新たな名乗り!俺の名前はシャイニング村田だ!!
初めは名乗りの研究という体で始まったアニメ鑑賞会であったが、気付けば村田は最近のヒーローアニメに見入っていた。
「うう……ぐす。中学生の少女がそんな過酷な運命を背負って戦わなくちゃいけないなんて……」
村田は時に涙を流し、
「そうか……。ただ強ければいいってわけじゃないのかもしれないのか」
時に力のあり方を考え、
「うおおお!!いっけえええええ!!」
時に手に汗握りながら画面で奮闘するキャラクターを応援した。
そして、村田とヤミが気付いた時には時刻は22時を過ぎていた。
「うわ!もうこんな時間か。黒田、今日はありがとう!明日、僕は朝早いからもう帰るね!」
「あ、そうですか……」
一瞬、寂しそうな顔を見せるヤミ。しかし、彼女は直ぐにいつもの調子を取り戻して村田に笑顔を見せた。
「また会う時まで、さらばだ光の戦士よ。それまでに貴様の考える最高のヒーローの姿とその名乗りを精々考えておくんだな!!」
「うん!」
村田はヤミの部屋を出て自分の家に帰っていった。
***
村田が帰宅した後、ヤミは一人になった部屋の隅で体育座りをしていた。
「楽しかったなぁ……。大丈夫、一人には慣れてる。来週にはまた先輩に会えるから、それまで我慢……我慢しないと……」
テレビの画面には彼女の好きなヒーローたちの姿が映っている。
しかし、現実世界の彼女を救ってくれるヒーローはまだ現れない。
***
ヤミとのアニメ鑑賞会があった翌日、休日にも関わらず村田は朝から事務所にいた。
「おはようございます」
「あ、田中さん、おはようございます」
暫くすると事務所に田中もやって来た。田中が来ると、村田は早速田中に備品の買い出しをお願いすることにした。
「田中さん、何か爆発が派手な爆弾か様々な色の超強力ライトが欲しいんですけど、経費で落ちませんか?」
「あー爆弾ですね……爆弾!?超強力ライト!?そんなもの何に使うんですか!?」
日常生活の中で滅多に聞かない名前を聞き驚く田中。そんな田中に対して村田は爆弾と超強力ライトの使い道について説明した。
「……なるほど。つまり、村田さんは自身の登場シーンと名乗りをより派手にするために爆弾や超強力ライトを使いたいんですね」
「ええ。まあ、そういうことです」
村田の説明を聞いた田中は険しい顔つきになった。
「正直、私はあまり登場シーンを派手にすることには賛同できません。特に、爆弾なんて市街地で勝手に使えばそれこそただの迷惑行為です」
「で、ですよね……」
田中の言葉に肩を落とす村田。
「ですが、超強力ライトに関しては購入しても構いません」
田中の言葉に顔を上げる村田。その顔には驚きと喜びの感情が表れていた。
「いいんですか!?」
「ええ。安いものでも良ければ3つまでなら購入してもいいですよ。災害時や夜の活動でも一応使えますしね」
「ありがとうございます!!」
喜ぶ村田を見て、田中の顔にも笑みが浮かぶ。田中自身、村田が人気が無いことに悩み、それを何とかしようと努力している姿を知っているため協力してあげたいという気持ちがあったのだ。
「それじゃあ、白と黄色と赤色のライトを購入していただいてもいいですか?」
「分かりました。それじゃあ、今から連絡して明日までに届けてもらえるようにお願いしてみますね」
少しでも早く新しい名乗りを試したいであろう村田の気持ちを考え、気をきかせる田中。
その田中の気遣いにより、また村田は感動することになるのであった。
***
翌日の昼過ぎに強力ライトは届いた。
早速村田は田中とこのライトの操作のためだけに雇ったバイトたちと打ち合わせをした。
打ち合わせが終わり、日が沈んだ頃に村田はコスチュームを身に付け街に向かった。
「村田さん……頑張れ」
その背後で村田にエールを送る田中の姿があった。
***
日曜の夜、某国民的アニメを見ながら多くの人が明日は月曜日かと思っている頃、あらゆる家庭で悲鳴が響き渡る!!
