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最終話! シャイニング村田よ永遠に

最終話です。よろしくお願いします。

 多くの被害を出したヒーローフェスティバルから十日が経過した。


「こことも、お別れですか……」


 シャイニング村田ヒーロー事務所の前でしみじみとそう呟くのは、田中だった。


「田中さん……。本当に行ってしまうんですね」


 田中の後ろにいるのは、地元の人たちだった。


「はい。もう、ここには村田さんもいませんしね」


 寂しげな表情を浮かべる田中。お別れするには、余りにもこの建物には大切な思い出が多すぎた。


「……待ってます。私は、私たちはずっとここでシャイニング村田ヒーロー事務所の復活を待っています!!」

「僕も待ってる! だって、シャイニング村田は僕らのヒーローだから!!」

「俺もだ! あいつがいないこの街なんて、レモンのない唐揚げみたいなもんだ!」


「皆さん……」


 地元の人々の温かい言葉に田中の目から涙が零れ落ちる。


(ああ……。出来ることならこの光景を村田さんに見せてあげたかった。そして、言ってあげたかった。あなたは紛れもなく最高のヒーローだと)


「ありがとうございます。また、どこかで……お会いしましょう」


 そう言い残して、田中は街を去っていった。


***


 ユニバースライムの襲撃にあったヒーローフェスティバル。

 幸い、死傷者、行方不明者は供にゼロだった。更に、これまでにユニバースライムに取り込まれていたヒーローたちが見つかったという良いニュースもあった。

 しかし、No.1ヒーローであるシャイニーヴィレッジのヒーロー引退。更に、今回の事件の主犯格の中に現役ヒーローであり、侵略者討伐数No.1であったシャイニング村田がいたという悪いニュースもあった。

 ネットでは、シャイニーヴィレッジを終わらせた男としてシャイニング村田への評価は最悪……かと思いきや、ユニバースライムを倒した男がシャイニング村田であることや、シャイニーヴィレッジが引退会見で自分の思いをシャイニング村田に託したという発言をしたことなどが重なって、シャイニング村田の評価は微妙な状態だった。


 それでも、犯罪は犯罪。ヒーローフェスティバルを滅茶苦茶にしたことと、シャイニーヴィレッジへの傷害罪などでシャイニング村田は逮捕された。


 つまり、シャイニング村田というヒーローはもうこの世界にはいなくなってしまったのだ。


「はあ……。これからどうしよう」


 公園のベンチで田中が呟く。

 彼の直近の悩み、それは再就職である。


 No.1ヒーローがいなくなったことで、現在ヒーロー業界は次のスターを求め、どこの事務所も活発に行動している。

 そのため、田中ほどの優秀な人材ならば就職先など引くて数多のはずだった。

 しかし、シャイニング村田がいた事務所出身ということで面接に落とされたり、シャイニング村田を面接の途中で馬鹿にされて怒ってしまったりと、田中の再就職先は全く決まる気配が無かった。


「……ヒーロー業界は、もうやめようかな」


 田中がシャイニング村田と過ごした数年間は、余りにも濃い時間だった。そして、彼にとってシャイニング村田以上のヒーローなど存在しなかった。

 そのシャイニング村田がいないのであれば、彼がヒーロー業界にこだわる必要は無かった。


「もう、やめよう。普通の会社で普通の生活を送ろう」


 決心を固めた田中が公園のベンチから立ち上がろうとした、その時だった。


「ムーショッショッショッショク! 吾輩の名前はムショク紳士でおじゃる! この国の正規雇用者の数を減らし、全体的な経済活動を停滞させるでおじゃる!!」


 公園内に十二単を着て、黒いハットを被った男の怪人が現れた!!


「ほれ! ムーッショック!!」


「ぐあああああ!!」


 怪人が右手に持った笏をリクルートスーツを着た学生に向けると、そこから放たれたビームが学生に直撃した!

 その直後に、学生のスマホが震える。


「はい! ええ!? 内定取り消し!? そ、そんな! あっ! ……こ、これじゃあ、無職になっちゃうよおおおお!」


「ムーショッショック! 愉快愉快! 愉快でおじゃるよ! ほれ! お主も……ムーッショック!!」


 更に、ムショク紳士のビームがくたびれた顔のサラリーマンに直撃する!


