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最強王子と騎士姫様  作者: 朝姫 夢
その後の二人編
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2.お土産をめぐる攻防

「あ、愛ちゃんちょうどよかった。今日帰りにちょっと家に寄ってくれない?」


 ある日の教室移動の時、偶然廊下ですれ違うことになった聖也くんがそう声をかけてくる。

 人間吹っ切れれば色々と順応も早いもので、既に学校の中でも普段通りに話すようになっていた。


「うん、いいよ。でもどうしたの?何かあった?」

「それがね、この間母さんたちが旅行に行った時に買ってたお土産が昨日届いたんだけど…」

「あー……また大量に買い込んできたんだね?」


 我が家もだけど、高神家も未だに両親がずっと仲がいいので、たまに二人で旅行に行ったりすることがある。そういう取り決めを親同士の間でしていたのか、どちらかが旅行に行く時はもう片方の家で子供たちの面倒を見る、というのがもはや定番になっていて。だから実は、ついこの間我が家で高神兄弟が二日ほど一緒に食卓を囲んでいたりしたのだけれど。

 ……いや、考えてみれば凄いことだな。こういう関係になった今だからこそ思うけど、なんで丸二日も家族と恋人が同じ食卓に並んでたんだ?その時はいつも通りすぎて何も思わなかったけど、今思い返してみればなかなかに普通じゃなかったことに気づく。


「そうなんだよね。子供たちがお世話になったお礼に、とか言ってるけどさ。あれって実際には母さんたちのお茶請けになってるだけだと思わない?」

「あ、うん。実際そうやって消費されてる」

「自分が食べたいものを大量に買って来てるだけだよね、きっと」

「だろうね」


 成長したとはいえ、確かに数日間我が子の食事の面倒を見てもらっているわけだから、そのお礼も兼ねてちょっと多めにお土産を買ってくるっていうのは分かる。うちの両親もそうだし。

 けど高神母は、その量が半端じゃない。大量すぎて、旅行先から全部配送にしているくらいだから相当だ。


「流石に俺一人じゃ一回で持っていけそうにないからさ。弟たちは今日遊びに行く約束しちゃってるらしいから、悪いんだけど俺が持てなかった残りだけ一緒に持っていってくれないかな?」

「うん、いいよ。往復するより楽だろうし」

「それも、あるんだけど…」

「ん…?」

「できれば扉とか開けて欲しい、かな。両手というか両腕使えなくなりそうだから…」

「あぁ、うん…そっかぁ……」


 遠い目をした聖也くんに、大量の度を越したんだなとなんとなく察してしまった。たぶん高神母は私の知る中で最も天然度合いが高いから。

 あれ?そういう意味では聖也くんお母さん似じゃないかな?


「あ、ごめんね?次教室移動だよね?」

「あぁ、うん。でもすぐそこだから大丈夫だよ」

「そっか。それならよかった。じゃあまた放課後」

「うん、また後でね」


 そう言って自分の教室に戻って行ったけど、たぶんあの様子だと気づいてなかったんだろうなぁ。横にいるお互いの友人たちが、何かを言いたそうな聞きたそうな顔をしていたことに。

 うん、私は気づいてたよ?だからちゃんと答えておいた。小さい頃からよくあることだし、一緒にいるのはご飯を食べる時だけだよ、って。

 いやだって、目の前に家があるのにわざわざ泊まる必要ないじゃん?小学生とかならまだしも、もう弟たちだって中学生だよ?普通に考えて自分の家でお風呂に入って寝るよね?

 だから友人の残念そうな顔は見なかったことにした。

 大丈夫。そんな少女漫画みたいな、お風呂でばったり☆とかあり得ないから。だからちょっと期待するような目でこっち見るのやめてくれないかな?

 なんてふざけ合いながら休み時間を過ごしていたら、あっという間に放課後になって。いつも通り教室に迎えに来てくれた聖也くんと、二人並んで下校する。

 そう言えば最近は二人でいても誰も邪魔してこなくなったなーとふと思って、同時に隣を上機嫌で歩くこの男の鶴の一声があったんだろうなとすぐに予想出来てしまったあたり、なんかもうホント色々と慣れすぎているなと実感する。


「ただいまー」

「お邪魔します」


 どうせお土産を持ってそのまま我が家に直行なんだからと、家に寄らずに先に高神家へと上がる。聖也くんは先に鞄だけ置いてきちゃうからと、二階の自分の部屋へと向かって。私はと言えば、勝手知ったる何とやら。リビングの扉を開けて、そこにいた高神母に先に挨拶をする。


「愛ちゃんお帰りなさい!」

「はい、ただいまです。…というか、私の方がお帰りなさいを言いに来たんですけど」

「あら、そうだったわね。ただいま、愛ちゃん」

「はい。お帰りなさい」


 ふわふわとした可愛い高神母は、普段からおっとりとしていて。けど高校生の息子がいるとは思えないほど、常に若々しかった。


「旅行楽しかったですか?」

「うん、すっごく!やっぱりたまには夫婦水入らずって大事よね」

「ふふ。それならよかったです」


 悪戯っぽく、けれどどこか少女のように微笑(わら)うこの人は、たぶん天性の人タラシなんだろう。

 というか、今思えば聖也くんお母さんに似すぎじゃない?もしかして、だから男の先輩とかも本気になっちゃうのかな?


