シャイニング村田ヒーロー事務所での一幕
お待たせしました!
コメディリハビリ回です!!
とある穏やかな日曜の昼。
シャイニング村田ヒーロー事務所には四人の人物がいた。
一人目は当然、この事務所に主であり我らがヒーロー、シャイニング村田こと、村田光だ。
今は、ヒーロー協会に渡されたアルティメットガール救出作戦に関して、指示なしで勝手に行動したことに対する罰として、事務所にて謹慎中である。
ちなみに彼女いない歴18年。卒業後の進路はヒーローである。
父親はおらず、母親はいるものの、彼の母親は彼が小学生の頃にどこかへ姿を消した。しかし、定期的に彼の下にお金と手紙が届いていることから彼は、母親は元気にしているのだろうと思っている。
最近の悩みは法律の改正が難しいこと。
二人目は、事務所の机の上で書類と睨めっこしている事務職員の田中だ。
25歳。大学時代に知り合った妻と大学卒業後二年後に結婚。今は、子供もいる。
ちなみにシャイニング村田ヒーロー事務所の業務をほぼ一人で受け持っている彼の給料は、相当高い。
最近の悩みは、シャイニング村田がアルティメットガールに関する事件に首を突っ込んだことで、あらゆる意味で有名人となり、これまで以上に大量の書類に殺されそうになっているということである。
三人目は、桜川愛。
村田に恋する高校三年生である。学校でのクールな雰囲気とは違い、今は鼻歌を歌い機嫌良さそうにキッチンで四人分の昼ご飯を作っている。
その姿は夫の仕事場にわざわざ昼ご飯を作りに来る新妻のよう。
実は可愛いもの好き。日曜朝の女児向けアニメは妹と見ている。家族思い。村田大好きな18歳である。
卒業後は県内の国立大学に通う予定らしい。
実際はもっと上のレベルを目指せるほどの学力があるらしいが、村田と家族が好きなので県内を選んだとか。
最近の悩みは、恋のライバルが出来てしまったこと。
四人目は、黒田ヤミ。
村田の後輩にして、つい最近まで村田と敵対していた少女だ。今はソファの上で録画していたヒーローアニメを見ている。
17歳。
彼女をどうするかをヒーロー協会は連日話し合った。最終的に、シャイニング村田が彼女を一番擁護していたため、シャイニング村田に彼女の身柄を預けることとなったのだ。
そのため、シャイニング村田は彼女の監視者となった。
そのことを知った黒田ヤミは――
「なら、一緒に暮らした方がいいですね!」
と言って、村田の家に押しかけてきた。
だが、村田の家で二人が暮らすのは狭い上に何もないということになり、黒田ヤミはシャイニング村田ヒーロー事務所に居候することとなった。
最近の悩みは、村田が卒業した後の学校生活。
***
「ご飯できたよ」
愛の声に三人がそれぞれしていたことを止め、大きな机の前に座る。
「おお。今日はチャーハンか」
「桜川さん。いつもありがとうございます」
「いただきます」
「はい、どうぞ」
手を合わせ、各々でいただきますを行ってからチャーハンを食べていく。
「うん! 美味い!! さすが桜川だな!」
「ふふ。ありがとう。とっておきの調味料を使ったからね。ちなみに、何だと思う?」
愛は、微笑みながら村田に問いかける。
「うーん。塩とか?」
「違うよ……。それはね、愛情。村田へのね」
「へ」
カランッ。
村田が持っていたスプーンを落とす。
「もう。子供じゃないんだから、ちゃんとスプーンは握りなさいよ。今、替えを持ってくるわ」
クスクスと笑いながら愛は村田が落としたスプーンを拾い、キッチンの方に姿を消す。
「むー。先輩。こっちを向いてください」
「え? うん」
頬を膨らませながらヤミが村田に声を掛ける。
村田がそっちを向くと、そこにはチャーハンをのっけたスプーンを差し出すヤミの姿があった。
「はい。あーん」
「あ、あーん」
有無を言わせぬヤミの表情に村田はそのままスプーンを口に入れる。ほんのりと香ばしい醤油の香りが口に広がる。
「先輩。間接キス……ですね」