「うわあああ!! え? クビですか!? ってことは、明日から会社に行かなくていい!? やったあああ! もう働かなくていいんだああああ!!」


 非道! このままではこの国は就職氷河期を迎えてしまう!


「た、大変だ!」


 その様子を見ていた田中は急いでその場から逃げようとした。今は、田中にも貯金があるが、その貯金もいつかは尽きる。最愛の妻とこれからできるであろう子供のことを考えれば無職は避けたいというのが彼の本音だった。


 だが、そのような仕事へのやる気がある人間を怪人は見逃したりしない!


「むむ!? 吾輩の杖が反応しているでおじゃる。もしや、近くに仕事への意欲が高く無職を脱却しようとしている人間がいるでおじゃるな!」


 怪人が左手に持った杖が田中のいる方向を差す。そして、怪人は田中を見つけてしまった!


「ひっ! や、やめてくれ! 家族がいるんだ! その家族の為にもお金を稼がなくちゃ……」


「ムーショッショッショク! 無職でも金は稼げるでおじゃるよ! ほおおお!! ムーッショック!!」


「ぐああああああ!!!」


 ビームが田中に直撃する。


「そ、そんな……これで、もう一生正規雇用者になれないなんて……」


 絶望のあまり、その場で膝をつく田中。


「ムーッショッショッショク!!」


 怪人の高笑いが空に響き渡るその時だった!


「待てい!!」


 とある男の声が公園に響く!


「誰だ!?」


「犯した罪が僕をこの世に縛る。悲しませた分だけ幸せを生む! もう一度、一からやり直す! そう! 僕の名前は……シャイニング村田R(リベンジ)だ!!」


 そこにいたのは、手首にブレスレットを付けた、ブーメランパンツにマント、フルフェイスヘルメットのスーパーヒーローだった!!


「ムーッショッショッショッショク! 誰かと思えば、変態でおじゃるか! お主もムショクにしてくれるわああああ!!」


 怪人の笏から放たれるビームが村田を襲う!

 だが、何も起こらなかった!!


「今、なにかしたか?」


「な……!? 吾輩のムーッショックを受けても平然としているだと!? まさか、貴様……就職する気のないムショクか!?」


「違う! 僕は今、仮釈放状態の人間だあああああ!!」


「ムショー!!」


 村田の拳が怪人に突き刺さる!

 怪人は静かに地に伏した。


「む、村田さん……?」


「田中さん。今、無職ですよね?」


 田中は信じられないものを見るような表情を浮かべる。そして、村田はその田中に問いかける。


「は、はい」


「なら、僕を助けてください」


「え?」


 村田の言葉に田中が思わず聞き返す。


「実は、僕の刑はシャイニーヴィレッジの穴を埋めること。つまり、仮ヒーローとして活躍することになりました。それに、またNo.1ヒーローを目指さなくてはいけません。今度は、皆の新たな希望としてのNo.1ヒーローを。だから、また力を貸してください」


 村田が笑顔で田中に手を伸ばす。

 答えは一つだった。


「このバカアアアアア!!」


「ゴハァ!?」


 村田の腹を力いっぱい殴る。


「人に心配かけさせて……! 許しません! 絶対に許しませんから!」


「う……。しれは、ごめん……」


「いーえ! 謝っても許しません! だから、監視します。村田さんがもうおかしなことをしないように、あの事務所で村田さんを監視します。いいえとは言わせませんよ」


 フンッとそっぽを向く田中。その田中の顔を見て、村田はクスリと笑った。


「はい。こちらからもお願いします。あの事務所に、帰りましょう」



 これにて、シャイニング村田の物語は終了した。


 これからはシャイニング村田Rという新たなヒーローの物語が始まる。


 その物語の行く末は誰にも分からない。だが、間違いなく言えることが一つ。


 シャイニング村田RはNo.1ヒーローになる。


長い間、この作品にご付き合いいただき本当にありがとうございました。

馬鹿な話が書きたくて始めた話でしたが、途中にシリアスがちょくちょく入ってきたことが唯一の悔いです。

本編は田中さんENDで終わってしまったので、気が向いたら愛END、ヤミEND辺りも書いて行こうかなと思っています。


最後に……このような作品を読んでくださった読者の方には本当に感謝しかありません。ブックマーク、評価、感想をして下さった方々を始めとした読者のおかげで書くモチベーションが維持できました。本当にありがとうございました!!

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