表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/62

忘れんな。俺たちは二人でマックスヴィレッジだ。

前話の後書きで、マックスヴィレッジをヴィレッジマックスとしてました。

弱い俺を……誰か殺してくれ……!!


ブックマークしてくださった方々、本当にありがとうございます!

 立ち上がる村田を見据えながらジョーカーは不気味に笑っていた。


「ククク……。あなたと同じことを先ほど私に向かってきた少年も言っていましたよ」


 ジョーカーの言葉に村田の表情が険しくなる。


(そういえば村井がいない。あいつは確かに奥の部屋に向かったはずだ……)


「相方が気になるようですねぇ。彼なら今頃、どこか遠いところにでも行っていますよ。まあ、これからあなたもそこに向かうんですから安心してください」


 その言葉と同時に、ジョーカーが触手を村田に伸ばす。

 その触手を上に跳んで躱し、触手の上を走ってジョーカーに近接する村田。


「ははは! 中々やりますねぇ!」


 更に大量の触手が村田に襲い掛かる。だが、村田は止まらない。

 触手を躱し、殴り、ただ真っすぐとジョーカーに向かっていく。


 そして、大量の触手をかいくぐり村田の目の前にジョーカーの顔面が見えた。


「くたばれ!!」


 拳を振り上げる。

 容赦も慈悲も必要ない。


 アルティメットガールを苦しめ、村井をぶっ飛ばし、黒田ヤミに涙を流させた。

 殴る理由は十分すぎた。


「いや~。怖い怖い。だから、彼女に身代わりになってもらいましょう」


 拳が迫っているにもかかわらず、余裕の表情を崩さないジョーカーのその言葉と供に、ジョーカーの顔があった場所に黒田ヤミの顔が浮かんだ。


「なっ……! くそ!」


 ギリギリで振りぬこうとしていた拳を止める村田。

 だが、それは致命的な隙を生み出してしまった。


 村田の腹に触手が突き刺さる。


「ぐはっ……」


 そのまま村田の身体は持ち上げられ、壁に勢いよく叩きつけられた。


「ククク……。ハーッハッハッハ!! 弱い弱い。ヒーローとは実に弱い生き物だ! 先ほど来た村井とか言う少年もこれを見せた瞬間に私に何も出来なくなりましたよ!」


 高笑いするジョーカーの右肩にはアルティメットガールの顔があった。


「なるほど……。賢いね」


 壁に叩きつけられた村田が立ち上がる。その表情には何故か笑顔があった。


「何を笑っているのですか? あなたに勝ち目などないのですよ?」


 訳が分からないと言った表情を浮かべるジョーカー。

 そのジョーカーに対して村田はふらふらになりながらも言葉を返す。


「ああ。いや、安心したんだ」


「安心?」


「お前が黒田を利用することに躊躇いの無い奴なら、僕は安心してお前から黒田を奪い返せる」


 その言葉と同時に村田が走り出す。


「何度やっても同じことですよ!」


 接近してきた村田を再び、黒田ヤミの顔で迎え撃つジョーカー。


 村田はその黒田ヤミの顔の横に両手を突き差した。


「な、何を……!? まさか、私の身体からこの少女を引っ張り出すつもりですか!?」


「ああ! そうだよ!」


 村田の手にヤミの身体に触れた感触が伝わる。

 その身体を引き上げようとする村田。


 だが、それをジョーカーが許すはずもない。


「させると思っているのですか?」


ドス!


「がはっ……」


 村田の身体に触手の重い一撃が入る。

 それでも、村田はヤミの身体から手を離さない。


「しつこい!!」


ドドドド!!


