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村田光を生んだ人③

 佐々江に詰め寄る村田に対して、佐々江は村田に一歩近づいた。


「そんなに私に近づきたいってことは、私のことが好きなんですか?」


 佐々江は、村田の耳元で囁いた。


(き、決まった……! これで村田さんも顔を赤くして慌てるはず……)


 佐々江が村田の横顔を見るが、村田の顔色は欠片も変わっていなかった。

 そして、村田は佐々江の片腕を掴む。


「そうですよ」


 そのまま村田が佐々江の耳元で囁いた。


「ほぇ?」


 佐々江の顔が赤くなる。そして、佐々江の頭の中を何度も村田の言葉が回り続ける。


「は!? な!? ほ、本気ですか!?」


「どうですかね」


 慌てる佐々江を解放して、村田は微笑みながらそう言った。

 その村田の表情から本心が読み取れず、佐々江は悶々とすることになるのであった。


***


 結局、村田は防御力を重視した重厚感のあるフルフェイスヘルメットを購入した。

 そして、目的のものを購入した後、二人は喫茶店に向かうことになった。


 喫茶店に向かう間、佐々江はずっと悶々としていた。

 大人の女性として自分が村田を翻弄する。そう決めていたにも関わらず、たった一発のカウンターを浴びて、あっさりとやられてしまった。


 このままでは引き下がれない。

 その思いが彼女の中にはあった。


「……このガトーショコラ、美味しいですね」


「そうなんですか?」


 喫茶店で注文しておいたガトーショコラを一口食べて、佐々江が呟く。それを聞いた村田が佐々江に問いかける。

 その問いこそ、佐々江の狙いだった。


「食べたいですか?」


「まあ、そうですね」


「で、では……あ、あーん」


 手をプルプルと震わせながら、佐々江はフォークでガトーショコラを一切れ取って、村田に差し出す。


(ふふ……。あーんなんて現実でやられたら恥ずかしくて仕方ないはず……。顔を赤くした村田さんを揶揄って、大人と子供の違いを教えてあげるわ)


 佐々江の計画は完ぺきだった。

 だが、今の村田は母親によって女性耐性◎になっている。


「ありがとうございます。……うん。美味しいですね。佐々江さんに食べさせてもらえた分、余計に美味しく感じました」


「はうっ……!!」


 微笑む村田。

 悶絶する佐々江。強烈な右ストレートを決めたはずだった。

 だが、相手に自分の右ストレートが決まる距離とは、すなわち相手の右ストレートも自分に決まる距離だ。

 完璧なクロスカウンターを決められ、佐々江は敗北した。


(ごめん……天使と悪魔の私。私じゃ、勝てなかったわ)


「では、これはお礼です」


 敗北を悟る佐々江の顔の前に村田がフォークを差し出す。

 そのフォークの先には、村田が食べていたチーズケーキが一かけらあった。


「はい、あーん」


「~~~っ!?」


 微笑みながら佐々江の口にチーズケーキを突っ込む村田。

 佐々江は顔を赤くしたまま、されるがままにチーズケーキを食べた。


「間接キス……ですね」


 小悪魔の様な笑みを浮かべる村田。その一言で佐々江の頭からボン! という爆発音がした。

 最早、チーズケーキの味など分からない。

 佐々江はただひたすらに混乱していた。


(な、なななにが起きたの? 間接キス? 私が? 村田さんと? そ、そ、そんな破廉恥なことしてしまうなんて……。け、結婚しなくちゃ……)


 あうあうと口を半開きにしながら目を回す佐々江。

 カウンターを決められた直後に、アッパーを決められた気分だ。

 まともに浴びた一撃で頭がずっとふわふわしている。


 だが、現実とは辛辣である。

 いつまでも楽しい時間は続かない。


「村田……。何してるの?」

「先輩……。どういうことですか?」


 佐々江と村田が視線を向けた先には、般若を背に、笑顔を向ける桜川愛と黒田ヤミの姿があった。


***


 突然姿を現した二人の若い女の子を前にして佐々江は焦っていた。


 よく分からないが、恐らくこれは修羅場というやつだ。と。


「あ、あの……。こ、これは違います!」


「すいません。今、村田と話しているので」

「誰か分かりませんが、静かにしておいてもらえますか?」


「ひっ!!」


 社会人としてなら、これまでも数々の修羅場をくぐり抜けてきた。

 だが、恋愛における修羅場がここまで心臓に悪いものだとは思わなかった。


(そ、それよりも……! どちらもとてつもない美少女。村田さんってモテるの!?)


 村田が予想以上にモテることに驚きながら佐々江が村田を見る。

 村田は美少女二人に睨みつけられているにも関わらず、余裕の表情を浮かべていた。


「愛。今日も可愛いね」


「……そんな安っぽい言葉で惑わされると思わないで」


 愛がそう言った直後、村田は愛の腕を掴み自らの太ももの上に座らせる。


「大丈夫。僕はちゃんと愛のことが好きだよ」


「……はふぅ」


 愛の頭を撫でながら耳元で囁く村田。

 愛は長女だ。幼い頃は両親に甘えることもあったし、頭を撫でられることも多かった。

 だが、下の子が増えるにつれて、誰かに甘える機会は減り、頭を撫でられることも殆ど無くなった。

 故に、村田の大きな手で優しく撫でられたことで思わず愛は心地よさそうにめを細めてしまっていた。


「せ、先輩……。何しているんですか! 愛さんもしっかりしてください!」


「はっ! ……村田、放して」


 ヤミの掛け声で正気を取り戻した愛が、村田の腕を振り払い村田の前に仁王立ちする。


「やれやれ……。怒った顔は君たちのような子猫ちゃんには似合わないんだけどねぇ」


 困ったように笑う村田。

 その姿はまさにイケメンモテ男だった。


「……村田。変なものでも食べた?」

「そうですね。先輩、明らかにおかしいです」


 村田光という少年をよく知る愛とヤミは村田の異変に気付いていた。

 二人が知る村田は、女の子を子猫ちゃんと言うような男ではなかった。

 二人の怪しむような視線が村田に突き刺さる。


「良く見破ったわね!」


 そして、その場にこの状況を生み出した元凶である美月が姿を現した。

ありがとうございました!

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