「キャアアア!!か、髪型が髪型があああ!」
「お、俺の髪が某国民的アニメのタイトルにもなっている主人公のようなモガヘアーになっちまったあああ!」
「わ、儂の頭に髪が……髪が生えとるううう!!やったあああああ!!」
「サーザエザエザエ!!私はパイレーツの怪人Ms.サザエ!今後の某国民的アニメで行われるジャンケンに一度敗北したものは髪型がモガヘアーになるのよ!そして、二度敗北したものはサザエになるのよ!毎週、敗北してサザエになるかもしれないという恐怖にあなたたちは勝てるかしらあああ!!」
殆ど人がいない夜の商店街で高笑いをする怪人!パイレーツによる全人類サザエ化計画が始まったその時、怪人の前に一人の戦士が現れる!!
「待てい!!」
「だ、誰だ!?」
突如、夜空に向け黄色と赤のライトがクロスするように点灯される!そして流れ出す謎のBGM!
コツコツと靴音を鳴らして怪人に近づく戦士!
「答えなさい!あ、あなたは一体何者なの!?」
「職業でヒーローをやっているものだ」
そう言ったヒーローは我らのシャイニング村田だった!!
「ヒーロー?貴方の様な地味で!ダサい!姿をした人がヒーローですってえ?フフフフフ!!笑わせてくれるわね!貴方もサザエにしてあげるわ!ジャーンケーン……ポン!!」
シャイニング村田が出した手はグー!一方で、怪人が出した手はパーだった!!
「フフフフフ!!これで貴方の髪型はモガヘアーよ!!次のジャンケンで貴方はサザエになるのよ!!」
怪人の言う通り、髪型が変化したせいでヘルメットがずれ、顎のあたりが露出しているシャイニング村田!そんなシャイニング村田をサザエにするべくMs.サザエは更にジャンケンをしようとする!
「待て!次は俺にジャンケンの掛け声をさせてくれ」
「まあ、いいわよ。さあ、かかってきなさい!!」
一瞬の静寂、そして人類の運命を掛けたジャンケンが始まった!!
「ジャーンケーン……」
「グー!!!」
「フフフ!私はパー!これで私のか……ギャアアアアア!!!」
シャイニング村田のグーがMs.サザエに突き刺さる!!無防備だったMs.サザエはまともに拳を受け、その場に倒れた。
「フフフ……まさか世界征服のためには暴力が必要だったなんてね……。見事よ……最後に名前を教えてもらえるかしら」
息が今にも絶えそうなMs.サザエがサザエと姿を変えたシャイニング村田に問いかける。
「シャイニング村田。ヒーローさ」
バッ!!
サザエとなったシャイニング村田が後ろから白い光に照らされる!
「そう……」
そしてMs.サザエは静かに気を失った。
それと同時に元の姿に戻るシャイニング村田。
「闇が世界を覆う時、俺は再び戻ってくる。I'll be back……」
マントを翻しその場から立ち去るシャイニング村田。それを見て、強力ライトを担当していたバイトたちは思った。
((かっこつけてるけど倒し方騙し討ちじゃん……))
その後、バイトたちや田中は車や通行人も通る街中で、許可なく強力ライトを使ったことにより注意を受け、この名乗りは今後二度と使われることはなかった。
更に、今回の戦いの目撃者が少なかったことから村田の新しい名乗りは殆どの人に知られることはなかった。
まだ村田の人気は上がらない。
人知れず世界を救う彼の人気が上がるのは果たしていつになるのか。
よろしければ感想、評価などお願いします!
次回予告!
おっす!おら田中!
うっひゃ~!村田ってやつは人気が欲しくて仕方がねえみたいだな!
次回!ドラ〇ン〇ールZ!「欲しい人気!出るか100倍か〇は〇波!」
来週も見てくれよな!
(この次回予告は大幅に誇張されています)