「それにしても…愛ちゃん、相変わらず綺麗な顔してるわよね」

「え…?」


 近づいてきた高神母が手を伸ばしてきて、女性らしい柔らかい手を私の頬に当てる。私より少し背の低いこの人がこれだけ近くに来ると、必然的に上目遣いに見上げてくる形になって。そこに少し大人の色気を感じて、そうかこれに男の人はやられるのかとどこか冷静にそう思った。


「我が家は女の子がいないから、今度一緒にショッピングとか行きたいわー。もちろんさらに綺麗になるようにお化粧してあげる♪」

「え、あの…」

「綺麗に着飾った愛ちゃんは、今以上に可愛いと思うの!や~ん、見てみたい~!!」


 どうしよう。なんか違う方向で聖也くんと同じな気がしてきた。

 あ、違う。これどっちかって言うと聖也くんがお母さん似なだけだ。ホントにそっくりだな!?この親子!!


「だーめ。母さんと二人きりなんて、そんな危ないことさせられるわけないでしょ?」


 いつの間にかリビングに来ていたらしい聖也くんに、後ろから肩を引かれて抱き込まれる。

 …って、ちょっと!?今、ここ、あなたの家でしょう…!?目の前に母親いるんだよ!?分かってる!?分かってるよね!?何!?それすら関係ないの!?関係ないってことなの!?あぁそう、関係ないのね!?知ってた!!


「ちょ、聖也くんっ…!」

「あら、何も二人きりだなんて言ってないでしょ?もちろん聖也に一緒に来てもらうつもりよ?ボディーガード兼荷物持ち、でしょ?」

「それは当然するけど。でも着飾った愛ちゃんが見たいなら、今度見せてあげるから。守る人数増やさないでくれる?」

「そんなこと言って、ただ愛ちゃんを一人占めしたいだけでしょ?」

「当たり前でしょ?可愛い恋人と二人きりでいたいって思って何が悪いの?」


 ちょ、待って……何だこれ、すごく恥ずかしいぞ…!?

 あと何勝手に今度見せてあげるとか言っちゃってるの!?決定権は聖也くんにあるの!?

 いやまぁ、服も靴も買ってくれたのは聖也くんだから、確かに権利はあるかもだけど…!!


「それなら私だって未来の可愛い義娘と一緒に遊びに出かけたいものっ…!!」

「未来の、でしょ?まだ義娘じゃないんだから我慢しなよ」

「いーやー!数年後には私の義娘なんだから、今からだっていいでしょ!?」

「だったら先に志野崎のお母さんと一緒に出掛けさせてあげなよ。そっちなら俺、いつでも大歓迎だし」

「実の母親に冷たくない!?」

「だって向こうは今まで、実の娘と一緒に自由に出掛けられなかったんだよ?だったら今からでも楽しい思い出作らせてあげたいじゃん?」

「そ、れは…そう、だけど……」

「母さんはその数年後にはできるようになるんだから、少しぐらい我慢しなよ」

「うぐっ……息子が正論すぎてつらい…」


 いや、あの……いい話っぽくなってるけど、それよりも私気になることがあってですね…?

 さっきから二人とも、私がこの家に嫁入りする前提で話してません…?

 未来の、とか。まだ、とか。不確定なはずなのに、言い方は明らかに確定事項みたいになってるのはなんでかな…?

 いや、うん、まぁ…そのつもりでは、いるけど……。

 一応、言いたい。

 付き合い始めてまだそんなに経ってないし、何より私プロポーズもまだされたことないんですけどって。

 何なんだろうなぁ、この親子。なんでそこ、一切疑ってないんだろう。


「とりあえずお土産全部運んじゃうから。そこに置いてあるので全部だよね?」


 そしてこういう時だけ切り替えが早すぎる聖也くんは何なの?

 実の母親だからこそ、扱い方を分かっているんだろうけど。ちょっとむくれたような顔をした高神母は、女の私から見ても可愛かった。


 けど…!!


「さっきのあれ、俺も母さんも本気だから。いつかちゃんとプロポーズするから、それまでちゃんと待っててね?」


 二人きりになった途端、爆弾発言落としてくるのやめてくれませんかね!?息子の方!!


「ね、愛ちゃん。返事は?」


 腰に手をまわして抱き寄せて、耳元でそういう風に名前を呼ぶの、ホントやめてください…。

 もう、なんか、色々、耐えられない…。


「愛ちゃん?」

「ぅっ……ぁ…は、はい……」


 ドキドキさせられすぎて。でも一切怖くないのに、私はこの時一瞬だけ"逃げられない"と思ったのはなぜだったのか。逃げるつもりなんて全くないのに。

 けどそんなことはすぐに頭から消えてしまった。

 嬉しそうな聖也くんが、頭や瞼や頬に。それこそ顔中にキスをしてきたから。

 ただし、一点だけ。

 唇にだけは、触れてこなかった。

 それを疑問にすら思わなかった私は、完全なる恋愛初心者だったんだろう。





高神母「攻です!!」

息子「……なんで俺が防ぐ側なんだろう…」


 親子の攻防戦でした。


 ちなみにタイトルのお土産は母購入のお菓子だけではなく、愛ちゃん本人も指しています。

 毎回お土産の数を減らしてくれと言っても聞かない、親子の密かな攻防が裏にはあったりなかったり。

 そして高神母にとっては愛ちゃんが一番の手土産ですから。

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