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最強王子と騎士姫様  作者: 朝姫 夢
その後の二人編
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14.お互いの思っていること

 正直どのくらいの間キスされてたのかなんて、もうわからなくて。

 と、いうか。

 途中から意識なかったかも。

 だって気が付いたら池の傍のベンチに座ってたんだもん…!!しかも聖也くんの胸に頭預けた状態で…!!


「あ、れ……?」


 数回瞬きして、今の自分の状態を確認しつつ頭を働かせようとしていたら。


「愛ちゃん?大丈夫?」


 上から降ってきたのは、心配そうな聖也くんの声。

 …って、あのっ…!!そう言いながら指の背で頬を優しく撫でてるのは何でですか…!?


「ごめんね?久しぶりすぎて、つい…」


 やりすぎちゃった…なんて小さな呟きが落とされて。それが何を意味しているのか分からないわけじゃないけど、この時は正直恥ずかしさよりも嬉しさが勝ってしまっていて。


「あ、の……気持ち、よかったし…すごく、嬉しかったから……」


 ボーっとしたままの頭で、つい思ったことが口をついて出てしまった。

 でも、その……気持ちよかったのは、本当、だし…。嬉しかったのだって、本当だから…。下手に恥ずかしさが前面に出てしまわない分、ちゃんと正直に伝えられたのは悪いことじゃなかったと思う。

 だって普段だったらそんなこと言えなかったし…!!

 でもそもそもは、私のそういう言葉が足りなかったから。だから聖也くんが不安になってしまっていたのかもしれないし。

 そう考えると、せめて二人きりの時はもうちょっとちゃんと言葉で伝えないとダメだなって。今回のことでよくわかった。


「愛ちゃん…」


 優しく抱きしめられると、まるで包まれているようで。私は女子としてはかなり身長もあるし、多少鍛えている分筋肉質だったりもするのに。聖也くんが相手だと、まるで普通の女の子たちと同じような気になってしまう。


「ごめんね、愛ちゃん。俺、愛ちゃんに嫌われたくなくて。怖がられたくなくて」

「そんなこと、ないよ?だって聖也くんだもん。ずっとずっと、聖也くんだけは大丈夫だったから。怖いなんて思ったこと、一回もない」

「うん、でも……やっぱりね、俺は男だから。もしも俺が力尽くで何かしようとしたら、どうやったって愛ちゃんの力じゃ振り払えないでしょ?」

「そう、だけど……え、っと…それって振り払う理由、あるかな…?」


 キス以上のことを、聖也くんが望んでくれるのなら。私は一向に構わない…っていうか、むしろ嬉しいんだけどな?

 一応ね?私たち高校生なんですよ。もう色んな知識を身に着けてるわけだし、子供が出来るような行為が何なのかも分かってるわけだし。それ(・・)さえしなければ問題はない、と思ってるんだけど…ダメなのかな?

 いや!今すぐして欲しいとかじゃないけどね!?キスだけでもとろとろに溶かされてるくらいだし、今はこれだけでも十分幸せなんだけど…!!


「正直、愛ちゃんが何を怖いと思うのか分からないから。嫌な思いをさせてからじゃ遅いでしょ?」

「でもそれこそ、ちゃんと二人で考えて話し合うべき事じゃないの?というか、そんなの私だって分からないし。単純に聖也くん以外の男の人が、全員ダメなだけかもしれないし」

「……そうだったら、すごく嬉しいなぁ…」

「っ…!!」


 ちょっ…!!何そのはにかむような笑い方…!!

 も、ほんと…だめ。かっこいい……


「愛ちゃん?」


 耐えきれなくて聖也くんの胸にぽすんと頭を預ければ、不思議そうな声が上から降ってくる。

 ねぇ。こんなに優しい人が、力尽くで私に何かするわけないと思うの。だって本当にそのつもりなら、今までだっていくらでもチャンスはあった。というか基本的に私、聖也くんの前では結構気を抜いてるから。だいぶ無防備だったと思う。

 けど最初、キスですら唇にはなかなかしてくれなかったでしょ?

