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村田と村本

よろしくお願いします!

 ユニバースライムの中、外の様子が一切分からないそこで、村田と村本は戦っていた。

 だが、それは戦いというにはあまりに一方的な展開になっていた。


「がはっ!!」


 シャイニーヴィレッジの身体が吹き飛ばされ、その身体がスライムにぶつかる。

 シャイニーヴィレッジの前には、拳を振るうシャイニング村田の姿があった。


「……!」


 スライムの弾力を利用して、シャイニーヴィレッジが反撃する。

 シャイニング村田の顎を狙った右ストレート。


「……なっ!?」


 だが、その右手を村田は左手で掴んだ。そして、シャイニーヴィレッジの右脇腹に蹴りを入れる。


「ぐはあ!!」


 シャイニング村田がシャイニーヴィレッジの右手を掴んでいたことで、今度はシャイニーヴィレッジの身体が吹き飛ぶことは無かった。

 だが、代わりにシャイニーヴィレッジはその場で俯き、隙だらけの姿をシャイニング村田に晒すこととなる。

 そして、その隙をシャイニング村田が見逃してくれるはずがなかった。


 村田の右拳がシャイニーヴィレッジの顔に突き刺さる。右手を掴まれているシャイニーヴィレッジは村田の右拳を受けた後もその場から動くことが出来ない。

 そのシャイニーヴィレッジに村田の右拳や蹴りが突き刺さる。顔、腹、脚。

 一撃一撃が怪人を屠る威力を持った攻撃が何度も、何度もシャイニーヴィレッジの身体に吸い込まれていった。


 それでも、シャイニーヴィレッジが倒れることは無かった。


「……何故?」


「……何故? それは僕のセリフだ。何故、君が泣く?」


 フルフェイスマスクの目の辺りから見える、村田の目には涙が浮かんでいた。


「やれやれ……。君は僕が倒さなくてはならない敵なのに、そんなにも苦しそうに涙を流す姿を見ると、何でかな……。救わないとって思うんだ」


「村田! 村本から離れろ!!」


 さっきまでニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべていたラスボスの切羽詰まった声が村田の耳に入る。


「……っ!!」


「逃がさない」


 その場を離れようとする村田の手をシャイニーヴィレッジが掴む。

 そして、シャイニーヴィレッジの身体が光りだす。


「君を苦しめるものを、この光で討ち払おう。食らえ!! シャイニング・バーストオオオオ!!」


「ぐあああああ!!」


 村田の身体を、ラスボスの視界を強烈な光が覆いつくす。

 その光でラスボスが悲鳴を上げる。そして、その光は優しく村田を包み込んだ。

 村本光のシャイニング・バーストは相手の中に眠る悪しきものを討ち払うことが出来る。

 その過程で、その光は相手の姿の全てを照らす。そして、村田が村本のクローンだったことが関係しているせいか、今回に限り、その光は村田光の中に眠るとある人格を呼び起こした。


「……そうか。君は、あの時の少年だったか」


「あ、あなたは……!」


 光の中に向かい合う村田と村本。その二人はともに全裸だった。


「いつかの変態さん? あなたが、シャイニーヴィレッジだったんですね」


「まさか、こんな場所で再会するとはね。……シャイニング村田君。一つ聞かせてくれ」


 村本光は光を通じて、今の村田がどのような状況にあるかを瞬時に理解していた。

 だからこそ、この場で彼が村田に確認したいことは一つだけだった。


「何ですか?」


「君はヒーローかい?」


「はい。平和を守り抜くヒーローです」


 村本の問いに村田は即答した。それが、クローンでありながらもこれまで生き抜いてきた村田光の本心だった。


「そうか。なら、約束してくれ。君が、ここにいる人たちを救い、ユニバースライムを倒すと」


「それは……」


 村田が返答を渋る。今の彼の状況では、その約束を守れる可能性が低いことは村本も理解していた。


「約束してくれるなら、君のことは僕と君の仲間が救う」


 その言葉に村田が顔を上げる。その目に映る村本の姿は、紛れもなく村田が憧れたNo.1ヒーローの姿だった。


「約束します。皆を救う。だから、僕を救ってください」


「任せてくれ」


 頭を下げる村田に村本は微笑みながらそう言った。

 そして、光が収まり、二人の意識は現実に引き戻される。


 村田の自意識は再び闇に沈む。


 最後の切り札を使ったシャイニーヴィレッジは、倒れはしていないものの満身創痍といった様子だった。


「……はあ、はあ。くくく……。焦ったが、どうやら意味は無かったようだな。さあ村田よ! その男にとどめを差せ!」


 ラスボスの声が響く。その声で、村田の身体が動き出す。だが、その動きはさっきよりも緩やかだった。


「何をしている! 早く殺せ!! これは命令だ!」


 村田の動きから不自然さを感じ取ったラスボスの声が響く。

 その声に村田の身体がビクッと震えたかと思うと、次の瞬間、村田の目から光が消えその動きが一段階速くなる。


 そして、村田の手がシャイニーヴィレッジの身体を貫いた。


「はははは!! よくやった! 後は外のヒーローどもを殺せ! それで私の計画は完遂する」


 ラスボスが声を上げるが、村田はその場から動かない。否、動けずにいた。


「がはっ……。はあ……はあ……。これ以上、お前の好きにはさせない」


 吐血しながらも、シャイニーヴィレッジが自らの身体を貫いた村田の腕を抑えていたからだ。


「ちっ。くたばり損ないが。村田! 早くそいつを殺してしまえ!」


 ラスボスの声が響くが、村田は動けずにいる。シャイニーヴィレッジの力は村田とラスボスの両者の想像を遥かに超えていた。


「仕方ない……。因縁もあることだし、とどめは私がさそう」


 ちらりと外の様子を見てからラスボスはそう呟く。

 外ではヒーローたちが村本のクローンたちを押し始めてはいるものの、未だにユニバースライムの体内に入ってこれそうなものはいなかった。

 そして、ラスボスが村本に意識を完全に向けたその瞬間。


「「「おらあああああ!!!」」」


 ヒーロー達の声が響き、ユニバースライムの身体に穴が開いた。


「愛と正義の魔法少女ラブリーピンク! 光を救い出すため参上します!」

「我が名はヤミ・ダークネス! 光の使者たる男を救い出すため、今一度闇にに潜る者なり!」


 そして穴から、村田を救うために二人のヒロインが姿を現した。


ありがとうございました!!

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