 いくつもの触手が村田の身体を襲う。


 村田のヘルメットが割れる。


 それでも村田は手を離さない。


 村田の口から血が出る。


 それでも村田は手を離さない。


 村田の頭から血が流れる。


 それでも村田は手を離さない。


 骨折しているかもしれない、内臓も潰れたかもしれない。

 それでも手を離さずなかった村田によって、ジョーカーの身体から黒田ヤミの上半身は引きずり出されていた。


「くっ!! やめろやめろやめろ!!」


 村田の恐るべき執念により、初めてジョーカーの顔に焦りが生まれる。


「うおおおおお!!」


 最後の力を振り絞る村田。


 だが、黒田ヤミの上半身が出ていることでジョーカーの頭に一つの閃きが舞い降りた。


「こうすれば良かったんですねぇ」


 その言葉と同時に黒田ヤミの背後目掛けて、一本の触手を放つジョーカー。


 黒田ヤミを引きずり出してから守る。いや、間にあわない。

 黒田ヤミが傷つくとしても引きずり出すことを優先。あり得ない。


 村田が出した答えは――。


「ククク……そうしますよねぇ」


 村田は片腕でヤミの上半身を支え、もう一方の腕でヤミの背後に迫る触手を掴んでいた。


「なら、こうするだけです」


 もう一本の触手がヤミを狙う。

 村田に選択肢は残されてなかった。


「くっ……!」


 ヤミをジョーカーから奪い返すために離してはいけなかった両手。

 村田はその両手をヤミから離さざるを得なかった。


「ははは!! 漸く離しましたね!」


 その言葉と同時に大量の触手が村田の腹に突き刺さる。

 村田は離されまいと、両手にある触手を強く握る、が……。


「ああ。それはあげます」


 ジョーカーのその言葉と供に、村田が握っていた触手はぽろっと崩れ落ちた。


「な……」


 遠ざかっていく黒田ヤミの背中。


 漸く手を伸ばしてくれた。漸くこの手が届いた。


 だが、その手が再び離れていく。


「……くしょう。ちくしょおおおおお!!」


「ははは!! 残念でしたねえ!!」


 ジョーカーが村田を大量の触手で呑み込もうとした。


 その時だった。


「うるせえよ。おかげで、おちおち寝てもいられねえ」


 ジョーカーの背筋にゾクリと、寒気が走る。


 その寒気を振り払うように、ジョーカーが背後に触手を振るう。


 だが、そこには誰もいなかった。


「き、気のせいですか……」


 次の瞬間だった。

 村田を襲い掛かろうとしていた、触手が全てバラバラに斬り落とされた。


「なっ……!?」


 そして、ジョーカーの視界に入る一人の男。


 短刀を構えた忍姿の、自分が一度倒したはずの男。


「おら、立てよ」


「ったく。遅いんだよ」


「悪いな。捕らわれたアルティメットガールさんに見惚れてたわ」


 村井の手を取り、立ち上がる村田。

 二人の間には笑顔があった。


「くっ……! ふん。二人になったからなんだと言うのですか? 片や私に敗北して、ボロボロ。もう片方も、死にかけ。そんな雑魚二人、私の敵ではありませんよ」


 ジョーカーの表情に余裕の笑みが戻る。

 上半身が出ていた黒田ヤミも再びジョーカーの身体に呑み込まれてしまっていた。


「あーあ。もう少し、村井が早く来てれば黒田が助けられたんだけどなぁ」


「おいおい。仕方ないだろ? ヒーローは遅れて登場するんだからよ」


「遅すぎなんだよ」


 そんなジョーカーを差し置いて、軽口を叩き合う二人。

 その表情に悲壮感は欠片もなかった。


「調子に乗るなよおおお!!」


 その二人の様子にジョーカーが怒りの表情を見せる。

 それは普段の冷静なジョーカーからは考えられない表情だった。


 ジョーカーも理解しつつあったのだ。

 黒田ヤミを自分から奪い返しかけた村田。

 敗北したにも関わらす、再度立ち上がり、自分の触手を簡単に斬り落とした村井。


 この二人は紛れもなく自分の脅威だと。


 そんなジョーカーを村田と村井の二人は睨みつける。


「調子に乗ってる? それはどっちだよ」


「俺たちはこう見えて、怒りに震えてんだぜ」


「「よくも散々、やりたい放題してくれやがったなぁ!!」」


 一方的にボコボコにされた。


 世間から叩かれ、人気を失う羽目にもあった。


 そして何より――


 黒田ヤミを、アルティメットガールを奪われた。


「怒りに震える黒き騎士! 白馬に乗って迎えに行くぜお姫様!!」

「闇を貫く白銀の剣! お前の絶望に風穴開けるぜ希望の光!」


「「二人はヒーロー! そして、漢!! 俺たちは!! マックスヴィレッジだあああああ!!」」


 正真正銘、全てを懸けた最後の戦いが幕を開ける。

次回予告

 役者は揃った。

 覚悟も決まった。


 欲しいものはただ一つ。


次回「ハッピーエンドへと続く道」

明日も、マックスマックスゥ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