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テルミドール(ミド)との出会い

 思い切って走ったものの、一階の調理場へはすんなりと到着してしまった。

「シスにはおやすみとか言ったけど、結局明日会わないと考えるとなあ……」

 今更だが、少し弱気になる。

 外に出て、門の扉に手をかけ、止まる。辺りは恐ろしいほど静かだ。

 これで、このまま門を出てしまえば、今までいた家とはもうお別れ。

「これで、よかったのかな……?」

 小さくつぶやく。

≪まだ迷っているんですか、姉さま?あとのことは私に任せて、さっさと行ってください。姉さまの選択は、きっと正しいはずです。妹の私を信じることはできないのですか?≫

 心の中のシスがそう声をかける。

「なんてできた妹を、私は持ってしまったんだ。全く……。じゃあ、お姉ちゃん行っちゃうからね?」

 私は、扉を開け放ち、外に一歩、また一歩と踏み出す。

 そして、冒険は始まるのだ―――


 プライド邸は、以外にも周りに家が囲まれているところにあった。

 今まで見たことのない景色に、目を白黒させるアリス。

「うわあ」

 プライド邸は、ノーブル王国の王都の近くにある、公爵家の中でもかなり優遇されている家だ。

 周りは当たり前のように家があるが、アリスにとっては初めて見る光景、未知なる領域であった。

「おっと。いけないいけない。ここで止まってたら誰かに見つかっちゃうね」

 外の景色をみて感動する気持ちを抑える。

 プライド邸の壁沿いを進みながら、ふと頭に思い浮かんだ疑問に足を止める。

「これからどうすればいいんだろう……」

 そう、アリスは今、無一文の状態なのだ。服装も部屋着のままであり、そんな状態で飛び出してきたのだからもちろん金など、銅貨一枚ありゃしない。

 ふと留まって考えれば、気づいたかもしれない話なのだが、アリスは興奮しすぎて完璧に忘れていたのだ。

 夜ということもあり、人の目線を気にせず歩けることはいいのだが、裏を返せば人がいないため、誰にも助けを求めることはできない状況だ。

「とりあえず、人のいる方へ歩くかぁ……」

 結局、アリスは誰かいると希望を抱いてとぼとぼ歩き始める。

 少し歩いたところで、声が近づいてくることに気づく。

「あそこの角からかな……?」

 たったった、と小走りで向かい、声のある右へと曲がった。

 ドン

「っ痛ぁ……!」

 いきなり何かとぶつかった。おでこに強烈な痛みが走る。

「いってぇ!!!」「おいおい大丈夫か?」「なんだなんだ」「気でも狂ったか」

 痛みをこらえて前を見ると、アリスの目線の先には、自分とぶつかって倒れたとみられる男が一人と、それを囲んで介抱している男が三人いた。

「いったたたた……。なんだなんだ……って、女の子じゃねえか」

「あっ、あのぉ……」

「こんな夜遅くにそんな格好でどうしたんだい?」

「いえ、そんなたいしたことでは……。ちょっと家出……いえ!人を追いかけている途中だったんです!」

 咄嗟にそう口にする。何か嫌な感じがする。昔から信頼している勘が、そう判断したのだ。

 四人の男たちは顔を見合わせ、下品な笑みを浮かべた。

 そしてアリスへ向き直るなり、

「追いかけている途中だったのか、それはすまなかったねえ。でもお嬢ちゃん、もう見えなくなってしまっただろう。今日はもう夜も遅いし、帰った方がいい。おじさんたちが家まで送っていくよ」

「いえ、さすがにそれは悪いですよ!家もすぐそこですし、それでは!」

「待つんだ!」

「ひゃっ!」

 すぐに後ろへ向いて、走ろうとした瞬間、手を掴まれた。

「そんなに逃げなくてもいいじゃないか」

「そうそう、ゆっくり行こうよ」

 男たちは、下品に笑いながらアリスを囲んだ。

「やめて……!」

 外がどんな世界かわからないアリスでも、危険であるということは分かった。

≪誰かっ……!!誰か助けて!!≫ 

 しかし、何も持っておらず、身に着けていないため、ぎゅっと目を閉じてただ震えることしかできなかった。


「そこまでよ」


 一人の女性の声。閉じた目を少し開けると、そこには水色の髪をした女性が視界に写った。

「な、なんだお前!?」

 慌てる男たち。

「あら、それは私のセリフなのだけど?」

 冷気を感じ、目を大きく見開く。

 女性は手に剣を持ち、その剣には青い炎が纏っている。

 私はその物に心当たりがあった。魔剣―――通常使用する剣に、魔法式を用いることにより魔法を纏わせ、剣以上の攻撃を繰り出すことができる武器。魔剣使いは、剣と同時に魔法において魔力の制御もする必要がある高度な技であり、使用者は限られる。初めて見た……。

「今すぐ去りなさい。さもなければ―――」

【魔剣→魔法式展開『青炎』】

 右手を一閃。

 女性の振り下ろした魔剣は、男たちのすぐそばをかすめる。そして、青い炎が地上に達し振動と熱気が伝わってきた。

『ひっ……!』

 男たちは戦々恐々とした様子で固まる。

「さあ、どうするのかしら?」

「ひいぃぃぃぃいいいぃぃぃいぃぃぃ!!!」

 男たちは走って逃げって行った。

 私は、身体が動かずにいた。この人は、なんなんだ……?

「さて、と。あなた、大丈夫?怪我はない?」

「は、はい……」

「それはよかった。ところであなた、こんな時間帯に一人で出歩いたら危ないわよ?あなた、私が来なかったらどうなっていたかわかる?」

「はい……」

 私は、女性に強く言われて黙った。確かにそれはそうだよね……。

「って、なーんちゃって」

 夜の静けさを破るような声がした。

 前を向くと、先ほどの女性とは様変わりした一人の女の子が、舌を少し出して笑みを浮かべて立っていた。

 髪の色は変わっていないが、身長が少し縮み、私より数センチ高いくらいで、さっきの風格を少し残した感じの大人びた少女だ。

「驚いたかな?あなたが襲われてるのを見て、助けなきゃ―って思ったんだけど、このまま行くのもなあ……って思ったの。だからちょっと気合入れて変装してみたけど、どうだったかな?」

「は、はい……。とても、驚きました」

「よかったぁ。ところで、あなた名前はなんて言うの?あと、何歳?」

「アリスくら……いえ、アリスです。十六歳です」

「十六歳かー。自分と一歳しか変わらないのかあ。私、テルミドール。ミドって呼んでね。一応あなたの一個上の十七歳。よろしくね~」

「はあ……」

「夜遅くに立ち話もなんだし、私が泊ってる宿まで一回行こっか。何か事情がありそうだし、話はそこで聞くよー。」

 私は、何が起きているかわからずいろいろ戸惑っていたが、背中を追って歩き始めた。

 てか、すんなりついて行ってるけど、これも何気に危ないよね。知らない人だし……。でも、なぜか自然について行ってしまうののはなぜだろう。

 この時、彼女に惹かれていることにはまだ自覚していなかった。

「面白かった!」

「今後の展開が気になる!」

と思ったら、↓にある☆ ☆ ☆ ☆ ☆より、作品に対しての評価をしていただけると嬉しいです。

 

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 よろしくお願いします。


 今週は、作者の都合で2日も先延ばししてすいませんでした。それではまた、次の話で。

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