 それなのに今更、他の男の人達みたいに乱暴なこと、するわけがない。

 そう信じられるから、きっと聖也くんだけは平気なんだろうな。


「私、聖也くんのこと、好きすぎる…」


 でもね。だからこそ、少しだけ。

 余裕のない顔を、見てみたいな、なんて。

 ちょっとだけ、思っちゃうの。

 だって、さ。


「俺の方がずっと、愛ちゃんのこと好きだよ?好きすぎて、時折どうしていいのか分からなくなるくらい」


 ほら。そうやって私のこと優しく抱きしめて、そんなこと言うから。

 いつも恥ずかしくなるのは、余裕がなくなるのは、私のほう。


「でも…愛ちゃんの口からその言葉が聞けるのは、すごく嬉しいなぁ」


 耳元でふふって、本当に嬉しそうに笑うから。

 私は何も言えなくなって、動けなくなっちゃうんだ。


「けど顔が見えないのはやだな。ね、こっち向いて?」


 優しい声で、優しい指で。私を促す。

 両頬に添えられた手にほんの少しだけ力を入れて、顔をあげさせようとするから。私はそれに逆らうことなく、恥ずかしさで下げていた顔を素直に上に向ける。

 そこで声と同じくらい優しい瞳と視線が絡んで。結局また、私は動けなくなるんだ。


「ねぇ、愛ちゃん?きっと俺は愛ちゃんが思ってる以上に、こうして君に触れていたいし抱きしめたいし、キスだってもっといっぱいしたいんだ」

「も、っと…?」

「そう、もっと。今でも愛ちゃんはいっぱいいっぱいなの分かってるんだけどね。けど俺は、それだけじゃ満足できないの」


 苦笑しながらのその言葉はきっと、ようやく聞けた聖也くんの本音。そして同時に、私への気遣いであり思いやりでもある。

 でもだからこそ、私はこう答える。


「じゃあ、して?」

「え…?」

「聖也くんが満足するまで、して?」


 だって聖也くんにだけ我慢させてるなんておかしい。

 それに私、聖也くんに触ってもらえるのも抱きしめてもらえるのも、キスしてもらえるのも。すごく、好きだから。


「あい、ちゃん…?」

「あ、でもっ…学校とか、その…人の目があるところでは我慢して欲しいかなっ…」

「え、いや…そうじゃなくてね…?」

「い、家、とか…そのっ……わ、私か聖也くんの部屋だったら、いいからっ…!!」

「……うん、えっと…一回落ち着こう?あと、自分が何言ってるかちゃんと分かってる?」


 し、失礼な…!!なけなしの勇気を振り絞って伝えたのに…!!


「それ、俺にとってすごく都合がいい提案だよ?意味、分かってるよね?」

「わ、分かってるもんっ…!!」

「…………立てなくなるよ?」

「ぅっ…」


 ……うん、ですよね…。いや、分かってはいるんだ。分かっては。


「だ、だから部屋、なの……」


 言葉尻が小さくなるのは、決して怖いからではない。だってこんなの恥ずかしすぎる…!!

 しかも両頬に手を添えられたままだから、俯くことも出来ないし…!!目だけは逸らすけど、確実にこれ顔真っ赤になってる…!!


「はぁ~~~~……」


 なのに、聞こえてきたのは深ぁ~いため息で。思わず肩をびくりと震わせてそっと伺えば、珍しく俯いている聖也くんの姿があって。


「ホント俺、ダメだね。さっきから全部、大事なこと愛ちゃんに言わせてて。ごめんね?こんな頼りない男で」

「…………????」


 そう、本人は言うんだけど。

 あの、ごめん。何がダメで何が頼りないの?ちょっと話が見えないっていうか、分からないっていうか。

 でもとりあえず。


「聖也くんは頼りになるよ?私より強い男の人って、同年代で会ったことないもん」

「うん、そういうことじゃないかな」

「うん…?」

「あぁ、うん、いいんだよ。分からないままでいいから、愛ちゃんはそのままでいて?」

「え。なんかそれはそれでちょっとすっきりしない…」

「女の子は男の余計なプライドなんて気にしなくていいんだよ」

「……え!?聖也くんに余計なプライドなんてあったの!?」

「ん…?それはどういう意味かな?」

「え、いや、だって…プライド以前に警戒心がないっていうか、優しすぎるっていうか…」

「ん~~……それはたぶん、見え方とか見てる場所の違い、なんじゃないかな?」

「……女子には分からないこと、とか…?」

「かもね。けど、う~ん…そうだなぁ……」


 何かを考えるように少しだけ逸らされた瞳が、何もない場所を見ていて。かと思えば困ったように少し笑って、小さくふっと息を吐く。


「ねぇ、愛ちゃん?」

「なぁに?」

「俺が満足するまでキスしたら、本当に動けなくなるよ?それでもいいの?」

「うん、いい」

「部屋に二人きりだよ?もしかしたらいかがわしいことされるかもしれないとか、思わないの?」

「……聖也くんがしたいなら、すればいいけど…するの?」


 単純に、そこは疑問だった。

 だって考えてもみてよ。今までだって部屋に二人きりだったじゃん?キスしてたじゃん?

