シャイニングLOVEさんの正体
シャイニングLOVE。
その存在を覚えているだろうか?
シャイニング村田の大ファンであり、シャイニング村田ガチ恋勢でもあるという、とてつもなく物好きな人物である。
今日はそんなシャイニングLOVEさんの一日を紹介しよう。
シャイニングLOVE。
本名、村田・L・菩須。
彼の朝は早い。
毎朝五時に起床し五キロのランニング。
家に戻ってきたら、スムージーとササミを身体に入れ、研究室に向かう。
研究室へ向かった彼が見るのは、シャイニング村田の戦闘データだ。
「ふふふ……。素晴らしい。流石、私の愛しいシャイニング村田だ。特に、あの触手の大群に一切怯むことのない姿は、全盛期の彼を髣髴とさせるものがある」
ジョーカーが生み出した触手の怪物と村田、村井の戦闘映像を眺めながら彼は笑う。
しかし、とある人物が映ると彼の顔は歪んだ。
「魔法少女……ラブリーピンク……。黒田ヤミ……。彼女たちは……邪魔だ」
その目に宿るものは憎悪であり、殺意であった。
「私のシャイニング村田に近づき……好意を伝えるなどとは……害虫が!!」
「し、失礼します!!」
彼が目の前の机を力強く叩く。
その直後に、一体の怪人が彼の部屋に入ってきた。
「ラスボス様! Mr.マーメンドイがお会いしたいとのことです!」
「ふん……。いいだろう。通せ」
「はっ!!」
怪人が部屋から出て暫くしてから侵略者軍団『パイレーツ』のボスであり、人魚の怪人であるMr.マーメンドイが姿を現す。
「まーめんどい。もう、やめさせてくれないか? 死なないとは言っても、俺たち『パイレーツ』の怪人はもう疲弊しきっている。これ以上、シャイニング村田と戦うのは、まーめんどいんだわ」
Mr.マーメンドイがため息をつきながらそう言った。
彼は『パイレーツ』のボスだ。
だが、彼は生まれつきの性格もあって地球への侵略などする気はなかった。
この男に出会うまでは。
「ダメだ。分かっているだろう? お前の娘は私の手の中にある。お前はシャイニング村田が輝くために戦い続けなければならない。悪の侵略者として、な」
「……ッ! ふざけるな!!」
ラスボスの言葉にMr.マーメンドイが顔に怒りを露わにする。
「俺たちは好きで悪の侵略者をしているわけじゃねえ! シャイニング村田とこれ以上戦うくらいなら、今ここでお前を殺してやるよ!!」
Mr.マーメンドイは手に持った槍でラスボスに襲い掛かる。
だが、ラスボスはそれを不敵な笑みで見つめるだけであった。
槍がラスボスに当たる――ことは無かった。
「な、何故だ……? 何故、お前がここにいる?」
Mr.マーメンドイの槍はシャイニング村田によって止められた。
「よくやった。No.5」
ラスボスはそう言うとともに指を鳴らす。
すると、研究室の至る所からシャイニング村田が姿を現す。その数はMr.マーメンドイの槍を防いだものを含めて九体いた。
「なっ……!? ど、どういうことだ?」
「さて、愚かで汚らわしい悪の侵略者よ」
動揺するMr.マーメンドイに対してラスボスが無機質な声で問いかける。
「ここで娘共々殺されるか、それとも、私に従いシャイニング村田と戦い続けるか。好きな方を選ぶといい」
Mr.マーメンドイに選べる選択など一つしかなかった。
「めんどいどころじゃねえ……。最悪の気分だ。部下たちに……合わせる顔がねぇ……」
「……ふん。分かればいい」
ラスボスは興味を失ったのか、Mr.マーメンドイから視線を外し、再びモニターに目を向ける。
そこには、シャイニング村田によく似た男の姿が映っていた。
「ふふふ。たくさんのシャイニング村田に囲まれながら、彼を見る。実に、実に素晴らしい……。ああ、もうすぐだよ。漸くシャイニング村田が君を超える。ふふふふ……」
ラスボスのその笑顔は、狂気に満ち溢れており、その顔を間近で見たMr.マーメンドイは自分が関わってしまった男の恐ろしさを改めて思い知ることとなった。
***
Mr.マーメンドイが帰った後、ラスボスは二つのデータを見比べていた。
「力は……シャイニング村田。技術はまだ、彼の方が上か……。経験は比べるまでもない。だが、シャイニング村田には、今の彼にはない爆発力がある。ふふふ。後は、パイレーツとのボスと戦えばシャイニング村田は彼と並ぶ」
そのデータはラスボスにとって満足のいくものであった。
「さて、一日の終わりにシャイニング村田へのファンレターを書くことにしよう」
そう呟くと、ラスボスは紙とペンを取り出し、ファンレターを書き始めた。
親愛なるシャイニング村田さんへ
あなたのことを思うと、いつもいつも眠れません!
今週はアルティメットガールとかいう雑魚ヒーローを救いに行ってましたね! あんな雑魚、いくら捕まったのがシャイニング村田さんのせいと言っても、放っておいていいのに助けに行くなんて、シャイニング村田さんはやっぱり素敵!!
ダークシャドウ村井とのコンビは悪くないと思いましたが、やっぱり私はシャイニング村田さん一人の方が好きかな? なーんて! てへ!
相変わらずのダサい格好! 地味な必殺技! その全てが愛おしいです!
ところで……。シャイニング村田さんの傍にいる女は何ですか?
シャイニング村田さんに迷惑をかけてばかり。あんな女どものせいで、シャイニング村田さんがボロボロになるのは見ていられません。
直ぐに離れるべきです。
最近では、シャイニング村田さんの手伝いをしているみたいですが、あんなもの必要ありません。
人気も人望もない。孤高にして孤独な地味ヒーローがシャイニング村田さんの良いところなんですから。
ふう……。少し言い過ぎちゃいました! てへ!
とにかく、これからもずっと、ずーっと応援しています!
もうすぐ運命の日が来ますね!
シャイニング村田さんがヒーロー界を変えることを楽しみにしています!!
書き終えると、ラスボスは一息ついた。
「少し書きすぎたかな? いや、暫く書けていなかったからこれくらいでも問題ないだろう」
そう言うと、ラスボスは研究室を後にした。
その後は、テレビを見つつ有象無象の雑魚ヒーローの動向をチェック。
それが終わると彼は布団に入る。
こうして、シャイニングLOVEの一日は終了する。
彼のシャイニング村田への異常な愛はどこから来るのか。
何故、大量のシャイニング村田が彼の研究室にいるのか。
彼の口から出る『彼』とは誰のことなのか。
シャイニング村田は何者なのか。
その謎が明かされる日は、そう遠くない。
次回から最終章である『シャイニング村田とNo.1ヒーロー』編です。
 




