険者だし。一応今二段持ってるから、ある程度のことはできると思うよ」
「いいの……?」
「私は別に構わないよ。なんか放っておけなくなっちゃったしねー。それに、さっきの恥ずかしがってるところ可愛かったし」
「最後のはいらない!!」
私は顔を手で隠した。この人、ホントに……!
「んじゃ、早速支度して出ようか」
「どうするの?」
「とりあえず朝ごはん食べて、そのあとギルドかな」
朝食を終え、私はミドとギルドの中にいた。
「新規の登録ですね。ランクの設定はどうしますか?また、戦闘に使用するものは何ですか?」
「ランクは私と一緒に旅するし、あとで設定するから無しでお願いします。戦闘スタイルは……アリスは何が使えるの?魔法?片手剣?両手剣?」
「剣。片手と両手、どっちも行ける……」
「りょーかい。じゃあ、剣士単体で設定をお願いします」
「分かりました。ギルドのデータベースへの新規登録とギルド証の発行をするので少し待っていてください」
ミドは慣れた手つきで登録をすすめた。
ミドを仲介しても、やはり初対面の人間を前にすると、どうしても緊張してしまうようで、顔が赤くなった。ミドの方を見ると、ニヤニヤしていたので睨んで制した。
そうこうしているうちに、受付嬢の人が戻ってきた。
「はい、こちらがギルド証になります。こまめに更新しないと、自分のランクが更新されず、高難易度のクエストを受注できなくなるので気を付けてくださいね。まあ、隣に段持ちの冒険者の方がいるので大丈夫だと思いますが」
「あ、ありがとうございます……」
何とかギルド証を受け取る。
「それにしてもその歳で段持ちはすごいですね。基本的に、段を持っている方は基本的に二十五歳以上の人が多いですからね。そもそも十八歳より下だとギルドに登録してる方自体が少ないので、さらに段を持っているとなると相当の方ですね」
「親がいろいろ教えてくれたので。あとは、才能に恵まれた感じですね」
あはは、と乾いた笑い声をしてミドは答えた。
「さて、長話もここまでにして、と。そろそろ行こうか、アリス」
「う、うん」
そして私たちはギルドを出た。
「じゃあ、まずは冒険者としての強さを見るために、少し魔物と戦ってみようか」
「どこに行くの?」
「街の少し外れのところの森に、五級くらいの弱い魔物が出るモリがあるの」
「ふーん」
「とりあえず、そこまで歩こうか。話でもしながら」
そして私たちは、歩き始めた―――
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今週いろいろあったので、日曜の夜になってしまいました。すいません。
それではまた、次の話で。