 でもそれ以上は、一切何もなかった。そう、何も。

 ちょっとね、健全な男子高校生としてそれが普通なのかどうかって。実はずっと疑問ではあったんだよ。

 なのに。


「…………まさか、そういう返しをされるとは思ってなかった、かな……」


 なんで言った本人が一番驚いてるの。あとなんでちょっと顔赤いの。

 ねぇホント、聖也くんのその基準てどこにあるの?前々から謎なんだけど。


「そもそも聖也くんって、割と性欲少ないほうじゃない?」

「そう、かな…?」

「だって普通、女の子に抱き着かれて平常心でいられるっておかしくない?」

「え、だって…別に好きな子じゃないし。愛ちゃんに抱き着かれたら、流石に俺我慢できないかもだけど」

「……今度、先輩に確認してみよう。ね?それが普通じゃないって、きっとあの人なら説明してくれるから…!」

「え、うん。いい、けど……それとこれとは、また別だと思うんだけどなぁ…?」

「何が別なの?」

「いや、その……正直俺、女の子に乱暴したり負担をかけたりするようなこと、したくないっていうか…嫌だなって、思っちゃうんだよね」


 …………ん……?あれ、ちょっと待って?もしかしてこれ……


「…あ……ごめん、聖也くん。たぶんその考え方、私のせいだ」


 正確に言えば、私の今までの経験のせい、だ。


「私が小さい頃から男の人に嫌なこといっぱいされてきたのを一番近くで見てたから、たぶんそういう認識になっちゃってるんだと思う…」


 だって今、聖也くんの言葉のチョイスおかしかったもん。なんで前提が"乱暴"だったり"負担"だったりするのか。

 他人の欲を目の当たりにしてきたせいで、自分の欲も身勝手だって無意識で思っちゃってるのかも。だから異様に他人に対して平等だったのかもしれない。


「あぁ、なるほど…」


 本人も気づいていなかったみたいだけど。なんか今、妙に二人して納得してしまって。

 でも、じゃあ、つまり……


「トラウマって、当事者じゃなくても出来るもの、なんだね…」

「意識改革していかないとだねぇ。俺も、愛ちゃんも」

「だね」


 きっと最初から、私たちは世間一般で言うところの"普通の"お付き合いなんてできなかったんだ。でもこうやってお互いの思っていることをちゃんと言い合えたからこそ、ようやくここまで来れた。それだけでもきっと、私たちにとっては大きな一歩だし、前進できている証拠なんだろう。


「じゃあ、まずは手始めに…」

「ん…?」

「満足するまでキス、していい?」


 触れるか触れないかの位置をなぞる親指に、ぞくぞくとしたものを感じて。

 でもさすがに今の今まで割と真面目な話をしていたからか、今回はちゃんと動けた。


「え、いや、あの…ここ外、なんですけど…」

「うん、知ってる。でも今回だけ。次からはちゃんと部屋の中だけにするから、今だけ許して?」

「え、っと……」

「大丈夫。ちゃんと家まで送り届けるし、まだ時間的に余裕はあるから。きっと帰るころには歩けるようになってるよ」


 いや、あの…それ笑顔で言うことじゃないと思うんですけど…?

 っていうか!意識改革早くない!?むしろこの場合は切り替え!?いやどっちでもいいか!!


「や、あの、聖也くん…!?」

「俺ね、ずっと我慢しすぎてたみたいで…ごめんね?もう限界みたい」

「え…んむぅ…!?」


 その言葉通り、確かに限界だったんだろう。

 だって、あんな…つらそうに、苦しそうに、それなのに目はギラギラした状態のまま顔を歪めた聖也くん、初めて見たから。

 あぁ、もしかしたら今のほんの一瞬が、聖也くんの余裕のない顔だったのかもしれない、なんて。そんなことを考える余裕が私にあったのは、本当に僅かな時間だけだった。

 結局そのまま何度も何度も、ひたすらに気持ちよくさせられて。合間に大好きだよって、囁かれた気もするけど。正直もうよく覚えてない。

 ただ一つ分かったのは、やっぱり今度から部屋の中だけにするべきだなということだけ。

 聖也くんが本当に満足するまでって、すごかったなぁ、って…そんな感想しか出てこなかった私は、完全に頭が回っていなかったんだと思う。






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