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11.夏だ!花火だ!!逆ナンだ!?

 あのプールの日、結局あの後はいつも通りに戻っていて。なんだか男子陣が少しだけ仲良くなっていたのが気になったけど、どうやら50mプールで思いっきり泳いでいたらしい。聖也くんがタイムを伸ばすコツを教えていたみたいで、クラスの男子二人がものすごく懐いていた。なんだろう。スポーツマンってそういう物なのかな?

 ちなみにやっぱりあの先輩と呼ばれていた子は知り合いだった。中学時代同じ委員会に所属していた後輩で、あの子も確か私のことをお姉さまって呼んでた気がする。そして久々にメールが来ていたのだけれど、後輩が失礼しました。本当にごめんなさい。高神先輩にも謝っておいてください。なんて書かれていて。妙に真剣すぎるその文面にどうしたのかと疑問には思ったけれど、ちょっと私もあの時のことを思い出すと恥ずかしいので、うん分かった。と軽く返しておいた。


「あれ?志野崎さんは浴衣着ないんだ?」

「あー…うん。ほら、人ごみの中歩きづらいからちょっとね」


 そう笑ってごまかしておいたけど。本当は浴衣、持っていなかったりする。正確に言えば持っているけど、もう丈が合わなくて。何よりやっぱりああいう可愛いものは、可愛い女の子が着た方が似合うと思う。


「折角の花火大会なのにー。もったいない」

「俺、志野崎さんの浴衣姿見てみたかったなー」

「私じゃ不満ですか」

「そうじゃなくて、女の子二人が浴衣で並んでた方が男としては嬉しいわけですよ。分かる?」

「だったら全員浴衣で揃えようってことにすればよかったじゃん」

「……あぁ、その手があったか」


 楽しそうなところ申し訳ありませんが、できればそれはやめていただきたい。問題なのは私ではなく、さっきからみんなの会話をニコニコと楽しそうに聞いているこの男。背は高い癖に顔の線とかはやけに細くて、切れ長の目と少しだけ下がった眉。明らかに、和服が似合う見た目をしている。

 そうなると、ですよ?さっきからあっちこっちの老若男女がこの男を見て足を止めていたり振り返ったり顔を赤くしていたりするのに。それがさらに加速されるわけですよ。ホントやめてっ…!!ただでさえ凄い人ごみなのに、進めなくなっちゃうから…!!


「ねぇねぇ、折角だからなんか食べない?」

「結構屋台色々出てるもんなー」

「でも焼きそばとかは食べにくそうだよな」

「あ、私チョコバナナ食べたい!」


 何その可愛いチョイス…!!私にはできないなー。可愛い女の子はりんご飴とか金魚とか持ってても様になるんだろうなー。羨ましい。


「愛ちゃんは?何か食べる?」

「え?うーんと……」


 そんなことを考えていたからか、声をかけられてもすぐに答えられなくて。周りを見回して食べやすそうなものがないか確認してみる。

 焼きそばやたこ焼きは、歩きながら食べるのはちょっと難しいし。とはいえわたあめってのもなんか違う。もっとこう、食べやすそうでお腹にもたまりそうな…。


「あ、フランクフルトあった」


 あれなら最後までしっかり串に刺さっているし、落とす心配もないからいい。ちょうど良さそうなものを見つけて思わず声に出してしまって。ハッとして口に手を当てたけどもう遅かった。


「うん、待っててね」

「あ、ちょっ…!」


 止めるよりも先に人ごみに消えてしまうから。こういう時だけやけに行動が早いのはなぜなのか。普段はぽやーっとしてるくせに…!!


「とりあえず、通路の端の方で待ってよっか」

「固まってれば分かるよな?」

「うん、たぶん…」

「分かるだろ、流石に。てか、あの二人は何?一目散に買いに行ったわけ?」

「チョコバナナとわたあめと…あとなんだっつってたっけな?」

「色気より食い気かよ」

「花より団子なんだろーよ。たぶん目的は花火じゃなくて屋台だろうな」

「まぁ、いいけどさ」

「俺らにとっては好都合だし?」

「いやぁ~、それはどうかな?結構な強敵がすぐ戻ってくるから」

「え、あれ敵なの!?」

「たぶん?」

「ねぇ二人とも、さっきから何の話?」


 途中までは分かったんだけど、なんか急に話題変わったよね?しかもなんかちょっとこそこそし始めたよね?何?何か企んでるの?