頬をほんのりと赤く染めながらヤミはそう言った。
そこにスプーンを持った愛が戻ってくる。
「はい。村田。これで食べなよ」
「あ、ああ。ありがとう」
スプーンを村田に渡した愛は、座ってからヤミを睨みつける。ヤミも負けることなく愛を睨みつけた。
「ヤミ。そういうことするんだ」
「愛さんこそ、ベタなことしてたじゃないですか」
飛び散る火花。
女同士の争いがそこにはあった。
「これ、本当に美味しいですね! 田中さん!!」
「村田さん。もう慣れましたけど、あの二人は何とかならないんですか?」
「……なりません」
ヤミがこの事務所で過ごすようになってから、ヤミと愛の間で村田への猛烈なアピール合戦が繰り広げられていた。
村田はそれを見て、愛もヤミも自分を本気で好きでいてくれていることを自覚した。
そして、どっちかを選ばなくてはと思ったものの両方にいいところがあり、二人の内のどちらかを選ぶことなど村田には出来なかった。
「はあ……。そうですか」
ため息を吐く田中。
この中で一番辛い思いをしているのは間違いなく彼だ。
日曜にも関わらず出勤し、仕事をしなくてはならない。おまけに仕事場では年頃の若い男女が乳繰り合っているのだ。
まだ田中が既婚者だったため、良かったものの、彼が独身童貞だったら、血涙を流すことになっていただろう。
「あ、村田さん頬にお米が付いてますよ」
「え? 本当ですか?」
それは何気ない村田と田中の会話。
だが、その会話こそが戦争の火種となる。
愛とヤミの両者が直ぐに村田の頬に視線をロックオン。
ターゲットとなる一粒の米を補足。
頬に付いた米粒を取る。もしくは、汚れた頬を布か何かで拭く。
それは相手のパーソナルスペースに入らねば出来ない行為。
更に、それを行う時には相手の肌に触れることとなる。
それ、即ち二人が一つになるということ!!
もう、お分かりだろう。つまり、この米粒を取ったものが、村田の妻へと一歩近づく!!
勝負は一瞬で付く。だからこそ、考えなければならないのはライバルの行動である。
「……変身」
「ふう……」
愛の身体を桃色の光が包み込み、その光が収まるとそこにはラブリーピンクの姿があった。
一方で、ヤミの身体を黒いオーラが包み込む。
あの日、ジョーカーが生み出した触手によってヤミとアルティメットガールの力は失われたはずだった。
しかし、その力は触手の怪物が倒されたことでヤミとアルティメットガールのそれぞれの身体に戻ってきていたのだ。
その力をその身に巡らせる。
二人の視線が交差し、同時に動き出した。
身を乗り出して村田の頬に手を伸ばす。
供に普通の人を遥かに超える速度を出す。
((私が……トル!!))
その手が米粒に届くかと二人が思った時だった。
「はい。村田さん。取れましたよ」
「あ。田中さんありがとうございます」
気付けば米粒は村田の頬から田中の手に移っていた。
(う、うそ……。速すぎる)
(わ、私たちのスピードを簡単に超えるなんて……)
「ごちそうさまでした」
手を合わせ、食器をキッチンに運ぶ田中は愛とヤミの背後を通る瞬間、ポツリと呟いた。
「その程度では、村田さんは任せられませんねぇ」
愛とヤミが振り返るが、田中は二人を無視してキッチンに姿を消していった。
(私は間違えていた……)
(本当に警戒するべき人は愛さんではありませんでした)
((今、一番村田(先輩)に近いのは、田中さんだった(でした)!))
「ね、ねえ……。何で愛は変身してるの? ヤミも、何か変なオーラ出てるよ?」
村田の言葉に二人は答えない。
二人の視線は真のラスボスに向けられていた。
次回予告!!
今でも思い出す。
あなたと初めて出会ったその日を。
私とあなたは相いれない運命。だからこそ、私はせめて手紙であなたへの思いを伝える。
どうか……。どうか、あなたが元気でありますように。
P.S 隣のメスどもは誰ですか?
次回「シャイニング村田LOVEさんの正体」