「いや、王子様にはどうしたら勝てるかなって話」

「なにで勝ちたいの?男女両方から見境なくモテたいの?」

「そう言う目線で見てるの!?」

「え、だって……ねぇ?」

「いや知らないから!!ねぇって言われても俺たち何のことか分からないから!!」

「そうなの?結構学内だと有名だと思ってたんだけど」

「有名だけども…!!流石に男からまでモテたくはない…!!」

「俺も勘弁」

「それでいいと思うよ。あれはもはやテロだから」

「テロ……」

「だってどこ行っても注目されてるでしょ?今だってほら、後ろにぞろぞろ引き連れてこっち戻ってきてる」

「ひっ…!?」

「っつーか、戻ってくるのはえーよ。なんですぐ見つけられんだよ…」


 本人は背が高いから、こっちからだとよく見えるけど。確かになんでこの人ごみの中すぐにわかったんだろうね。そして二人とも顔引きつってるけど、あれデフォルトだから。普段からあんな感じだから。


「お待たせ。はい、愛ちゃん」

「あ、はい。ありがとうございます。え、っと…いくらでした?」

「だーめ。こういう時は素直に受け取るだけでいいの」

「でも…」


 お財布を取り出そうとした手を止められてしまって、しかもなんでか怖いくらい笑顔だし。え、何?なんか機嫌損ねるようなことした…!?敬語なのは不満そうだったけど納得してくれてたよね!?

 どうしようかと見上げた先で、けど言葉が続くことはなかった。引き連れてきた中の女性二人組が、後ろから話しかけてきたから。


「やだー、君カッコイイー!!」

「妹さん?それとも後輩?」


 いや、今の会話でどう聞いたら妹になるのか。正解は後輩です。


「でも男の子二人とデート中なのに邪魔しちゃ悪いよ?」

「お姉さんたちと一緒に行かない?」


 これはあれですね。いわゆる逆ナンというやつですね。久々に見たなー、こういう人たち。

 ってか、私の今の状況そう見えてたのか…!!なんか浮気者みたいでいやだな!!友達待ってただけなのに!!


「あれ?王子様が逆ナンされてるー」

「さっすが~…一応他にも男子いたのにね」

「あ、お帰り二人とも」

「ただいましのちゃん。そして可哀想な男子諸君」

「おいこら、勝手に可哀想とか言うな」

「じゃあモテない男子諸君?」

「え、これでも結構モテる方なんだけど」

「比べる相手が間違ってるんじゃない?王子様だよ?」

「いやそれより、色々買いすぎじゃない?」


 宣言通りチョコバナナを持っている友人は可愛い。やっぱり浴衣にそういうアイテムを持つと一段と女の子って可愛いよねー。けど…


「だって美味しそうだったんだもん!」

「だからって今食べられないのに…」

「焼きそばにたこ焼きにイカ焼きに…見事に食べ歩きに向かないよねー」

「いやいや、そんな会話してる場合じゃなくね!?」

「誰一人王子様助けてあげようとしてないのがなんか可哀想なんだけど…」

「あぁ、だって、必要ないから」

「は…?」

「ほら」


 指さして促してみれば、どうしてそうなったのかは分からないけど顔を真っ赤にした女性二人組。そして。


「それに、ほら」


 今度は聖也くんが彼女たちの後ろを指さして見せれば、ちょっと怖そうなお兄さんたちが立っていて。


「お姉さんたち暇なら俺たちと遊んでよ」

「え?ちょ…」

「悪いな坊主。邪魔したか?」

「いいえー。俺も友達を待ってただけなんで」

「そうか。じゃあな」

「はい」


 涙目の女性たちは大柄なお兄さんのせいで見えていないのか、それともニコニコと笑っている二人は単純に会話をしているだけなのか。なぜか手を振って見送っている姿に、いつも通りだなぁとしか思わない。


「え、ちょ…なに、いまの…」

「こういうイベントごとって、あぁやって集まってくるの知ってる人も多くてね。それを横からお兄さんたちが連れていくまでがセットなの」

「あれセットなの!?」

「ていうか必須イベントなの!?」

「うん。昔からだよ」

「え、こわっ…!!」

「最近は一緒に出掛けたりしてなかったけど、今もなんだねぇ…」

「しみじみ言わないで?なんか慣れすぎてて怖いから」


 だって本当に慣れてるから。皆も多分帰る頃には慣れてるよ、とは。なんだか怯えているので言えなかったけど。


「ごめんね、お待たせ。行こうか」


 本人は気にしていないので、別にいいんじゃないかな。

 ちなみに結局フランクフルトのことはうやむやになってしまって。でもあたたかいうちに美味しくいただきました。聖也くんも一口食べてました。

 まぁそのお金は本人が稼いだお金だし。バイトじゃないよ?なんかそのチート性能を遺憾なく発揮して、学生向けの情報サイトを運営しているんです。その広告費で高校生にしてはびっくりするぐらい稼いでるから。だからまぁ、本人がいいって言うのでありがたく甘えておくことにする。

 でも今度、なんかお返ししないとなぁ…。





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